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4 聖人候補の領地経営
642 出店者の皆さんのために
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642
会場合図のラッパが鳴り響き、それと同時に徹夜組を含め、朝早くから並んだ人たちが、会場になだれ込んでくる。
高揚した顔で足早に歩くその人々の多くが、手に手に入り口で受け取った投票用紙と一枚ペラの新聞を持っていた。
(会場で走ったり、人を押しのけたりすると危険なので、警備している軍が拘束する可能性があると、開会式でだいぶ強く言っていたので、さすがに走る人はいないようで、ホッとした)
それは、今日のために私が提案して資金を出し、新聞屋さんに作ってもらって配布をお願いした会場案内図。新聞という体裁はとっているが、これはこの菓子博のガイドブックのようなものだ。それぞれの屋台の位置に出入口やトイレの位置、もちろんそれぞれの屋台の紹介記事も詳細に書かれている。折りたたむと、さらにガイドブックっぽくコンパクトになり、持ちやすくなる工夫もしてあるので、きっと持ち帰ってくれるだろう。
この新聞、そうした工夫や、楽しくなりそうな企画についてはいろいろと提案は出したが、記事は新聞屋さんにお任せしたので、私はノータッチ。公正な態度で編集してもらってよいと話してあるし、これに関しては“カカオの誘惑”がお金を出していることも明記していない。
行列の様子を見てきてくれたソーヤによれば、比較的識字率の高いパレスの人々は、読める人を中心に集まって地図を見ながらお店の紹介記事の内容を、並んでいる間ずっと読んだり聞いたり相談したりしながら過ごしていたという。これは私の思惑通り、並んでいる間もいい宣伝の機会になってくれたようだ。
(こんな出来レースに知らずに参加しているお店の人たちのためにも、せめて、しっかり宣伝になる菓子博になってほしいものね。あの新聞を持ち帰ってくれれば、のちのちそれぞれのお店に買いに行く機会もきっと増やせるでしょう)
今回の菓子博覧会は国からの招聘となるため、移動費や屋台の設営費用などといった基本的な費用は主催者が出してくれることのなっている。私やタガローサはともかく、他の方々については開会中値段を下げて売るための差額も補填されるようドール参謀に交渉したので、負担はだいぶ軽くなっているし、それなりに利益が出るようにはしたつもりだ。
それでも、今回〝正々堂々〟とはいえない勝負を菓子博の前から裏で繰り広げている私とタガローサのことを考えると、やはり彼らに対する負い目はないとはいえない。私は今回図らずも巻き込むことになってしまったお菓子屋さんたちに、せめてしっかりとした宣伝の機会として活用して欲しいと思いこんなガイドブック風の新聞を作った。
(まぁ、もちろんそれだけではなく、私たちの行った大規模な試食や広告といった宣伝活動も、実はこの時のためにあったんだけどね)
来場者は何を食べたいか、真剣に考えている。なぜ真剣かといえば、制約があるからだ。
以前も話した通り、甘い菓子はそれだけで高級品だ。比較的裕福な人々が多く菓子の購買層が厚いパレスではあるが、庶民にはまだまだ高嶺の花。いつでもお腹いっぱいに食べられるようなものではない。
だが、この〝パレス菓子博覧会〟では、そんなお菓子を半額で食べられる。しかも店はどれも評判の店ばかり。パレスの庶民にとっては夢のようなお祭りなのだ。
だが来場者たちの多くには予算に限りがあり、食べられる量には限界がある。となれば、彼らは選択しなくてはならないのだ。
“どれから食べたいか”
その〝どれ〟に必ず〝カカオの誘惑〟が入ってくれるよう、この彼らの思いを後押しするための宣伝活動を私たちはやってきた。
「この日に〝カカオの誘惑〟の新作菓子を食べずには帰れない!」
そう思ってもらい、必ず私たちの屋台を、しかもなるべく早い段階で訪れてもらうための宣伝活動だったのだ。満腹になれば購買意欲は下がってしまうし、予算オーバーになってしまっても買っては貰えない。
そして、人の波は一気に〝カカオの誘惑〟の屋台に押し寄せてきた。地図を持った人々は、迷うことなく一直線に〝カカオの誘惑〟へとやってきてくれたのだ。
「さぁ、しっかり行列の誘導をしましょう! みんな始まるよ!」
私は前線に立ちつつ、お客様に巻き込まれない位置で指示を出していく。まずお客様の狙いは、ここ数日で急速に知名度を上げ、噂になっている〝ココア風味の鈴カステラ完成品〟だろう。
今回は、たくさんの数を売るための対策として、袋は20個入りで固定にした。購入できる数もおひとり様五袋までとさせてもらう。こうした制限は、おそらくどこの屋台でもしているだろう。多くの人に手に取ってもらうためには仕方がない。
値段も気前よく、そしてお釣りが出ない1ポルに設定。原価を考えると普通なら大赤字だろうけれど、私の場合はそれは考えなくてもいいし、この値段で売るのはこの期間中だけなので、お店では売るときにはそこそこ利益は出せる。
最初のお客様たちが、早速袋を受け取って笑顔で列を離れ袋を開けている。そして嬉しそうな彼らの顔はその中身を見て驚きに変わっていく。
「え……白い?」
会場合図のラッパが鳴り響き、それと同時に徹夜組を含め、朝早くから並んだ人たちが、会場になだれ込んでくる。
高揚した顔で足早に歩くその人々の多くが、手に手に入り口で受け取った投票用紙と一枚ペラの新聞を持っていた。
(会場で走ったり、人を押しのけたりすると危険なので、警備している軍が拘束する可能性があると、開会式でだいぶ強く言っていたので、さすがに走る人はいないようで、ホッとした)
それは、今日のために私が提案して資金を出し、新聞屋さんに作ってもらって配布をお願いした会場案内図。新聞という体裁はとっているが、これはこの菓子博のガイドブックのようなものだ。それぞれの屋台の位置に出入口やトイレの位置、もちろんそれぞれの屋台の紹介記事も詳細に書かれている。折りたたむと、さらにガイドブックっぽくコンパクトになり、持ちやすくなる工夫もしてあるので、きっと持ち帰ってくれるだろう。
この新聞、そうした工夫や、楽しくなりそうな企画についてはいろいろと提案は出したが、記事は新聞屋さんにお任せしたので、私はノータッチ。公正な態度で編集してもらってよいと話してあるし、これに関しては“カカオの誘惑”がお金を出していることも明記していない。
行列の様子を見てきてくれたソーヤによれば、比較的識字率の高いパレスの人々は、読める人を中心に集まって地図を見ながらお店の紹介記事の内容を、並んでいる間ずっと読んだり聞いたり相談したりしながら過ごしていたという。これは私の思惑通り、並んでいる間もいい宣伝の機会になってくれたようだ。
(こんな出来レースに知らずに参加しているお店の人たちのためにも、せめて、しっかり宣伝になる菓子博になってほしいものね。あの新聞を持ち帰ってくれれば、のちのちそれぞれのお店に買いに行く機会もきっと増やせるでしょう)
今回の菓子博覧会は国からの招聘となるため、移動費や屋台の設営費用などといった基本的な費用は主催者が出してくれることのなっている。私やタガローサはともかく、他の方々については開会中値段を下げて売るための差額も補填されるようドール参謀に交渉したので、負担はだいぶ軽くなっているし、それなりに利益が出るようにはしたつもりだ。
それでも、今回〝正々堂々〟とはいえない勝負を菓子博の前から裏で繰り広げている私とタガローサのことを考えると、やはり彼らに対する負い目はないとはいえない。私は今回図らずも巻き込むことになってしまったお菓子屋さんたちに、せめてしっかりとした宣伝の機会として活用して欲しいと思いこんなガイドブック風の新聞を作った。
(まぁ、もちろんそれだけではなく、私たちの行った大規模な試食や広告といった宣伝活動も、実はこの時のためにあったんだけどね)
来場者は何を食べたいか、真剣に考えている。なぜ真剣かといえば、制約があるからだ。
以前も話した通り、甘い菓子はそれだけで高級品だ。比較的裕福な人々が多く菓子の購買層が厚いパレスではあるが、庶民にはまだまだ高嶺の花。いつでもお腹いっぱいに食べられるようなものではない。
だが、この〝パレス菓子博覧会〟では、そんなお菓子を半額で食べられる。しかも店はどれも評判の店ばかり。パレスの庶民にとっては夢のようなお祭りなのだ。
だが来場者たちの多くには予算に限りがあり、食べられる量には限界がある。となれば、彼らは選択しなくてはならないのだ。
“どれから食べたいか”
その〝どれ〟に必ず〝カカオの誘惑〟が入ってくれるよう、この彼らの思いを後押しするための宣伝活動を私たちはやってきた。
「この日に〝カカオの誘惑〟の新作菓子を食べずには帰れない!」
そう思ってもらい、必ず私たちの屋台を、しかもなるべく早い段階で訪れてもらうための宣伝活動だったのだ。満腹になれば購買意欲は下がってしまうし、予算オーバーになってしまっても買っては貰えない。
そして、人の波は一気に〝カカオの誘惑〟の屋台に押し寄せてきた。地図を持った人々は、迷うことなく一直線に〝カカオの誘惑〟へとやってきてくれたのだ。
「さぁ、しっかり行列の誘導をしましょう! みんな始まるよ!」
私は前線に立ちつつ、お客様に巻き込まれない位置で指示を出していく。まずお客様の狙いは、ここ数日で急速に知名度を上げ、噂になっている〝ココア風味の鈴カステラ完成品〟だろう。
今回は、たくさんの数を売るための対策として、袋は20個入りで固定にした。購入できる数もおひとり様五袋までとさせてもらう。こうした制限は、おそらくどこの屋台でもしているだろう。多くの人に手に取ってもらうためには仕方がない。
値段も気前よく、そしてお釣りが出ない1ポルに設定。原価を考えると普通なら大赤字だろうけれど、私の場合はそれは考えなくてもいいし、この値段で売るのはこの期間中だけなので、お店では売るときにはそこそこ利益は出せる。
最初のお客様たちが、早速袋を受け取って笑顔で列を離れ袋を開けている。そして嬉しそうな彼らの顔はその中身を見て驚きに変わっていく。
「え……白い?」
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