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4 聖人候補の領地経営
711 裁定
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711
「サンク、エイト、オーゴ、前に出なさい」
天国のような幸せな数日をメイロードさまのお屋敷で過ごさせていただいたあと、私たちは軍部がよこした〝天舟〟に乗せられパレスへと護送された。それから二週間、私たちは重罪人の取り調べを行い収監するための施設で、再び腕に《封じの腕輪》をつけられた状態のまま、何度も取り調べを受けることになった。
シドの軍部からきたという担当官による私たちに対する尋問は、本当に執拗なものだった。
1の639という名を捨て、メイロードさまにいただいたサンクという新しい名となっていた私は、この時すでにあの〝孤児院〟から受けたひどい裏切りを悔しく思う気持ちはあっても、一切彼等をかばう気持ちはなどなかった。もちろん何ひとつ隠し立てをする気もなかったのだが、私たちから得られる情報のあまりの少なさに、尋問を担当した軍部の方々には、何かを隠しているのではないかと疑われ続けることになってしまったようだ。
すでにメイロードさまのお力であの恐ろしい《魔法契約書》から解放されている私たちは、なんでも好きに言うことができるようになっているのだが、知らないことは話せない。あの〝孤児院〟で、なんの疑いもなく先生の指示を守り、言われるがままに過ごしていた自分たちの無知と愚かさにただ涙することしかできず、何でも話そうという気持ちでいるのに、彼等が望む情報を何ひとつ与えられない情けなさに唇を噛む日々が続いた。
最後には自白を促すという怪しげな魔法薬まで飲まされることになったが、もちろん飲んだところで〝孤児院〟に幼い頃から閉じ込められていた私たちが話せることはそのときすでになく、それまでと同じ言葉を繰り返すことしかできなかった。
長い尋問の日々が終わると、私たちは部屋に軟禁されることにはなったが、そこでの生活は驚くほど穏やかなものだった。きちんと清潔な寝床も用意され、協力的であったということで《封じの腕輪》も外された。日々提供されるきちんとした三度の食事など、もう何年もまともに食べたことのない我々には、本当に嬉しいものだった。
(残念ながらキッペイさんの言っていた通り、メイロードさまの作られるお食事が特別であったことは、すぐ実感することになったが……)
そして今日、私たちは腰に紐をつけられた状態で、〝裁定の部屋〟へと連れてこられた。
いよいよ、刑が確定するのだ。
そういえば、私たちを奴隷として使役していたあの三人の悪人たちだが、彼等はまだ取り調べ中だ。
彼等にも私たちと同じ自白を促すという魔法薬が使われたそうなのだが、そこで自白した彼等の犯罪の数があまりにも多かったため、ロームバルトから担当官を招聘した上で、改めてすべての罪について取り調べ中なのだという。
もうすでに死刑の要件は十二分に満たしているとのことだが、刑の執行は聞くべきことをすべて聞いてから、ということらしい。
(私たちのことも、どうしてこうなったのかも、きっとあの悪党たちの方がよく知っているのかもしれないな……)
「どうしました? 聞いていますか?」
壇上の裁定官が、私に問いかけた。
「いえ、失礼いたしました」
私は居住まいを正し、背筋を伸ばして他の二人と共に裁定官の前に立つ。
「お前たちには、手配中の凶悪な犯罪者たちの逃亡を幇助した罪。そしてシド帝国マリス領セータイズでの二件の強盗及び一件の強盗未遂の容疑がかけられている。事実に相違ないか」
「……はい、相違ございません」
私たちは覚悟していた。極刑もありうるし、もしそれから逃れられたとしても、長い強制労働は間違いないと思っていた。
(それだけのことをしたのだ……どんな裁定でも受け入れよう)
神に背く大罪を犯してしまった私たち三人はそう覚悟していた。そして、これからは、ただ粛々と神に祈りを捧げる日々を過ごし、自らの罪を贖っていくのだと……
私たちはごく自然に手を組み神への祈りを捧げながら、裁定の声を待っていた。
「サンク、エイト、オーゴ。お前たち三名は、これから五年間の無給労働が課せられることとなった。
お前たちの罪は明らかなものであるが、それは強制されたものであり特殊な魔法契約による支配下に置かれていたため拒む術がなかったことを、ハンス・グッケンス博士及び魔道具鑑定人エルリベット・バレリオの両名が宣誓の上証言した。また、シド帝国内での犯罪が行われたマリス領領主メイロード・マリス伯爵からの減刑を望む嘆願もあり、情状を酌量し減刑を認めた」
「グッケンス博士が……」
「メイロードさまが……」
私たちはそのまま震える手で祈りながら泣き続けた。
「そなたたちの身柄は、ハンス・グッケンス博士にお預かりいただけることになった。博士のもとでしっかり奉仕を行い罪を悔いなさい」
「はい。ご厚情に感謝申し上げます」
深々と頭を下げた後、そのまま私たちは馬車へと乗せられ〝魔術師ギルド〟へと連れて行かれた。
応接室に通された私たちのもとへ、パレスのギルド長だというテアム・セグッテさんが現れ、歓迎すると笑顔で言ってくれた。
「あなた方のひどい体験のことは、グッケンス様からお聞きしました。それでもしてしまったことの責任は取らなければなりませんからね。それに、肉体的にはひ弱な魔術師に強制労働をさせても、役にも立ちませんし……
それで、あなた方にはこの〝魔術師ギルド〟で働いていただくことにしました。魔法のことをよく理解している事務方は、常に不足状態ですから仕事はいくらでもあるのですよ」
私たちはそこで、衣食住を保証され働くことになった。五年間は無給だが、働き次第ではその後正式な職員になることも可能だそうだ。
「感謝いたします……心から感謝いたします……」
私たちはここで誠心誠意仕事に努めることを固く心に決めた。マーヴ神とグッケンス博士、そして我らが女神メイロードさまに誓って!
「サンク、エイト、オーゴ、前に出なさい」
天国のような幸せな数日をメイロードさまのお屋敷で過ごさせていただいたあと、私たちは軍部がよこした〝天舟〟に乗せられパレスへと護送された。それから二週間、私たちは重罪人の取り調べを行い収監するための施設で、再び腕に《封じの腕輪》をつけられた状態のまま、何度も取り調べを受けることになった。
シドの軍部からきたという担当官による私たちに対する尋問は、本当に執拗なものだった。
1の639という名を捨て、メイロードさまにいただいたサンクという新しい名となっていた私は、この時すでにあの〝孤児院〟から受けたひどい裏切りを悔しく思う気持ちはあっても、一切彼等をかばう気持ちはなどなかった。もちろん何ひとつ隠し立てをする気もなかったのだが、私たちから得られる情報のあまりの少なさに、尋問を担当した軍部の方々には、何かを隠しているのではないかと疑われ続けることになってしまったようだ。
すでにメイロードさまのお力であの恐ろしい《魔法契約書》から解放されている私たちは、なんでも好きに言うことができるようになっているのだが、知らないことは話せない。あの〝孤児院〟で、なんの疑いもなく先生の指示を守り、言われるがままに過ごしていた自分たちの無知と愚かさにただ涙することしかできず、何でも話そうという気持ちでいるのに、彼等が望む情報を何ひとつ与えられない情けなさに唇を噛む日々が続いた。
最後には自白を促すという怪しげな魔法薬まで飲まされることになったが、もちろん飲んだところで〝孤児院〟に幼い頃から閉じ込められていた私たちが話せることはそのときすでになく、それまでと同じ言葉を繰り返すことしかできなかった。
長い尋問の日々が終わると、私たちは部屋に軟禁されることにはなったが、そこでの生活は驚くほど穏やかなものだった。きちんと清潔な寝床も用意され、協力的であったということで《封じの腕輪》も外された。日々提供されるきちんとした三度の食事など、もう何年もまともに食べたことのない我々には、本当に嬉しいものだった。
(残念ながらキッペイさんの言っていた通り、メイロードさまの作られるお食事が特別であったことは、すぐ実感することになったが……)
そして今日、私たちは腰に紐をつけられた状態で、〝裁定の部屋〟へと連れてこられた。
いよいよ、刑が確定するのだ。
そういえば、私たちを奴隷として使役していたあの三人の悪人たちだが、彼等はまだ取り調べ中だ。
彼等にも私たちと同じ自白を促すという魔法薬が使われたそうなのだが、そこで自白した彼等の犯罪の数があまりにも多かったため、ロームバルトから担当官を招聘した上で、改めてすべての罪について取り調べ中なのだという。
もうすでに死刑の要件は十二分に満たしているとのことだが、刑の執行は聞くべきことをすべて聞いてから、ということらしい。
(私たちのことも、どうしてこうなったのかも、きっとあの悪党たちの方がよく知っているのかもしれないな……)
「どうしました? 聞いていますか?」
壇上の裁定官が、私に問いかけた。
「いえ、失礼いたしました」
私は居住まいを正し、背筋を伸ばして他の二人と共に裁定官の前に立つ。
「お前たちには、手配中の凶悪な犯罪者たちの逃亡を幇助した罪。そしてシド帝国マリス領セータイズでの二件の強盗及び一件の強盗未遂の容疑がかけられている。事実に相違ないか」
「……はい、相違ございません」
私たちは覚悟していた。極刑もありうるし、もしそれから逃れられたとしても、長い強制労働は間違いないと思っていた。
(それだけのことをしたのだ……どんな裁定でも受け入れよう)
神に背く大罪を犯してしまった私たち三人はそう覚悟していた。そして、これからは、ただ粛々と神に祈りを捧げる日々を過ごし、自らの罪を贖っていくのだと……
私たちはごく自然に手を組み神への祈りを捧げながら、裁定の声を待っていた。
「サンク、エイト、オーゴ。お前たち三名は、これから五年間の無給労働が課せられることとなった。
お前たちの罪は明らかなものであるが、それは強制されたものであり特殊な魔法契約による支配下に置かれていたため拒む術がなかったことを、ハンス・グッケンス博士及び魔道具鑑定人エルリベット・バレリオの両名が宣誓の上証言した。また、シド帝国内での犯罪が行われたマリス領領主メイロード・マリス伯爵からの減刑を望む嘆願もあり、情状を酌量し減刑を認めた」
「グッケンス博士が……」
「メイロードさまが……」
私たちはそのまま震える手で祈りながら泣き続けた。
「そなたたちの身柄は、ハンス・グッケンス博士にお預かりいただけることになった。博士のもとでしっかり奉仕を行い罪を悔いなさい」
「はい。ご厚情に感謝申し上げます」
深々と頭を下げた後、そのまま私たちは馬車へと乗せられ〝魔術師ギルド〟へと連れて行かれた。
応接室に通された私たちのもとへ、パレスのギルド長だというテアム・セグッテさんが現れ、歓迎すると笑顔で言ってくれた。
「あなた方のひどい体験のことは、グッケンス様からお聞きしました。それでもしてしまったことの責任は取らなければなりませんからね。それに、肉体的にはひ弱な魔術師に強制労働をさせても、役にも立ちませんし……
それで、あなた方にはこの〝魔術師ギルド〟で働いていただくことにしました。魔法のことをよく理解している事務方は、常に不足状態ですから仕事はいくらでもあるのですよ」
私たちはそこで、衣食住を保証され働くことになった。五年間は無給だが、働き次第ではその後正式な職員になることも可能だそうだ。
「感謝いたします……心から感謝いたします……」
私たちはここで誠心誠意仕事に努めることを固く心に決めた。マーヴ神とグッケンス博士、そして我らが女神メイロードさまに誓って!
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