59 / 832
2 海の国の聖人候補
248 宴会 at マホロ
しおりを挟む
248
「メイロードさま、お刺身が……生の魚がこんなに美味しいなんて、反則です!!」
ソーヤがお刺身の盛り合わせの前から離れない。
右手に箸、左手に醤油皿を持ったまま、食べては涙し、また食べては味を褒め称えている。圧倒的に肉文化の帝国にいては、この新鮮な味には長く生きていても出会えなかったのかもしれない。
食卓の中央には気合の入った飾り切り付きの豪華な刺身盛り合わせ。ソーヤ力作の投網に見立てた飾り切りを上手に立てかけた大皿に盛られた、色とりどりの超新鮮な魚たちは、ピッカピカだ。
ちょうど準備が整ったタイミングで、エンジさん、ナギワさん、それにサイデム商会の支店の従業員の方2名が来てくれた。
私がお近づきのしるしに、夕食をご馳走したいので来れそうな方には声をかけてみてほしい、とお願いしていたのだ。
エンジさんはデザートにとマホロの果物盛り合わせを持ってきてくれた。
「ありがとうございます。これは、そのまま食べるものですか?」
あまり料理はしないらしいエンジさんが言葉に詰まっていると、ナギワさんがフォローしてくれた。
「ええ、もう熟していますので、どれもとても甘いです。これとこれは、青いうちに摘んで、酢の物に使ったりもしますよ」
わたしは《鑑定》しながら頷く。どうやら、この果物籠はこの招待へのお礼の手土産にエンジさんから渡すよう、ナギワさんが用意したもののようだ。
(気がきくいい部下をお持ちですね、エンジさん)
私達がやりとしている間に食卓を見た方達が歓声を上げるのが聞こえた。
「これ、野菜で作った網ですね。すごい演出!初めて見ました。それにこの刺身もすごく贅沢です。高級魚ばかりじゃないですか!美味しそう!」
さすが沿海州の方は刺身の美味しさを知っているようだ。
私も《鑑定》を駆使して最高の素材を集めてきたので、アキツの人からいい評価を受けて、かなりうれしい。
みんな揃ったところで乾杯。
飲み物はジュースやお茶、そしてアキツの地酒も用意した。
甘みの強い果物を発酵させ蒸留するそうで、かなり度数の強い透明なものだ。
香りは控えめだが、爽やか。
本当ならロックが美味しそうだが、今日はストレートか氷なしの水割り。
(グッケンス博士はあまりにも魔法使い然としているため、警戒される可能性があるので今日は皆が帰った後、来ることになっている)
刺身のために市場で買った魚醤数種、塩、それに異世界産の醤油も出してみた。
アキツの方々を見ていると、最初は慣れた味に手が出るもので、塩か魚醤に手が伸びる。
「これ美味しいですね。こんなに綺麗に切り揃えられた刺身はよっぽどの高級食堂でないとないと食べられませんよ。それに、こんなに色々な種類を一度に食べることも、大きな祝い事の宴会でもなければまずないですね」
大量の魚の鮮度を保つのはとても大変なので、少しずつ色々な刺身を揃えるのは個人宅では難しいらしい。
(冷蔵庫なし、マジックバッグなし、じゃそれはそうだろうな……)
刺身はご馳走で、普段食べる魚は塩をしたり乾燥させたりした保存食が多いそうだ。あれはあれで旨味が凝縮して良いものだけど、せっかく新鮮な食材があるのに、保存食メインとは、やはり保存手段が限られているせいで、豊かな海に囲まれてはいても、鮮魚は安定供給されていないと考えた方がいいようだ。
彼らを招待したのは、さりげなくこの国の食文化と生活の現状を知るためもあった。
やはり住民の声を聞くのがこの国の今を知る助けになりそうだ。
「メイロードさま、お刺身が……生の魚がこんなに美味しいなんて、反則です!!」
ソーヤがお刺身の盛り合わせの前から離れない。
右手に箸、左手に醤油皿を持ったまま、食べては涙し、また食べては味を褒め称えている。圧倒的に肉文化の帝国にいては、この新鮮な味には長く生きていても出会えなかったのかもしれない。
食卓の中央には気合の入った飾り切り付きの豪華な刺身盛り合わせ。ソーヤ力作の投網に見立てた飾り切りを上手に立てかけた大皿に盛られた、色とりどりの超新鮮な魚たちは、ピッカピカだ。
ちょうど準備が整ったタイミングで、エンジさん、ナギワさん、それにサイデム商会の支店の従業員の方2名が来てくれた。
私がお近づきのしるしに、夕食をご馳走したいので来れそうな方には声をかけてみてほしい、とお願いしていたのだ。
エンジさんはデザートにとマホロの果物盛り合わせを持ってきてくれた。
「ありがとうございます。これは、そのまま食べるものですか?」
あまり料理はしないらしいエンジさんが言葉に詰まっていると、ナギワさんがフォローしてくれた。
「ええ、もう熟していますので、どれもとても甘いです。これとこれは、青いうちに摘んで、酢の物に使ったりもしますよ」
わたしは《鑑定》しながら頷く。どうやら、この果物籠はこの招待へのお礼の手土産にエンジさんから渡すよう、ナギワさんが用意したもののようだ。
(気がきくいい部下をお持ちですね、エンジさん)
私達がやりとしている間に食卓を見た方達が歓声を上げるのが聞こえた。
「これ、野菜で作った網ですね。すごい演出!初めて見ました。それにこの刺身もすごく贅沢です。高級魚ばかりじゃないですか!美味しそう!」
さすが沿海州の方は刺身の美味しさを知っているようだ。
私も《鑑定》を駆使して最高の素材を集めてきたので、アキツの人からいい評価を受けて、かなりうれしい。
みんな揃ったところで乾杯。
飲み物はジュースやお茶、そしてアキツの地酒も用意した。
甘みの強い果物を発酵させ蒸留するそうで、かなり度数の強い透明なものだ。
香りは控えめだが、爽やか。
本当ならロックが美味しそうだが、今日はストレートか氷なしの水割り。
(グッケンス博士はあまりにも魔法使い然としているため、警戒される可能性があるので今日は皆が帰った後、来ることになっている)
刺身のために市場で買った魚醤数種、塩、それに異世界産の醤油も出してみた。
アキツの方々を見ていると、最初は慣れた味に手が出るもので、塩か魚醤に手が伸びる。
「これ美味しいですね。こんなに綺麗に切り揃えられた刺身はよっぽどの高級食堂でないとないと食べられませんよ。それに、こんなに色々な種類を一度に食べることも、大きな祝い事の宴会でもなければまずないですね」
大量の魚の鮮度を保つのはとても大変なので、少しずつ色々な刺身を揃えるのは個人宅では難しいらしい。
(冷蔵庫なし、マジックバッグなし、じゃそれはそうだろうな……)
刺身はご馳走で、普段食べる魚は塩をしたり乾燥させたりした保存食が多いそうだ。あれはあれで旨味が凝縮して良いものだけど、せっかく新鮮な食材があるのに、保存食メインとは、やはり保存手段が限られているせいで、豊かな海に囲まれてはいても、鮮魚は安定供給されていないと考えた方がいいようだ。
彼らを招待したのは、さりげなくこの国の食文化と生活の現状を知るためもあった。
やはり住民の声を聞くのがこの国の今を知る助けになりそうだ。
299
お気に入りに追加
13,089
あなたにおすすめの小説
卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな
しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく
しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ
おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~
白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」
マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。
そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。
だが、この世には例外というものがある。
ストロング家の次女であるアールマティだ。
実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。
そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】
戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。
「仰せのままに」
父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。
「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」
脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。
アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃
ストロング領は大飢饉となっていた。
農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。
主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。
短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。
最後に、お願いがあります
狂乱の傀儡師
恋愛
三年間、王妃になるためだけに尽くしてきた馬鹿王子から、即位の日の直前に婚約破棄されたエマ。
彼女の最後のお願いには、国を揺るがすほどの罠が仕掛けられていた。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。