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6 謎の事件と聖人候補
1026 蕎麦で一杯
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1026
まずは打ち立てのお蕎麦を味わってもらいたいので、博士の話は食事をしながらということにして、私とソーヤは準備を進めた。
(なんといってもお蕎麦は挽きたて、打ちたて、茹でたての〝三たて〟が一番美味しいからね。よし、手早く作っていくよ!)
グッケンス博士とついでにセイリュウにも、まずはクラフトビールをよく冷えたグラスでお出しした。アテには黄身の味噌漬けや大根おろしをたっぷり添えた卵焼きといったお蕎麦屋さん風のおつまみを追加。帰ってきた直後は眉間に皺を刻んでいた博士も、いまはペールエールを楽しみながら緊張の解けた表情でセイリュウと何やら話し込んでいる様子だ。
私が手早く天ぷらを揚げ、ソーヤが蕎麦を鮮やかな手さばきで茹で上げたら、いよいよ夕食の開始だ。
「さあ出来立ての十割蕎麦と天ぷら盛り合わせです。召し上がれ!」
話し込んでいたふたりも嬉しそうに目の前に並べられた蕎麦と天ぷらに目を移した。
「おお、これはうまそうじゃな」
「十割蕎麦は難しいって言ってたよね。腕をあげたんだ。楽しみだな」
「ええ、メイロードさまおすすめの今回の蕎麦は、正真正銘の蕎麦粉十割でございます。ズルズル。
この美しい見た目と素晴らしい歯応え! 清涼感のある爽やかな香りが素晴らしいです。ズルルルズル。
もちろんこの地味に溢れた野菜、新鮮な貝やエビの天麩羅の美味しさが、揚げたてのホクホクで、サクサクで……」
すべてを秒速で口に入れながらの、いつものソーヤの情熱解説を聞きながら、いい香りのお蕎麦を楽しんでいると、グッケンス博士が難しい顔で帰ってきた理由を教えてくれた。
「実はのぉ……例の〝巨大暴走〟のときに〝四双竜〟を仕留めた方法をどうしても教えろと軍部がうるさくてのぉ……」
「あー、アレですか」
箸を止めた私は思わず声を出した。
あのときダンジョンのラスボスに強力な魔法つきで巨大な杭を超高速で打ち込んだ攻撃……あれはキングリザードの〝銀の骨〟の研究の成果だ。
(あの〝銀の骨〟研究を進めてみたら、いろいろまずいってわかっちゃったんだ。あのとき、こりゃ強力すぎて軍部に目をつけられそうだから発表できない、と諦めて封印したんだよね)
〝魔法力〟の増幅と分配を同時に行えるということがわかった〝銀の骨〟は究極の兵器になる可能性を秘めてはいるが、その核となる〝銀の骨〟は一回使い切りで、しかもキングリザード一匹から二個しか得られない。それでなくとも現存数の少ないキングリザードを、しかもかなりの危険を犯して討伐しなければ得られない珍しいものなのだ。あの実験のあとも高価買取依頼を出し続けて博士が集めてくれた〝銀の骨〟を加えても結局状態の良いものは十六個しか集まらなかったし、それ以後まったく増えていない。それも私が実験ですでに十二個使っているので、使える〝銀の骨〟の残りはもう四個しかない状況だった。
グッケンス博士は『一度きりしか使えない魔法』だと誤魔化すことで終わらせられると思っていたのに、何度も何度もあの攻撃の秘密について蒸し返されて困惑しているという。
「あれはもう再現不可能だと告げて、そこで話は終わりだと言ったのだが、それなら再現が不可能であるということを示してほしいと食いつかれてなぁ……」
多くの兵士の目の前で、とてつもない威力の武器による攻撃を見せられた軍部は、どうしてもそれをそのままにしておけなかったのだろう。それは、わからないでもなかった。
(もしそれが、グッケンス博士以外の誰かにも再現可能な武器であったら、それはシド帝国の危機につながるかもしれないからね。まぁ、実際、それは私が研究した結果だったりするし……)
「〝四双竜〟をなるべく被害なく確実に倒すためには、あの方法しかなかったと思うので、使ったことに後悔はないですが、どうにも面倒なことになっちゃいましたね」
「とりあえず、わしは資料として〝銀の骨〟を保管するため、残り三個のうちひとつは貰うぞ。それから〝四双竜〟に使った一個、あと残りはふたつだ。メイロードの研究資料とそれを軍部に渡して、どうするかは奴らに決めさせるしかないかのぉ」
「そうですね。ただ、あのときの威力が出せたのは私が《増幅》の魔法を重ねがけしたっていうのもあるんですよ……」
「奴らもたった二個の〝銀の骨〟では実験もおいそれとはできなかろうし、その秘密には辿り着けんじゃろう」
「そうですよね……そうであってもらわないと……」
私は机に取り出したふたつの〝銀の骨〟を見ながら、明日軍部と話をするという博士の上首尾を祈るしかなかった。
まずは打ち立てのお蕎麦を味わってもらいたいので、博士の話は食事をしながらということにして、私とソーヤは準備を進めた。
(なんといってもお蕎麦は挽きたて、打ちたて、茹でたての〝三たて〟が一番美味しいからね。よし、手早く作っていくよ!)
グッケンス博士とついでにセイリュウにも、まずはクラフトビールをよく冷えたグラスでお出しした。アテには黄身の味噌漬けや大根おろしをたっぷり添えた卵焼きといったお蕎麦屋さん風のおつまみを追加。帰ってきた直後は眉間に皺を刻んでいた博士も、いまはペールエールを楽しみながら緊張の解けた表情でセイリュウと何やら話し込んでいる様子だ。
私が手早く天ぷらを揚げ、ソーヤが蕎麦を鮮やかな手さばきで茹で上げたら、いよいよ夕食の開始だ。
「さあ出来立ての十割蕎麦と天ぷら盛り合わせです。召し上がれ!」
話し込んでいたふたりも嬉しそうに目の前に並べられた蕎麦と天ぷらに目を移した。
「おお、これはうまそうじゃな」
「十割蕎麦は難しいって言ってたよね。腕をあげたんだ。楽しみだな」
「ええ、メイロードさまおすすめの今回の蕎麦は、正真正銘の蕎麦粉十割でございます。ズルズル。
この美しい見た目と素晴らしい歯応え! 清涼感のある爽やかな香りが素晴らしいです。ズルルルズル。
もちろんこの地味に溢れた野菜、新鮮な貝やエビの天麩羅の美味しさが、揚げたてのホクホクで、サクサクで……」
すべてを秒速で口に入れながらの、いつものソーヤの情熱解説を聞きながら、いい香りのお蕎麦を楽しんでいると、グッケンス博士が難しい顔で帰ってきた理由を教えてくれた。
「実はのぉ……例の〝巨大暴走〟のときに〝四双竜〟を仕留めた方法をどうしても教えろと軍部がうるさくてのぉ……」
「あー、アレですか」
箸を止めた私は思わず声を出した。
あのときダンジョンのラスボスに強力な魔法つきで巨大な杭を超高速で打ち込んだ攻撃……あれはキングリザードの〝銀の骨〟の研究の成果だ。
(あの〝銀の骨〟研究を進めてみたら、いろいろまずいってわかっちゃったんだ。あのとき、こりゃ強力すぎて軍部に目をつけられそうだから発表できない、と諦めて封印したんだよね)
〝魔法力〟の増幅と分配を同時に行えるということがわかった〝銀の骨〟は究極の兵器になる可能性を秘めてはいるが、その核となる〝銀の骨〟は一回使い切りで、しかもキングリザード一匹から二個しか得られない。それでなくとも現存数の少ないキングリザードを、しかもかなりの危険を犯して討伐しなければ得られない珍しいものなのだ。あの実験のあとも高価買取依頼を出し続けて博士が集めてくれた〝銀の骨〟を加えても結局状態の良いものは十六個しか集まらなかったし、それ以後まったく増えていない。それも私が実験ですでに十二個使っているので、使える〝銀の骨〟の残りはもう四個しかない状況だった。
グッケンス博士は『一度きりしか使えない魔法』だと誤魔化すことで終わらせられると思っていたのに、何度も何度もあの攻撃の秘密について蒸し返されて困惑しているという。
「あれはもう再現不可能だと告げて、そこで話は終わりだと言ったのだが、それなら再現が不可能であるということを示してほしいと食いつかれてなぁ……」
多くの兵士の目の前で、とてつもない威力の武器による攻撃を見せられた軍部は、どうしてもそれをそのままにしておけなかったのだろう。それは、わからないでもなかった。
(もしそれが、グッケンス博士以外の誰かにも再現可能な武器であったら、それはシド帝国の危機につながるかもしれないからね。まぁ、実際、それは私が研究した結果だったりするし……)
「〝四双竜〟をなるべく被害なく確実に倒すためには、あの方法しかなかったと思うので、使ったことに後悔はないですが、どうにも面倒なことになっちゃいましたね」
「とりあえず、わしは資料として〝銀の骨〟を保管するため、残り三個のうちひとつは貰うぞ。それから〝四双竜〟に使った一個、あと残りはふたつだ。メイロードの研究資料とそれを軍部に渡して、どうするかは奴らに決めさせるしかないかのぉ」
「そうですね。ただ、あのときの威力が出せたのは私が《増幅》の魔法を重ねがけしたっていうのもあるんですよ……」
「奴らもたった二個の〝銀の骨〟では実験もおいそれとはできなかろうし、その秘密には辿り着けんじゃろう」
「そうですよね……そうであってもらわないと……」
私は机に取り出したふたつの〝銀の骨〟を見ながら、明日軍部と話をするという博士の上首尾を祈るしかなかった。
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