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4 聖人候補の領地経営
680 会食
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680
「メイロードちゃーーん!!」
(ああ、いつものヤツだ……)
この〝いつものヤツ〟の数分前、〝大地の恵み〟亭に着いた私とサイデムおじさまは、最敬礼状態の従業員と料理長に入り口で出迎えられた。
マルコとロッコも私の到着を聞いた瞬間、ダッシュで迎えに出ようとしたらしいが、仕事がつまっているからと羽交い締めで同僚に拘束されたらしい。
「絶対やると思っておりましたので、先手を打って捕まえさせました」
料理長のチェダルさんが苦笑していた。
(完全に読まれてる。それにしてもふたりとも、何やってるんだか……)
案内されて、ほかの人たちに会わなくて済む通路から個室へと案内されて席に近づいた瞬間、ものすごい勢いで近づいてきたレシータさんに抱きしめられた。
そう、これはいつものことなので私ももう驚いたりはしないが、相変わらずの大迫力だ。この元最強剣士の美魔女さんは二メートルはゆうにありそうな身長でこの美貌、その迫力は半端ない。そしてレシータさんに半分抱えられるように並ぶと、大きくなったと言われた私も相変わらず人形か!っていうぐらい小さいので、ちょっと凹む。
「メイロードさま、伯爵となられましたこと、誠におめでとうございます」
いつものように笑顔のトルッカ・ゼンモンさんが落ち着いた声で話しかけてくれた。それに追随して、皆さんからお祝いの言葉をいただく。
「皆さん、ありがとうございます。期せずしてこういうことになりましたが、私自身は変わりなく皆さんとおつきあいしていくつもりですし、皆さんにもそうあっていただきたいと思っています」
「それでこそメイロードちゃんよね!」
おじさまに怒られて、私から引き離されたレシータさんだが、全然めげることなく笑顔で席に座った。
ここは〝大地の恵み〟亭の中でも特別な個室だ。この目立つメンバーが集まるとなれば、それは個室にするしかないだろう。
「今回、私のためのパーティーを開くに当たっても、皆様からご支援をいただき、ありがとうございます」
「メイロードさまは、イスでは生ける伝説ですもの。イスの誇りにかけて、最高の舞台をご用意いたしますよ。このパーティーのために、すでに超一流の楽士たちを集結して特別編成の楽団を用意し、リハーサルも開始させていますので、大船に乗ったつもりでいてくださいませ」
芸人ギルドの幹事を務めているケイト・マシアさんは、いつものように艶然と微笑みながら自信たっぷりに当日の音楽演出について語ってくれた。
職人ギルドの皆さんには、今回のための特注の調度品を特急で仕上げていただいているそうだし、冒険者ギルドからは厳選した警備要員をパレスに派遣してもらうことになっている。
ゼンモンさんのところからは、当日の救護要員を出してもらうそうだ。
今回のパーティーには、私の予想を超えた団結力で〝イス一丸となって〟臨むことになっているとヒシヒシと感じる。
(思った以上に、すごく大ごとなんだなぁ……これって)
今日のお料理についても私が来ると聞き、厨房も気合いが入りまくりのようで、今夜限りの特別コースを用意してくれていた。すべての料理の盛り付けの監修をマルコとロッコが担当しているというだけあり、前菜からおいしさだけでなく見た目の良さにも気配りが感じられる。野菜を蝶の形に切り抜いて飾りにしてみたり、飴を流したものをガラスの器に見立てて盛り付けをしてみたりと、とても楽しい仕掛けがしてあった。
(みんな腕を上げたなぁ……どのお皿も楽しくて美味しい!)
私は皆さんと楽しく会食をして、再度協力に感謝をし立派にやり遂げてくることを約束した。私の〝少女領主〟という立場も、今回のイベントを成功裏に終わらせることで盤石なものとなる。それを皆さんも期待してくれていることは十分わかったので、私もしっかりお役目を果たすつもりだ。
そして豪華なお食事も終盤、デザートの皿は、やっぱりマルコとロッコが持ってきた。
(そうだと思った)
「メイロードさま、よくお越しくださいました!」
「本日のディセールは、季節のベリーソルベとアイスフロマージュ、それにチョコレートとナッツのムースにマルマッジソースを添えました」
飴細工で巣篭もり風に飾られたディセールは、華やかで、味はもちろん申し分ない。
「うん、とっても美味しい。相変わらずいい仕事よ、マルコ、ロッコ」
私の言葉にふたりは顔をくしゃくしゃにして喜んでいる。そんな私たちの様子を見て、皆さんもとても和んでいるようだ。
「メイロードさまの周りには、いい人材が集まりますな」
「メイロードちゃんが〝いい人材〟にしてしまうんじゃない?」
「そうかもしれませんな。我々もそうありたいです」
「こんなうまいもの、パレスでだってそうそう食べられやせんでしょうからねぇ」
確かに皆さんの仰るとおり、私はとても人に恵まれてきたと思う。私を支えてくれている人たちの優秀さに助けられていなければ、なんの経験もなくいきなり貴族となり領地運営を始めて、うまく行くわけがない。
(やっぱり、大事なのは人だよね……)
人との絆を大切にしていこうと、改めて決意しながら〝大地の恵み〟亭を出たところで、ふいにおじさまがボソッとこう言った。
「小腹が空いたな……」
「はぁ? 何言ってんですか!」
呆れて説教をしようとする私を無視して、おじさまがスタスタと歩き出す。
仕方なくそれについてしばらく歩いた私の前には、さらに呆れた光景が広がっていた。
(嘘でしょう? 何、これ……)
「メイロードちゃーーん!!」
(ああ、いつものヤツだ……)
この〝いつものヤツ〟の数分前、〝大地の恵み〟亭に着いた私とサイデムおじさまは、最敬礼状態の従業員と料理長に入り口で出迎えられた。
マルコとロッコも私の到着を聞いた瞬間、ダッシュで迎えに出ようとしたらしいが、仕事がつまっているからと羽交い締めで同僚に拘束されたらしい。
「絶対やると思っておりましたので、先手を打って捕まえさせました」
料理長のチェダルさんが苦笑していた。
(完全に読まれてる。それにしてもふたりとも、何やってるんだか……)
案内されて、ほかの人たちに会わなくて済む通路から個室へと案内されて席に近づいた瞬間、ものすごい勢いで近づいてきたレシータさんに抱きしめられた。
そう、これはいつものことなので私ももう驚いたりはしないが、相変わらずの大迫力だ。この元最強剣士の美魔女さんは二メートルはゆうにありそうな身長でこの美貌、その迫力は半端ない。そしてレシータさんに半分抱えられるように並ぶと、大きくなったと言われた私も相変わらず人形か!っていうぐらい小さいので、ちょっと凹む。
「メイロードさま、伯爵となられましたこと、誠におめでとうございます」
いつものように笑顔のトルッカ・ゼンモンさんが落ち着いた声で話しかけてくれた。それに追随して、皆さんからお祝いの言葉をいただく。
「皆さん、ありがとうございます。期せずしてこういうことになりましたが、私自身は変わりなく皆さんとおつきあいしていくつもりですし、皆さんにもそうあっていただきたいと思っています」
「それでこそメイロードちゃんよね!」
おじさまに怒られて、私から引き離されたレシータさんだが、全然めげることなく笑顔で席に座った。
ここは〝大地の恵み〟亭の中でも特別な個室だ。この目立つメンバーが集まるとなれば、それは個室にするしかないだろう。
「今回、私のためのパーティーを開くに当たっても、皆様からご支援をいただき、ありがとうございます」
「メイロードさまは、イスでは生ける伝説ですもの。イスの誇りにかけて、最高の舞台をご用意いたしますよ。このパーティーのために、すでに超一流の楽士たちを集結して特別編成の楽団を用意し、リハーサルも開始させていますので、大船に乗ったつもりでいてくださいませ」
芸人ギルドの幹事を務めているケイト・マシアさんは、いつものように艶然と微笑みながら自信たっぷりに当日の音楽演出について語ってくれた。
職人ギルドの皆さんには、今回のための特注の調度品を特急で仕上げていただいているそうだし、冒険者ギルドからは厳選した警備要員をパレスに派遣してもらうことになっている。
ゼンモンさんのところからは、当日の救護要員を出してもらうそうだ。
今回のパーティーには、私の予想を超えた団結力で〝イス一丸となって〟臨むことになっているとヒシヒシと感じる。
(思った以上に、すごく大ごとなんだなぁ……これって)
今日のお料理についても私が来ると聞き、厨房も気合いが入りまくりのようで、今夜限りの特別コースを用意してくれていた。すべての料理の盛り付けの監修をマルコとロッコが担当しているというだけあり、前菜からおいしさだけでなく見た目の良さにも気配りが感じられる。野菜を蝶の形に切り抜いて飾りにしてみたり、飴を流したものをガラスの器に見立てて盛り付けをしてみたりと、とても楽しい仕掛けがしてあった。
(みんな腕を上げたなぁ……どのお皿も楽しくて美味しい!)
私は皆さんと楽しく会食をして、再度協力に感謝をし立派にやり遂げてくることを約束した。私の〝少女領主〟という立場も、今回のイベントを成功裏に終わらせることで盤石なものとなる。それを皆さんも期待してくれていることは十分わかったので、私もしっかりお役目を果たすつもりだ。
そして豪華なお食事も終盤、デザートの皿は、やっぱりマルコとロッコが持ってきた。
(そうだと思った)
「メイロードさま、よくお越しくださいました!」
「本日のディセールは、季節のベリーソルベとアイスフロマージュ、それにチョコレートとナッツのムースにマルマッジソースを添えました」
飴細工で巣篭もり風に飾られたディセールは、華やかで、味はもちろん申し分ない。
「うん、とっても美味しい。相変わらずいい仕事よ、マルコ、ロッコ」
私の言葉にふたりは顔をくしゃくしゃにして喜んでいる。そんな私たちの様子を見て、皆さんもとても和んでいるようだ。
「メイロードさまの周りには、いい人材が集まりますな」
「メイロードちゃんが〝いい人材〟にしてしまうんじゃない?」
「そうかもしれませんな。我々もそうありたいです」
「こんなうまいもの、パレスでだってそうそう食べられやせんでしょうからねぇ」
確かに皆さんの仰るとおり、私はとても人に恵まれてきたと思う。私を支えてくれている人たちの優秀さに助けられていなければ、なんの経験もなくいきなり貴族となり領地運営を始めて、うまく行くわけがない。
(やっぱり、大事なのは人だよね……)
人との絆を大切にしていこうと、改めて決意しながら〝大地の恵み〟亭を出たところで、ふいにおじさまがボソッとこう言った。
「小腹が空いたな……」
「はぁ? 何言ってんですか!」
呆れて説教をしようとする私を無視して、おじさまがスタスタと歩き出す。
仕方なくそれについてしばらく歩いた私の前には、さらに呆れた光景が広がっていた。
(嘘でしょう? 何、これ……)
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