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6 謎の事件と聖人候補
931 提案
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931
私はここまでに得られた情報を頭の中で整理しながら、なるべく落ち着いて見えるよう口調に注意しながら話し始めた。
「まずは、私をそれぞれのクランの専属魔術師にとのお話についてお返事をさせていただきます。
とても高額な契約料をご提示していただいたことに驚きはしましたが、これはみなさまが私の魔法を評価してくださっているということ……とてもうれしくも思います。ではございますが、たとえこれ以上どんな素晴らしい条件を提示していただいたとしても、私はどのクランからの専属契約も受けることはございません」
私はキッパリとした口調で宣言した。
「私にはすべきことがございます。みなさんもご存知のように、私は冒険者としての仕事に専念できるような状態ではないのです」
そして今度は少し困ったような申し訳なさそうな顔で、私は彼らの希望が叶えられることはないと告げた。
「……」
私の専属契約拒否に三名とも小さなため息はついていたが、これについては反論やそれ以上の勧誘の言葉は誰からも出なかった。どのクランも領主である貴族を冒険者として囲い込むということに相当無理があることはわかっているのだ。それでも莫大な契約金の提示によって領地運営に困っているような状況があれば一縷の望みはあるかもしれないと、賭けてみたというところなのだろう。
(きっと〝やっぱりダメか〟って思っているんだろうね。私がもし貴族でなかったら、もしかしたらその道もあったかもしれないけど、いまとなっては無理だよねぇ……ごめんなさい)
静かになってしまった部屋の空気を切り替えるように、私はこう提案した。
「ですが、みなさんのお話をお伺いして、どちらのクランも新ダンジョンの危険を憂い、一刻も早くその攻略に挑戦し、この国のそして帝都パレスの安全を確かめたいという強い志をお持ちであると感心させていただきました。
そのために、すでに新ダンジョン攻略を一部ながら果たしてみせた私のあの魔法が必要だということもわかります……」
私は微笑みながらゆっくり私の譲歩案について語っていく。
「ならば、この国の貴族である私には、人々の安全を守るため、あの〝新ダンジョン〟に挑む責務があるでしょう」
レシータさんが私の言葉にあわてる。
「メイロードちゃん! あなたにそんな責任はないわ! あなたは立派に領地を納め人々の生活を豊かにしてる。それで十分だし、軍属でもないんだし、そもそもパレスはあなたの領地に遥か遠くよ。領主としての責任の及ぶ範囲じゃないでしょう!」
「まぁ……そうかもしれませんが、私はパレスに店を持っておりますし、たくさんの知人がいます。状況が逼迫しているとなったら無関係は決め込めないですよ」
「まぁ、それはそうかもしれないけど……」
私は三つのクランにおそらく彼らも経験がないだろうやり方を提示する。
「パレス近郊新ダンジョン攻略のために三クラン合同のパーティーを結成しませんか? この難しいダンジョンを踏破するためには、多くの力が必要です。ですから、私は誰かを選ぶのではなく、みなさんを選びたいと考えます」
「なっ!」
「ええ!!」
「ほう?」
三人は私からの提案にしばし絶句した。彼らにとってこの提案は突然しのぎを削っているライバル企業と手を結べと提案したようなものなので、驚かれるのは当然だが、私が得られなければ攻略の可能性が一気に低くなるダンジョン攻略なのだ。ならば、キャスティングボードは私に握らせてもらおう。
「このダンジョンの危険性、そして可能性…‥どちらにせよ迅速な確認が必要です。ならば、最も効率の良いパーティーを組みましょう。もちろん、そのパーティーに私は参加させていただきます」
海千山千のクランリーダーたちを目の前に、満面の笑顔で彼らの瞳を覗き込む私にはなかなか凄みがあった、とあとでレシータさんにからかわれたが、彼らは少し青い顔をしたままのしばしの沈黙のあと、三者だけで相談させて欲しいと言ってきた。
「もちろん、どうぞ十二分なお話し合いを」
そして私の言葉に三人は軽く会釈すると、猛スピードで席を立ちどこかに行ってしまった。その背中にレシータさんは声をかける。
「それぞれに控室と三者が集まれる会議室を用意してあげるから、早めに結論出してねー!」
これから彼らは大変面倒で熾烈な交渉を繰り広げるのだろうが、どんな条件になるにせよ、あとは彼らの問題だ。
「メイロードちゃん、何時になるかわからないし、私は仕事に戻るわね」
「そうですね、私も家に一度もどります。交渉が終わったら《伝令》を飛ばしてください」
「くくく、あの子たち、どんな腹の探り合いをしているのかしらね」
レシータさんにとっては、彼らもまだひよっこに見えるのだろう。頭を悩ませているだろう彼らの方を見ながら、おもしろそうに笑った。
私はここまでに得られた情報を頭の中で整理しながら、なるべく落ち着いて見えるよう口調に注意しながら話し始めた。
「まずは、私をそれぞれのクランの専属魔術師にとのお話についてお返事をさせていただきます。
とても高額な契約料をご提示していただいたことに驚きはしましたが、これはみなさまが私の魔法を評価してくださっているということ……とてもうれしくも思います。ではございますが、たとえこれ以上どんな素晴らしい条件を提示していただいたとしても、私はどのクランからの専属契約も受けることはございません」
私はキッパリとした口調で宣言した。
「私にはすべきことがございます。みなさんもご存知のように、私は冒険者としての仕事に専念できるような状態ではないのです」
そして今度は少し困ったような申し訳なさそうな顔で、私は彼らの希望が叶えられることはないと告げた。
「……」
私の専属契約拒否に三名とも小さなため息はついていたが、これについては反論やそれ以上の勧誘の言葉は誰からも出なかった。どのクランも領主である貴族を冒険者として囲い込むということに相当無理があることはわかっているのだ。それでも莫大な契約金の提示によって領地運営に困っているような状況があれば一縷の望みはあるかもしれないと、賭けてみたというところなのだろう。
(きっと〝やっぱりダメか〟って思っているんだろうね。私がもし貴族でなかったら、もしかしたらその道もあったかもしれないけど、いまとなっては無理だよねぇ……ごめんなさい)
静かになってしまった部屋の空気を切り替えるように、私はこう提案した。
「ですが、みなさんのお話をお伺いして、どちらのクランも新ダンジョンの危険を憂い、一刻も早くその攻略に挑戦し、この国のそして帝都パレスの安全を確かめたいという強い志をお持ちであると感心させていただきました。
そのために、すでに新ダンジョン攻略を一部ながら果たしてみせた私のあの魔法が必要だということもわかります……」
私は微笑みながらゆっくり私の譲歩案について語っていく。
「ならば、この国の貴族である私には、人々の安全を守るため、あの〝新ダンジョン〟に挑む責務があるでしょう」
レシータさんが私の言葉にあわてる。
「メイロードちゃん! あなたにそんな責任はないわ! あなたは立派に領地を納め人々の生活を豊かにしてる。それで十分だし、軍属でもないんだし、そもそもパレスはあなたの領地に遥か遠くよ。領主としての責任の及ぶ範囲じゃないでしょう!」
「まぁ……そうかもしれませんが、私はパレスに店を持っておりますし、たくさんの知人がいます。状況が逼迫しているとなったら無関係は決め込めないですよ」
「まぁ、それはそうかもしれないけど……」
私は三つのクランにおそらく彼らも経験がないだろうやり方を提示する。
「パレス近郊新ダンジョン攻略のために三クラン合同のパーティーを結成しませんか? この難しいダンジョンを踏破するためには、多くの力が必要です。ですから、私は誰かを選ぶのではなく、みなさんを選びたいと考えます」
「なっ!」
「ええ!!」
「ほう?」
三人は私からの提案にしばし絶句した。彼らにとってこの提案は突然しのぎを削っているライバル企業と手を結べと提案したようなものなので、驚かれるのは当然だが、私が得られなければ攻略の可能性が一気に低くなるダンジョン攻略なのだ。ならば、キャスティングボードは私に握らせてもらおう。
「このダンジョンの危険性、そして可能性…‥どちらにせよ迅速な確認が必要です。ならば、最も効率の良いパーティーを組みましょう。もちろん、そのパーティーに私は参加させていただきます」
海千山千のクランリーダーたちを目の前に、満面の笑顔で彼らの瞳を覗き込む私にはなかなか凄みがあった、とあとでレシータさんにからかわれたが、彼らは少し青い顔をしたままのしばしの沈黙のあと、三者だけで相談させて欲しいと言ってきた。
「もちろん、どうぞ十二分なお話し合いを」
そして私の言葉に三人は軽く会釈すると、猛スピードで席を立ちどこかに行ってしまった。その背中にレシータさんは声をかける。
「それぞれに控室と三者が集まれる会議室を用意してあげるから、早めに結論出してねー!」
これから彼らは大変面倒で熾烈な交渉を繰り広げるのだろうが、どんな条件になるにせよ、あとは彼らの問題だ。
「メイロードちゃん、何時になるかわからないし、私は仕事に戻るわね」
「そうですね、私も家に一度もどります。交渉が終わったら《伝令》を飛ばしてください」
「くくく、あの子たち、どんな腹の探り合いをしているのかしらね」
レシータさんにとっては、彼らもまだひよっこに見えるのだろう。頭を悩ませているだろう彼らの方を見ながら、おもしろそうに笑った。
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