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6 謎の事件と聖人候補
940 美食の女神は大人気
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支援班の魔法使いのお仕事は、暗いダンジョン内での光源の確保、防御力や攻撃力の強化、また怪我の治療など多岐にわたる。魔法使いのいないパーティーではオイルランプや松明を使うのだが、これは荷物は増えるし片手は塞がるしで、とても効率が悪い。だから《灯火》が使えるだけで、魔法使いは商売になるわけだが、一流クランの支援班ともなれば、多くの魔法を使ったしっかりサポートができるスペシャリストばかりだ。
(少し前までは魔道具のランプも使っていたそうだけど、イスで魔道具の街灯が派手に爆発した事件以降、安全のためダンジョンでは使用禁止なんだって。確かにそれに頼ってダンジョン内でいきなり爆発されたらいきなり真っ暗だし、お手上げだもんね)
支援班はサポート役なため、地味な仕事だが彼らなしではダンジョンに長居などできない。特に人数が多い今回のパーティーでは魔法力も多く必要とされるし、全体に目を配る必要があり、臨機応変な対応が求められるのだから、難なくこなしている魔法使いの皆さんはたいしたものだ。
どのクランでも必要とされるこの支援職だが、今回は〝朝日の誓約〟の方々が中心となって全体の魔法配分をコントロールしてくれている。無駄がなく連携が完璧にできている彼女たちのやり方には感心するしかない。さすがは帝国一といわれる魔術師クランだ。
「素晴らしいですね。どこになにが足りないか、一瞬で判断して全体の統制を維持してる……いろいろな魔法を使いながら、これだけの人数でも隊列が乱れることもないし、灯りが足りない場所もない」
どちらかといえば魔法力頼りのゴリ押し力技の私は、協調することのできる魔法使いの皆さんにただただ驚いていた。ピントさんはそんな私の様子をみて嬉しそうに話してくれた。
「ありがとうございます、メイロードさま。〝朝日の誓約〟では日々魔法の効率的な運用の研究をしているのですよ。魔法使いはどうしても一匹狼になりがちで、協調性がないとされておりますが、支援系の魔法が得意な者は、冒険者の皆さんとの連携がうまくいかなければ仕事になりませんし、一度失敗すれば指名されにくくなってしまいますからね。私どものクランでは、そういった訓練もかかしません」
「それが〝朝日の誓約〟の魔法使いが優秀だという信用になるってことですね」
「ええ、その通りです」
物腰やわらかく優しげなピントさんだが、魔法に関しては相当厳しい方のようだ。
それぞれのクランの様子をみてきてくれたソーヤの情報によると、ピントさんはいつもの笑顔のまま一切妥協なしのスパルタ訓練を平然とする鬼教官でもあるらしい。
(それはなかなか……怖いかも。私も怒られないように気をつけよっと)
〝壁抜き〟のために魔法力は温存して欲しいらしく、戦闘については極力手を出さないよういわれている私は、周囲に気を配りつつ地図作りに集中しながら進む。そして気がつけば、パーティーは第二層を速攻で抜け、第三層に入る手前まできていた。もうそこからは先はおそらく前回作った地図も意味をなさないだろう初めて見るに等しいダンジョンだ。
全体に少し緊張が走る中、ここまでも何度か戦闘もあったので、三層に入る前に軽い休憩と食事をしようということになり、いよいよ食事の支援班が動く。
マルコとロッコを中心とした生活支援班は指示が出てから五分とかからずに三十六名分の食事を整えた。温かなパンが山のように盛られたザルと肉もたっぷり入った具沢山のスープの寸胴がドカンと据えられるとお腹を空かせた冒険者たちから歓声が上がる。
「なんだなんだ。一瞬でうまそうな料理が出てきたぞ!」
冒険者の皆さんは嬉しそうに器を受け取り喜んでいるが、これは簡単なことで支援班はこの攻略が始まるまでの期間ずっと料理を作り続け、それをマジックバッグへと保存してダンジョンへ持ち込んでいるからだ。
(まぁ、噛み切るのも大変な干し肉と硬くてパサパサのパンがダンジョンでの軽食の定番だから……あったかいスープとフカフカのパンは嬉しいよね)
もちろんそのマジックバッグは私が提供し、レシピの監修もしている。
「今回のメニューは丸パンと牛乳の白いシチューです。具は芋とにんじんそれにロック鳥の肉、厚めのネギをはじめとする香味野菜や葉野菜数種類も刻んで入れています。まだたっぷりありますよ。よければこちらの〝オンセンタマゴ〟も割り入れると美味しいですよ。さあさあ、おかわりはいかがですか?」
このシチューとてもみなさん気に入ってくれたようで、ひっきりなしのおかわりに対応しながら、マルコとロッコは甲斐甲斐しく働き、皿やスプーンを準備し、回収している。食器は魔法を使って一気に洗浄したあと、マジックバッグへと収納。よほど事前訓練をしたのだろう、実に動きの無駄がない。
うまいうまいとおかわりに走る男性陣。一方〝朝日の誓約〟の女性魔法使いの皆さんは、先ほどから私の方を見てみなさん微笑んだり頷き合ったりしている。
私が彼女たちの様子を不思議に思っていると、《地形探索》班のルエラさんがニコニコとスープの器を抱えながら私に話しかけてきた。
「あのおふたりがいれば、ずっとこのダンジョンでは美味しいものが食べられそうですね。さすがメイロードさまのご推薦ですわ。それに今回はメイロードさまのおかげでマジックバッグを贅沢に使わせていただけて、本当に助かります。食事のためだけのマジックバッグを用意するなんて、思いもつきませんでしたもの」
貴重なマジックバッグをダンジョンに持ち込むとき、できれば極限まで素材回収に使いたい。となると、どうしても食料はギリギリの量の簡易食のみになってしまうのだ。今回のように事前に大量の料理を仕込み、それをマジックバッグで保管するという手間もコストもかかる方法は使わないというか、使えないし、そもそも考えもしないらしい。
「それになにより、こんなにあたたかで美味しいお料理をこんな場所で食べられるなんて。このトロッとした卵がまた美味しくて……本当に幸せです」
「ありがとう、白いシチューは私の村では定番の料理なのよ。イスでもだいぶ普及してきているお料理ね」
「そうですね、牛乳はだいぶお安くなりましたものね。特にイスでは美味しいものが増えました。私たち本拠地はパレスですが、イスはよくうかがっているのですよ。イスは美味しいものが多くて……それもメイロードさまのおかげですわね」
「それは、牛乳を広めてくれたサイデム商会のお手柄ですよ」
「ふふ、私も買いましたのよ、メイロードさまのレシピ集」
「……あ、あははは。そうでしたか」
(どうやら特に女性陣は、私のレシピ集の愛読者が多いらしく、その点でもだいぶ尊敬を集めているみたい。なるほど、それで私の好感度が高いのね)
こちらを見るみなさんに微笑み返しつつ、私も美味しいシチューを楽しんだのだった。
(うん、オイシ!)
支援班の魔法使いのお仕事は、暗いダンジョン内での光源の確保、防御力や攻撃力の強化、また怪我の治療など多岐にわたる。魔法使いのいないパーティーではオイルランプや松明を使うのだが、これは荷物は増えるし片手は塞がるしで、とても効率が悪い。だから《灯火》が使えるだけで、魔法使いは商売になるわけだが、一流クランの支援班ともなれば、多くの魔法を使ったしっかりサポートができるスペシャリストばかりだ。
(少し前までは魔道具のランプも使っていたそうだけど、イスで魔道具の街灯が派手に爆発した事件以降、安全のためダンジョンでは使用禁止なんだって。確かにそれに頼ってダンジョン内でいきなり爆発されたらいきなり真っ暗だし、お手上げだもんね)
支援班はサポート役なため、地味な仕事だが彼らなしではダンジョンに長居などできない。特に人数が多い今回のパーティーでは魔法力も多く必要とされるし、全体に目を配る必要があり、臨機応変な対応が求められるのだから、難なくこなしている魔法使いの皆さんはたいしたものだ。
どのクランでも必要とされるこの支援職だが、今回は〝朝日の誓約〟の方々が中心となって全体の魔法配分をコントロールしてくれている。無駄がなく連携が完璧にできている彼女たちのやり方には感心するしかない。さすがは帝国一といわれる魔術師クランだ。
「素晴らしいですね。どこになにが足りないか、一瞬で判断して全体の統制を維持してる……いろいろな魔法を使いながら、これだけの人数でも隊列が乱れることもないし、灯りが足りない場所もない」
どちらかといえば魔法力頼りのゴリ押し力技の私は、協調することのできる魔法使いの皆さんにただただ驚いていた。ピントさんはそんな私の様子をみて嬉しそうに話してくれた。
「ありがとうございます、メイロードさま。〝朝日の誓約〟では日々魔法の効率的な運用の研究をしているのですよ。魔法使いはどうしても一匹狼になりがちで、協調性がないとされておりますが、支援系の魔法が得意な者は、冒険者の皆さんとの連携がうまくいかなければ仕事になりませんし、一度失敗すれば指名されにくくなってしまいますからね。私どものクランでは、そういった訓練もかかしません」
「それが〝朝日の誓約〟の魔法使いが優秀だという信用になるってことですね」
「ええ、その通りです」
物腰やわらかく優しげなピントさんだが、魔法に関しては相当厳しい方のようだ。
それぞれのクランの様子をみてきてくれたソーヤの情報によると、ピントさんはいつもの笑顔のまま一切妥協なしのスパルタ訓練を平然とする鬼教官でもあるらしい。
(それはなかなか……怖いかも。私も怒られないように気をつけよっと)
〝壁抜き〟のために魔法力は温存して欲しいらしく、戦闘については極力手を出さないよういわれている私は、周囲に気を配りつつ地図作りに集中しながら進む。そして気がつけば、パーティーは第二層を速攻で抜け、第三層に入る手前まできていた。もうそこからは先はおそらく前回作った地図も意味をなさないだろう初めて見るに等しいダンジョンだ。
全体に少し緊張が走る中、ここまでも何度か戦闘もあったので、三層に入る前に軽い休憩と食事をしようということになり、いよいよ食事の支援班が動く。
マルコとロッコを中心とした生活支援班は指示が出てから五分とかからずに三十六名分の食事を整えた。温かなパンが山のように盛られたザルと肉もたっぷり入った具沢山のスープの寸胴がドカンと据えられるとお腹を空かせた冒険者たちから歓声が上がる。
「なんだなんだ。一瞬でうまそうな料理が出てきたぞ!」
冒険者の皆さんは嬉しそうに器を受け取り喜んでいるが、これは簡単なことで支援班はこの攻略が始まるまでの期間ずっと料理を作り続け、それをマジックバッグへと保存してダンジョンへ持ち込んでいるからだ。
(まぁ、噛み切るのも大変な干し肉と硬くてパサパサのパンがダンジョンでの軽食の定番だから……あったかいスープとフカフカのパンは嬉しいよね)
もちろんそのマジックバッグは私が提供し、レシピの監修もしている。
「今回のメニューは丸パンと牛乳の白いシチューです。具は芋とにんじんそれにロック鳥の肉、厚めのネギをはじめとする香味野菜や葉野菜数種類も刻んで入れています。まだたっぷりありますよ。よければこちらの〝オンセンタマゴ〟も割り入れると美味しいですよ。さあさあ、おかわりはいかがですか?」
このシチューとてもみなさん気に入ってくれたようで、ひっきりなしのおかわりに対応しながら、マルコとロッコは甲斐甲斐しく働き、皿やスプーンを準備し、回収している。食器は魔法を使って一気に洗浄したあと、マジックバッグへと収納。よほど事前訓練をしたのだろう、実に動きの無駄がない。
うまいうまいとおかわりに走る男性陣。一方〝朝日の誓約〟の女性魔法使いの皆さんは、先ほどから私の方を見てみなさん微笑んだり頷き合ったりしている。
私が彼女たちの様子を不思議に思っていると、《地形探索》班のルエラさんがニコニコとスープの器を抱えながら私に話しかけてきた。
「あのおふたりがいれば、ずっとこのダンジョンでは美味しいものが食べられそうですね。さすがメイロードさまのご推薦ですわ。それに今回はメイロードさまのおかげでマジックバッグを贅沢に使わせていただけて、本当に助かります。食事のためだけのマジックバッグを用意するなんて、思いもつきませんでしたもの」
貴重なマジックバッグをダンジョンに持ち込むとき、できれば極限まで素材回収に使いたい。となると、どうしても食料はギリギリの量の簡易食のみになってしまうのだ。今回のように事前に大量の料理を仕込み、それをマジックバッグで保管するという手間もコストもかかる方法は使わないというか、使えないし、そもそも考えもしないらしい。
「それになにより、こんなにあたたかで美味しいお料理をこんな場所で食べられるなんて。このトロッとした卵がまた美味しくて……本当に幸せです」
「ありがとう、白いシチューは私の村では定番の料理なのよ。イスでもだいぶ普及してきているお料理ね」
「そうですね、牛乳はだいぶお安くなりましたものね。特にイスでは美味しいものが増えました。私たち本拠地はパレスですが、イスはよくうかがっているのですよ。イスは美味しいものが多くて……それもメイロードさまのおかげですわね」
「それは、牛乳を広めてくれたサイデム商会のお手柄ですよ」
「ふふ、私も買いましたのよ、メイロードさまのレシピ集」
「……あ、あははは。そうでしたか」
(どうやら特に女性陣は、私のレシピ集の愛読者が多いらしく、その点でもだいぶ尊敬を集めているみたい。なるほど、それで私の好感度が高いのね)
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(うん、オイシ!)
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