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6 謎の事件と聖人候補
941 地図班動く
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941
おかわりのしすぎで怒られる人まで出てくるほど好評だった初めての食事休憩も終わり、いよいよ第三層へアタックするときがやってきた。
「ではメイロードさま、ご一緒していただけますか?」
「はい、もちろんです、ルエラさん」
私とルエラさんは、食事が終わると休憩もそこそこに動き始める。アタックのための最初の作業はこれから行こうとしている場所の状況の確認。そう、ここからは〝地図班〟の力量が試される階層が続いていく。
私は慎重に《索敵》のスキルを使いつつ、何人かの冒険者とソーヤ・セーヤに守られながら第三層入り口に進み、ルエラさんとその部下のイアさんの三人でクロスチェックをしながら、得られた情報を統合し第三層入り口周辺だけの地図をまず作っていく。
ルエラさんとイアさんのスキルには明らかに差があり、ふたりは師弟のような関係のようだった。基本イアさんが地図を書き止め、それに私とルエラさんが訂正を加えていく。
「ちょ、ちょっと待ってください。おふたりの《地形把握》が早過ぎて書く手が追いつきません!」
幸い入り口付近には魔物の姿はなかった。おかげで戦闘の必要もなかったので、仕事の進みは早い。この段階ではラフでいいので素早く書き留め早く届けることが大切なので、あわてるイアさんの様子に苦笑しつつ、かなりのスピードで地図を作っていく。
そして早々に書き上げた地図とともに本隊に戻った私たちを、テーセウスさんをはじめとする指示役の方々が待ち構えていた。
「早かったな。地図班、では三層の様子を教えてくれ」
テーセウスさん、ピントさん、エンデさんの首脳陣は、戻った地図班が作成した第三層の地図を真剣な表情で覗き込む。
「予想通りだが、ここまで違うか……これはまったく違う地形だな。それにしても入り口付近だけでなく、これだけの範囲の地図を作ってくるとはさすがだな。地図班に感謝する。
さて、ここからが本番だ。《索敵》での情報も聞かせてほしい」
ルエラさんは走り書きのメモを見ながら落ち着いて答える。
「ここまでのところ把握できておりますのは〝洞窟狼〟〝火ネズミ〟そして〝ツノ熊〟ございます」
「〝ツノ熊〟がこんな浅い階層にいるとは、これはオイシイですね」
素材に詳しいエンデさんの瞳が光る。
〝ツノ熊〟は希少性の高い獲物らしく、数を倒せればかなりの収益になる魔獣だ。皮も爪も価値があるそうだが、なかでもツノが魔法薬の貴重な材料になるという。
「これはきっちり仕留めていきたいですね。よろしいですか、みなさま」
「ああ、もちろんだ。しっかり仕留めながら進むとしよう」
方針が固まり〝ツノ熊〟を主な討伐対象とした配置が決まったところで、いよいよ全員が第三層へ移動していく。
このときも地図班はその性質上、前衛のすぐそばに配置される。そこで《索敵》も継続的に行いながらさらに地形を探るのだ。
「〝ツノ熊〟は右側前方に一匹、さらにその奥に一匹が確認できます」
ルエラさんが、どんどん魔物たちの位置情報を伝令役に告げ、必要な人員が指示された方向へ向かっていく。もちろん、私も《索敵》はしているのだが、私はこれまで自分がどうやって逃げるかもしくは回避できるかということを考えるためにこのスキルを使ってきた。
なのでこういった集団での狩りのとき、かなり膨大に得られてしまうそうした情報のどれをどこまで伝えるべきかという判断に迷いがあり、基本は口出しをしないことにした。
(あちこちからたくさん情報が出るとかえって混乱するだろうし、見えすぎてるって思われるのもなぁ……私はチェック役に徹して、間違いがあった場合だけ訂正しよっと。ルエラさんが十分優秀だから、基本お任せでいいよね)
次から次へと位置が特定され、どんどん見つかっていく貴重なお宝に、明らかに冒険者の皆さんの目つきが変わり、そこからは〝ツノ熊〟狩りで白熱するひとときが過ぎた。
二十匹を超える〝ツノ熊〟がマジックバッグに放り込まれるころには、第四層への階段も見つかり、探索は順調に進む。そこからは同じ作業の繰り返しで第六層まで進んだところで、睡眠をとるための長い休憩が決まった。
最も安全と思われる位置を地図班が割り出すと、そこに魔法使いのみなさんが素早く《土障壁》の魔法で壁を築きさらにそれを魔法で強化する。入り口には四名の見張り役が置かれ、数時間ごとに交代するそうだ。
魔法使いが多く配置できると、ダンジョン内での生活環境が段違いに良くなるのだが、今回はとくに素晴らしいと冒険者たちは口々に喜んでいた。
「これならしっかり寝られそうだ。魔法使いさまさまだぜ」
「まったくだ、贅沢なパーティーだよな」
(これだけ魔法使いがいれば、私も目立たないよね。それじゃ、私も寝床を作りますか)
おかわりのしすぎで怒られる人まで出てくるほど好評だった初めての食事休憩も終わり、いよいよ第三層へアタックするときがやってきた。
「ではメイロードさま、ご一緒していただけますか?」
「はい、もちろんです、ルエラさん」
私とルエラさんは、食事が終わると休憩もそこそこに動き始める。アタックのための最初の作業はこれから行こうとしている場所の状況の確認。そう、ここからは〝地図班〟の力量が試される階層が続いていく。
私は慎重に《索敵》のスキルを使いつつ、何人かの冒険者とソーヤ・セーヤに守られながら第三層入り口に進み、ルエラさんとその部下のイアさんの三人でクロスチェックをしながら、得られた情報を統合し第三層入り口周辺だけの地図をまず作っていく。
ルエラさんとイアさんのスキルには明らかに差があり、ふたりは師弟のような関係のようだった。基本イアさんが地図を書き止め、それに私とルエラさんが訂正を加えていく。
「ちょ、ちょっと待ってください。おふたりの《地形把握》が早過ぎて書く手が追いつきません!」
幸い入り口付近には魔物の姿はなかった。おかげで戦闘の必要もなかったので、仕事の進みは早い。この段階ではラフでいいので素早く書き留め早く届けることが大切なので、あわてるイアさんの様子に苦笑しつつ、かなりのスピードで地図を作っていく。
そして早々に書き上げた地図とともに本隊に戻った私たちを、テーセウスさんをはじめとする指示役の方々が待ち構えていた。
「早かったな。地図班、では三層の様子を教えてくれ」
テーセウスさん、ピントさん、エンデさんの首脳陣は、戻った地図班が作成した第三層の地図を真剣な表情で覗き込む。
「予想通りだが、ここまで違うか……これはまったく違う地形だな。それにしても入り口付近だけでなく、これだけの範囲の地図を作ってくるとはさすがだな。地図班に感謝する。
さて、ここからが本番だ。《索敵》での情報も聞かせてほしい」
ルエラさんは走り書きのメモを見ながら落ち着いて答える。
「ここまでのところ把握できておりますのは〝洞窟狼〟〝火ネズミ〟そして〝ツノ熊〟ございます」
「〝ツノ熊〟がこんな浅い階層にいるとは、これはオイシイですね」
素材に詳しいエンデさんの瞳が光る。
〝ツノ熊〟は希少性の高い獲物らしく、数を倒せればかなりの収益になる魔獣だ。皮も爪も価値があるそうだが、なかでもツノが魔法薬の貴重な材料になるという。
「これはきっちり仕留めていきたいですね。よろしいですか、みなさま」
「ああ、もちろんだ。しっかり仕留めながら進むとしよう」
方針が固まり〝ツノ熊〟を主な討伐対象とした配置が決まったところで、いよいよ全員が第三層へ移動していく。
このときも地図班はその性質上、前衛のすぐそばに配置される。そこで《索敵》も継続的に行いながらさらに地形を探るのだ。
「〝ツノ熊〟は右側前方に一匹、さらにその奥に一匹が確認できます」
ルエラさんが、どんどん魔物たちの位置情報を伝令役に告げ、必要な人員が指示された方向へ向かっていく。もちろん、私も《索敵》はしているのだが、私はこれまで自分がどうやって逃げるかもしくは回避できるかということを考えるためにこのスキルを使ってきた。
なのでこういった集団での狩りのとき、かなり膨大に得られてしまうそうした情報のどれをどこまで伝えるべきかという判断に迷いがあり、基本は口出しをしないことにした。
(あちこちからたくさん情報が出るとかえって混乱するだろうし、見えすぎてるって思われるのもなぁ……私はチェック役に徹して、間違いがあった場合だけ訂正しよっと。ルエラさんが十分優秀だから、基本お任せでいいよね)
次から次へと位置が特定され、どんどん見つかっていく貴重なお宝に、明らかに冒険者の皆さんの目つきが変わり、そこからは〝ツノ熊〟狩りで白熱するひとときが過ぎた。
二十匹を超える〝ツノ熊〟がマジックバッグに放り込まれるころには、第四層への階段も見つかり、探索は順調に進む。そこからは同じ作業の繰り返しで第六層まで進んだところで、睡眠をとるための長い休憩が決まった。
最も安全と思われる位置を地図班が割り出すと、そこに魔法使いのみなさんが素早く《土障壁》の魔法で壁を築きさらにそれを魔法で強化する。入り口には四名の見張り役が置かれ、数時間ごとに交代するそうだ。
魔法使いが多く配置できると、ダンジョン内での生活環境が段違いに良くなるのだが、今回はとくに素晴らしいと冒険者たちは口々に喜んでいた。
「これならしっかり寝られそうだ。魔法使いさまさまだぜ」
「まったくだ、贅沢なパーティーだよな」
(これだけ魔法使いがいれば、私も目立たないよね。それじゃ、私も寝床を作りますか)
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