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6 謎の事件と聖人候補
1017 強力な敵
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1017
慌ただしく装備を整え、人員の配置を終えた軍隊が緊張に固唾を飲む目の前で、足に伝わる振動が徐々に強くなっていき、やがてとてつもない圧を感じる大量の魔物たちが地響きとともにダンジョンから姿を現した。
ついに最後の戦いの始まりだ。
なぜ最後と考えたかといえば、その最後の魔獣の登場とともに、ダンジョンの入り口が完全に崩壊し封鎖状態になったからだ。
元々このダンジョンは自然発生的なものではなく、魔王エピゾフォールの魔力供給によって無理やり作り出されたものだった。だが、ダンジョンを維持する魔力はもう供給されておらず、エピゾフォールの影響も及ばなくなった。
その状態ですべての魔獣が去った〝パレス近郊新ダンジョン〟は、もうそれを維持する力が消滅したと考えていいだろう。瓦礫のようになった入口だけを残し、このまま消えゆく運命なのだ。
この状況からはっきりした。〝巨大暴走〟は、いままさに最終局面を迎えている。前線ではこのダンジョン最強の魔獣との戦いが始まろうとしている緊張感に、どこもかしこもピリピリとした雰囲気が漂っていた。
私は少し遠くからこの状況を見守ることになったが、状況は逐一知っておきたかったので、ソーヤに前線の状況の中継を頼むことにした。隠密スキルに長けたソーヤはグッケンス博士のそばで状況を細かく伝えてくれるし、姿を隠せるおかげで普通では知り得ない情報までほぼ同時に共有してくれた。
(ほんとにすごいよね。真横にいても誰も気がつかないもん。軍事機密も聴き放題、ははは)
遠くからも目視できるほど巨大な最後の魔獣の姿と、その前方に面倒そうな強い魔獣が出張っているという状況は、これからまったく油断できない大掛かりな戦いが始まることを明らかにしていた。
ともかくまずは情報収集ということで、本陣から複数の強力な《鑑定》の使い手が、相手を知るために最前線へと出ていき、そこで得られた魔物の様子が伝えられた。これもまたかなり危険な任務だったが、グッケンス博士が《静移迷彩術》を使い彼らを見えなくしたことで、かなり危険は軽減され、迅速に戻ることができたそうだ。
「手前には〝アラクネ・クイン〟そしてそれが生み出した数千匹の〝ジャイアント・スパイダー〟そして、巨大な体躯の獣人〝ミノタウロス〟の個体も数百確認できました」
〝アラクネ・クイン〟は下半身は巨大な蜘蛛だが上半身は女性のような美しい姿をしており、それ自身はさほど強くはない。だが、自分の子供を生み出す能力がとてつもなく、巨大でしかも鋭い爪と毒による遠距離攻撃をする〝ジャイアント・スパイダー〟を常に戦場に供給し続けるという厄介な魔物だ。この〝ジャイアント・スパイダー〟との戦いが長期戦になればなるほど、こちらは疲弊し戦力を削がれることになるだろう。
〝ミノタウロス〟は牛のような頭部をもつ魔獣だ。これの特徴は巨大な躰と筋肉を使った攻撃だ。多くが斧や大槌といった武器を振り回し、攻撃に対してまったく怯まず突進してくる。この〝ミノタウロス〟が〝アラクネ・クイン〟を守り、さらに〝ジャイアント・スパイダー〟の間に挟み込まれていることで、敵は遠距離攻撃も近接攻撃にも即座に対応できるのだ。
魔物には連携するといった考えはないのだが、〝アラクネ・クイン〟には一定の強さ以下の相手を特殊な糸に繋ぎ操る《人形使い》というスキルがある。自分の弱さを知っている〝アラクネ・クイン〟はこれを使い〝ミノタウロス〟を使役し、自らを守らせているのだろう。
「できる限り魔法で弱らせてからでないと兵士の損耗が激しくなるばかりだろうな」
「ですが、そこで〝魔術師〟の負担が大きくなりすぎては……」
防御の厚い前衛にどう戦っていくか、戦いはそれからが本番だとはっきりしているのだから悩ましい。
そして、その本番の相手最後の魔物として報告されたのは巨大な〝四双竜〟だった。
ダンジョンを破壊して出てきたその大きさにも驚かされたが、その四つの頭を持つ首長竜の異様な姿は、驚くべきものだった。
「この〝四双竜〟は四つの首それぞれが別の属性攻撃をしてきます。炎、風、水、氷、岩……もう、あらゆる攻撃が可能です」
そしてこの〝四双竜〟の厄介なところは、その身体に四属性に対する耐性がある点だ。
「それは……まいったな」
〝魔術師〟たちが顔をしかめた。それも当然だろう。
これが最悪なのは〝魔術師〟との相性がとことん悪いということだ。ほとんどの魔法攻撃に対して耐性があるため、攻撃が通りにくい。もちろん、ある程度は傷つけられはするが非常に効率が悪くなってしまう。
しかも、相手は毒の糸を矢のように周囲に振り撒きながら攻撃してくるため、物理攻撃のために安易に近づくことも難しい。
「物理攻撃のために近づくといっても〝ジャイアント・スパイダー〟と〝ミノタウロス〟を掻い潜ってのことでしょう。それはあまりに無謀です。まずは〝ミノタウロス〟に守られた〝アラクネ・クイン〟の撃破、それができなければどうにもなりません」
「それはわしに考えがある」
グッケンス博士が、少し考えてからゆっくりと話し始める。
「非常に難しいとある魔術を試みようと思っておる。それに攻撃をきっちりと合わせるのじゃ。さすれば、きっと〝アラクネ・クイン〟を屠れるはずじゃ。ゆめゆめ油断をすることなきようにの」
慌ただしく装備を整え、人員の配置を終えた軍隊が緊張に固唾を飲む目の前で、足に伝わる振動が徐々に強くなっていき、やがてとてつもない圧を感じる大量の魔物たちが地響きとともにダンジョンから姿を現した。
ついに最後の戦いの始まりだ。
なぜ最後と考えたかといえば、その最後の魔獣の登場とともに、ダンジョンの入り口が完全に崩壊し封鎖状態になったからだ。
元々このダンジョンは自然発生的なものではなく、魔王エピゾフォールの魔力供給によって無理やり作り出されたものだった。だが、ダンジョンを維持する魔力はもう供給されておらず、エピゾフォールの影響も及ばなくなった。
その状態ですべての魔獣が去った〝パレス近郊新ダンジョン〟は、もうそれを維持する力が消滅したと考えていいだろう。瓦礫のようになった入口だけを残し、このまま消えゆく運命なのだ。
この状況からはっきりした。〝巨大暴走〟は、いままさに最終局面を迎えている。前線ではこのダンジョン最強の魔獣との戦いが始まろうとしている緊張感に、どこもかしこもピリピリとした雰囲気が漂っていた。
私は少し遠くからこの状況を見守ることになったが、状況は逐一知っておきたかったので、ソーヤに前線の状況の中継を頼むことにした。隠密スキルに長けたソーヤはグッケンス博士のそばで状況を細かく伝えてくれるし、姿を隠せるおかげで普通では知り得ない情報までほぼ同時に共有してくれた。
(ほんとにすごいよね。真横にいても誰も気がつかないもん。軍事機密も聴き放題、ははは)
遠くからも目視できるほど巨大な最後の魔獣の姿と、その前方に面倒そうな強い魔獣が出張っているという状況は、これからまったく油断できない大掛かりな戦いが始まることを明らかにしていた。
ともかくまずは情報収集ということで、本陣から複数の強力な《鑑定》の使い手が、相手を知るために最前線へと出ていき、そこで得られた魔物の様子が伝えられた。これもまたかなり危険な任務だったが、グッケンス博士が《静移迷彩術》を使い彼らを見えなくしたことで、かなり危険は軽減され、迅速に戻ることができたそうだ。
「手前には〝アラクネ・クイン〟そしてそれが生み出した数千匹の〝ジャイアント・スパイダー〟そして、巨大な体躯の獣人〝ミノタウロス〟の個体も数百確認できました」
〝アラクネ・クイン〟は下半身は巨大な蜘蛛だが上半身は女性のような美しい姿をしており、それ自身はさほど強くはない。だが、自分の子供を生み出す能力がとてつもなく、巨大でしかも鋭い爪と毒による遠距離攻撃をする〝ジャイアント・スパイダー〟を常に戦場に供給し続けるという厄介な魔物だ。この〝ジャイアント・スパイダー〟との戦いが長期戦になればなるほど、こちらは疲弊し戦力を削がれることになるだろう。
〝ミノタウロス〟は牛のような頭部をもつ魔獣だ。これの特徴は巨大な躰と筋肉を使った攻撃だ。多くが斧や大槌といった武器を振り回し、攻撃に対してまったく怯まず突進してくる。この〝ミノタウロス〟が〝アラクネ・クイン〟を守り、さらに〝ジャイアント・スパイダー〟の間に挟み込まれていることで、敵は遠距離攻撃も近接攻撃にも即座に対応できるのだ。
魔物には連携するといった考えはないのだが、〝アラクネ・クイン〟には一定の強さ以下の相手を特殊な糸に繋ぎ操る《人形使い》というスキルがある。自分の弱さを知っている〝アラクネ・クイン〟はこれを使い〝ミノタウロス〟を使役し、自らを守らせているのだろう。
「できる限り魔法で弱らせてからでないと兵士の損耗が激しくなるばかりだろうな」
「ですが、そこで〝魔術師〟の負担が大きくなりすぎては……」
防御の厚い前衛にどう戦っていくか、戦いはそれからが本番だとはっきりしているのだから悩ましい。
そして、その本番の相手最後の魔物として報告されたのは巨大な〝四双竜〟だった。
ダンジョンを破壊して出てきたその大きさにも驚かされたが、その四つの頭を持つ首長竜の異様な姿は、驚くべきものだった。
「この〝四双竜〟は四つの首それぞれが別の属性攻撃をしてきます。炎、風、水、氷、岩……もう、あらゆる攻撃が可能です」
そしてこの〝四双竜〟の厄介なところは、その身体に四属性に対する耐性がある点だ。
「それは……まいったな」
〝魔術師〟たちが顔をしかめた。それも当然だろう。
これが最悪なのは〝魔術師〟との相性がとことん悪いということだ。ほとんどの魔法攻撃に対して耐性があるため、攻撃が通りにくい。もちろん、ある程度は傷つけられはするが非常に効率が悪くなってしまう。
しかも、相手は毒の糸を矢のように周囲に振り撒きながら攻撃してくるため、物理攻撃のために安易に近づくことも難しい。
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