利己的な聖人候補~とりあえず異世界でワガママさせてもらいます

やまなぎ

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6 謎の事件と聖人候補

1009 きた道これからの道

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1009

神様たちとお茶を飲んでいるということは、なんだと私は理解した。

さすが神様、用意してくれた茶葉やミルクは素晴らしい品質の一級品だ。

私はその芳しい香りに包まれながら思う。

(もうこの場所に来るのも三回目になるのかぁ……)

事故で命を失い、その直後にいま目の前にいるキラキラした美しすぎる方々からなぜか〝聖人〟にならないかとリクルートされた。〝聖人〟というパワーワードに驚きつつも、それをキレ気味に全力拒否しての異世界転生……

(あのときはかなりやさぐれた気分でいたような気がするなぁ。新生活へのワクワクで破裂しそうな気分からの急転直下だったし……)

そして二回目にここへ来ることになったのは、まだ自分の能力がよくわからず手探りだったころ。使ったことのなかった《癒しの手》というスキルを全力で使ってしまい〝魔法力〟と体力の使いすぎて死にかけてしまったとき。

(あのときに、これからは命を大切に、絶対無理はしないって誓ったんだけど……結局こうなってしまったなぁ。セーヤ・ソーヤ、ホントにごめんね)

だが、そのことを私は後悔していないし、みんなのために絶対やらなければいけないことだったと思っている。

(だって、私以外にエピゾフォールを押し戻せるタイミングがある人はいなかったんだもの)

「それがあなたの良きところで、困ったところね、メイロードちゃん」

私の思考が筒抜けの女神様が、とてもおだやかで、でも困った子供を諭すような表情で私を見る。

「常に大局を見て冷静に状況判断し……自らを最後に置いてしまう。あなたが人のために動くことにためらいがないのは昔から変わらないのね。そして、この世界はそんなやさしいあなたに助けられた」

(って、私はこの世界で結構好き勝手にやりたいことをやってきたと思うんだけどな)

ちょっと不服そうな私の顔を見てふたりの神様は苦笑している。

「そうね、あなたはあなたの望む通りこの世界で生きてきたのね。その結果が、いまのこの世界なのだわ」

そう女神様が言いながら空中に手をかざすと、たくさんの映像がテーブルの周りに浮かんできた。

そこには私の知るこの世界の人々がたくさん映っていた。

(サイデムおじさま、グッケンス博士、タイチ、キッペイ……ハルリリさん、シラン村のみんな、マリス領のみんな、エジン先生、キルム王国の子供たち…‥ああ、みんな元気そう)

幸せな気持ちに満たされながら、笑顔で働いている彼らの映像を見つめていると、神様が話し始めた。

「あなたはこの世界に降り立ったときからこれまで、本当に多くの人を救ってきたのよ。あなた自身は隠そう隠そうとしていたしあまり自覚はないみたいだけれど、直接の影響だけでなく、間接的な影響を含めれば、何万、何十万という人を救っているの」

「え⁉︎ そう…‥なんですか?」

「ロームバルトとシドの友好を結んだこともとても大きいわ。あなたの活躍で、無事に両国の血を受け継ぐ皇子が誕生し、健やかに成長しているでしょう? これで長く両国は友好を結べ争うこともなくなりました」

「キルムの暴走を止めたことも大きいね。あれは世界を巻き込みかねない事態だった。あの事件が本格化していたら、とても凄惨な大戦に発展していたよ、きっとね」

(そういえば、あの事件の影にもエピゾフォールがいたみたいだし、ほんといろいろやってくれたわよね)

謎の孤児院へ潜入捜査まですることになった事件だったけれど、いまとなってはあれもいい経験だったと思える。

(あの子たち、元気でやってるといいなぁ)

「そうそう! 〝魔法屋〟という仕事の価値を高めたことも多くの人の助けとなった。メイロードのおかげでたくさんの人たちが新たな可能性と仕事を得ることができた。この世界の発展にも大きく寄与した出来事だ」

「そのほかにも滅びそうだった港町を建て直し、エントを救い、健康的な食生活について多くの貢献をし……本当にあなたはこの世界に尽くしてきましたね」

「……ええと、それは結果というか……本当に個人的な思いからのもので……」

「結果がすべてを示していますよ。これがメイロードがこの世界にいることで出来上がったいまの世界の姿……」

そこには〝ラーメン横丁〟で楽しそうに食事をしている人たち、〝魔法屋〟で難しいドレスの染み抜きや剣の修復に成功して感謝されている様子、パレスの〝カカオの誘惑〟のチョコレートを楽しそうに選ぶ人々、シラン村の居酒屋でメイロードソースを使った名物料理に舌鼓を打ちながら乾杯しているたくさんの笑顔…‥そのほかにもたくさんの人たちの姿が映し出された。

「あなたはすでに聖人に相応しい仕事をこの世界でしています…‥この世界を導いてくれてありがとう、メイロード」

(ああ、あたしはいよいよ〝聖人〟とかいうものになって神様にお仕えするのか……)

感慨深く、今回も若くしてこの世を去ることになってしまった事実を受け止めていると、神様がしれっとこう言った。

「えっ? メイロードはまだ生きてるよ?」
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