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3 魔法学校の聖人候補
505 みんなでひと狩り!
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505
さて、〝狩猟同好会〟主催の初の狩り当日の早朝、私たちは春の獲物の多い場所として、まず新芽や草花など草食動物の餌が豊富な山の斜面に狙いを定めた。
ここには、かなりの数の小型の動物や魔物がいる。これらは食用とされているし毛皮も売れるので、とても経済的な動物だ。繁殖力がとても強く増えすぎると困るため、この時期には特に狩ることを求められる動物たちでもある。
(ウオーミングアップにはちょうどいいよね)
私たちはそうでもないが、同好会には入ったものの冬の狩り合宿でもあまり成果が上がらなかったという10名は、とても緊張した面持ちだ。自分たちの魔法でお金が稼げるほどの狩りができるのか、不安なのだろう。
「この辺りの動物は、魔法を使わずとも十分倒せる大きさのものばかりですから、気楽にいきましょう。
ただ、普通の動物ばかりではないことは心得ておいてください。山ウサギは問題ないですが、この山には1割ほど、トゲウサギとドクツメウサギがいますから、気をつけて。このふたつの種類は倒せない敵ではありませんが、迂闊に近づけばかなり辛い思いをすることになります。私の《索敵》で、危険な獣かどうかは判別できますので、指示をよく聞いてから動いてくださいね」
私はナビゲーター役として後方に位置する。
今回は人数が多いため、危険を回避するためにも私が集中管理したほうが良いと考え《索敵》と《地形探査》でみんなをバックアップに徹することにした。チームをふたつに分け、私の指示のレシーバー役としてセーヤとソーヤに各チームについてもらうことにした。これでふたりを通して、私の指示を瞬時に伝えることが可能だ。
各チームのリーダーには魔法力が強く攻撃力も高いクローナとオーライリ、あとのチーム分けはくじ引きで決めた。
「炎を使う魔法を放つ際には、延焼に気をつけて下さい。煙が上がれば、動物たちにこちらの位置を気取られることにもなりますから、できるだけ静かに素早く、と考え行動していきましょう」
冬の合宿で、クローナ組の狩りの成功を見ている彼らは、とても素直に私たちの注意に耳を傾けその通りに行動してくれた。彼らにしても、ナビゲーターの私が子供だからと侮り反発するような態度をして〝狩りでガッチリ稼ぎたい〟という目的が遠のくほうがよほど困るのだろう。それに、クローナやオーライリの私に対する態度で、私がお飾りではなく本当の参謀であることが、すぐに伝わったこともありがたかった。急ごしらえのチームながらなかなか統率も取れていてやりやすそうだ。
〔じゃ、セーヤとソーヤ、誘導お願いね〕
〔了解です〕
〔お任せ下さいませ〕
〔クローナ組、現在地から左上方に進むと山ウサギ5匹と2分で接触です。さらにその上方11時の方向にトゲウサギ3匹、次、オーライリ組、現在地から直進すると3分で山ウサギ4匹とヨロイネズミ1匹と接触〕
私は指示を出しながら《的指定》で狙いを定め《流風弾》でしびれ薬入りのペイント弾を打ち込んでいく。これで、位置の特定もしやすく捕まえやすくなるだろう。
事前にこのあたりにいる魔物の攻略法に関する情報を全員で共有しておいたことも、行動を正確にしてくれた。すぐに山ウサギは《水弾》や《風切》で仕留められ、外皮の硬いヨロイネズミには苦戦しているようだが、トゲウサギは氷で周囲を固めて捕獲できた様子だ。
(うん、さすがオーライリたちは経験がものをいっているね。臨機応変に対応できてるし、判断も早い)
私は次々と獲物の位置を正確に伝え、みんなは夢中になって狩りを続けた。
2時間も狩りをすると、ウサギは百近く、大きな山ネズミが50近く獲れた。防具系素材として希少価値の高いヨロイネズミも9匹を仕留め、美味しい食材として高値で売れるクリイノシシまで2匹取ることができた。
みんなこの成果に興奮状態で、休憩の間もそわそわと落ち着かなかった。私は少しでも落ち着いてもらおうと、そんなみんなにお茶を出し、その間にトルルが一生懸命休憩の重要性と冷静な判断が下せるよう、興奮してはいけないことを伝えてくれた。
「ほら、ご覧なさい。一番小さなマリスさんは落ち着いているでしょう? こういう風にしていなくちゃダメなのよ!」
私はいきなり振られて、飲んでいたお茶を吹き出しそうになる。
「た、確かにトルルの言う通り、集中力を保つためにも気持ちを落ち着けて休憩することはとても大事です。ここは比較的安全な場所ですが、それでも魔物のいる山の中なのですから、いざという時に動ける躰と考えられる頭で常にいられるようにしないと……ですよね」
私の言葉に頷くオーライリ、クローナ、トルルに、他の子たちも顔を見合わせて頷き合った。どうやら、少しは落ち着いてくれたようだ。
「では、次はもう少し大物を狙います。チームは分けますが、ここからは全員で当たっていきましょう!」
私は常に後方から指示を出し、今度は大物に絞った《索敵》で、大鹿やこの辺りの固有種セルツベアなどを見つけて仕留めた。その後もこれまた美味と評判のホワイトボアの集団を、位置情報を利用してうまく分断してから、クローナとオーライリの魔法攻撃を中心に全員一丸となって仕留めていき、8頭を仕留めた。
「ひゃー! これものすごく高級なんだぜ。いったいいくらになるんだよ!」
「すごく美味しいんだよね。ちょっとだけ食べてみたいなぁ」
泥だらけ汗だくの躰に《清浄》の魔法をかけながら、みんな疲れているはずなのにものすごくテンションが高い。
(……だから、落ち着いてって……)
トルル、オーライリ、クローナの三人が、私の方を見て首を振っている。
「冬の合宿でぜーんぜん成果がなかった子たちに、いきなりこれだけの狩りをさせちゃったんだもの。興奮するなって言っても、無理だと思う。マリスさん、飛ばしすぎだよ」
「へ? ワタシ?」
トルルの言葉にウンウンとうなづくクローナとオーライリ。
「マリスさんの《索敵》は、超一級品なんですよ。広範囲の視野に正確無比な針穴を通すような指示、しかも獲物の種類まで近づくかなり手前で知ることができます。その上、獲物にはしっかりしびれ薬まで効いてる。私たちはマリスさんが指示した場所に移動しさえすればいい。敵がそう手強くないということもありますが、この成果はほぼマリスさんの誘導とペイント弾の正確性によるものだと思いますよ」
「……ええ、ええと……」
どうやら私の《索敵》は普通の《索敵》とは違うらしい。《鑑定》《地形把握》そして《完全脳内地図把握》が融合しているようだ。
「あの子たちにも、普通はこんなに簡単じゃないことを教えないといけないですねぇ」
大量の獲物を前に浮かれて騒ぐメンバーの方を見ながらそう言うオーライリに、私は首をすくめ
「……やり過ぎました。これからは、自重します」
と、小さな声で言った。
さて、〝狩猟同好会〟主催の初の狩り当日の早朝、私たちは春の獲物の多い場所として、まず新芽や草花など草食動物の餌が豊富な山の斜面に狙いを定めた。
ここには、かなりの数の小型の動物や魔物がいる。これらは食用とされているし毛皮も売れるので、とても経済的な動物だ。繁殖力がとても強く増えすぎると困るため、この時期には特に狩ることを求められる動物たちでもある。
(ウオーミングアップにはちょうどいいよね)
私たちはそうでもないが、同好会には入ったものの冬の狩り合宿でもあまり成果が上がらなかったという10名は、とても緊張した面持ちだ。自分たちの魔法でお金が稼げるほどの狩りができるのか、不安なのだろう。
「この辺りの動物は、魔法を使わずとも十分倒せる大きさのものばかりですから、気楽にいきましょう。
ただ、普通の動物ばかりではないことは心得ておいてください。山ウサギは問題ないですが、この山には1割ほど、トゲウサギとドクツメウサギがいますから、気をつけて。このふたつの種類は倒せない敵ではありませんが、迂闊に近づけばかなり辛い思いをすることになります。私の《索敵》で、危険な獣かどうかは判別できますので、指示をよく聞いてから動いてくださいね」
私はナビゲーター役として後方に位置する。
今回は人数が多いため、危険を回避するためにも私が集中管理したほうが良いと考え《索敵》と《地形探査》でみんなをバックアップに徹することにした。チームをふたつに分け、私の指示のレシーバー役としてセーヤとソーヤに各チームについてもらうことにした。これでふたりを通して、私の指示を瞬時に伝えることが可能だ。
各チームのリーダーには魔法力が強く攻撃力も高いクローナとオーライリ、あとのチーム分けはくじ引きで決めた。
「炎を使う魔法を放つ際には、延焼に気をつけて下さい。煙が上がれば、動物たちにこちらの位置を気取られることにもなりますから、できるだけ静かに素早く、と考え行動していきましょう」
冬の合宿で、クローナ組の狩りの成功を見ている彼らは、とても素直に私たちの注意に耳を傾けその通りに行動してくれた。彼らにしても、ナビゲーターの私が子供だからと侮り反発するような態度をして〝狩りでガッチリ稼ぎたい〟という目的が遠のくほうがよほど困るのだろう。それに、クローナやオーライリの私に対する態度で、私がお飾りではなく本当の参謀であることが、すぐに伝わったこともありがたかった。急ごしらえのチームながらなかなか統率も取れていてやりやすそうだ。
〔じゃ、セーヤとソーヤ、誘導お願いね〕
〔了解です〕
〔お任せ下さいませ〕
〔クローナ組、現在地から左上方に進むと山ウサギ5匹と2分で接触です。さらにその上方11時の方向にトゲウサギ3匹、次、オーライリ組、現在地から直進すると3分で山ウサギ4匹とヨロイネズミ1匹と接触〕
私は指示を出しながら《的指定》で狙いを定め《流風弾》でしびれ薬入りのペイント弾を打ち込んでいく。これで、位置の特定もしやすく捕まえやすくなるだろう。
事前にこのあたりにいる魔物の攻略法に関する情報を全員で共有しておいたことも、行動を正確にしてくれた。すぐに山ウサギは《水弾》や《風切》で仕留められ、外皮の硬いヨロイネズミには苦戦しているようだが、トゲウサギは氷で周囲を固めて捕獲できた様子だ。
(うん、さすがオーライリたちは経験がものをいっているね。臨機応変に対応できてるし、判断も早い)
私は次々と獲物の位置を正確に伝え、みんなは夢中になって狩りを続けた。
2時間も狩りをすると、ウサギは百近く、大きな山ネズミが50近く獲れた。防具系素材として希少価値の高いヨロイネズミも9匹を仕留め、美味しい食材として高値で売れるクリイノシシまで2匹取ることができた。
みんなこの成果に興奮状態で、休憩の間もそわそわと落ち着かなかった。私は少しでも落ち着いてもらおうと、そんなみんなにお茶を出し、その間にトルルが一生懸命休憩の重要性と冷静な判断が下せるよう、興奮してはいけないことを伝えてくれた。
「ほら、ご覧なさい。一番小さなマリスさんは落ち着いているでしょう? こういう風にしていなくちゃダメなのよ!」
私はいきなり振られて、飲んでいたお茶を吹き出しそうになる。
「た、確かにトルルの言う通り、集中力を保つためにも気持ちを落ち着けて休憩することはとても大事です。ここは比較的安全な場所ですが、それでも魔物のいる山の中なのですから、いざという時に動ける躰と考えられる頭で常にいられるようにしないと……ですよね」
私の言葉に頷くオーライリ、クローナ、トルルに、他の子たちも顔を見合わせて頷き合った。どうやら、少しは落ち着いてくれたようだ。
「では、次はもう少し大物を狙います。チームは分けますが、ここからは全員で当たっていきましょう!」
私は常に後方から指示を出し、今度は大物に絞った《索敵》で、大鹿やこの辺りの固有種セルツベアなどを見つけて仕留めた。その後もこれまた美味と評判のホワイトボアの集団を、位置情報を利用してうまく分断してから、クローナとオーライリの魔法攻撃を中心に全員一丸となって仕留めていき、8頭を仕留めた。
「ひゃー! これものすごく高級なんだぜ。いったいいくらになるんだよ!」
「すごく美味しいんだよね。ちょっとだけ食べてみたいなぁ」
泥だらけ汗だくの躰に《清浄》の魔法をかけながら、みんな疲れているはずなのにものすごくテンションが高い。
(……だから、落ち着いてって……)
トルル、オーライリ、クローナの三人が、私の方を見て首を振っている。
「冬の合宿でぜーんぜん成果がなかった子たちに、いきなりこれだけの狩りをさせちゃったんだもの。興奮するなって言っても、無理だと思う。マリスさん、飛ばしすぎだよ」
「へ? ワタシ?」
トルルの言葉にウンウンとうなづくクローナとオーライリ。
「マリスさんの《索敵》は、超一級品なんですよ。広範囲の視野に正確無比な針穴を通すような指示、しかも獲物の種類まで近づくかなり手前で知ることができます。その上、獲物にはしっかりしびれ薬まで効いてる。私たちはマリスさんが指示した場所に移動しさえすればいい。敵がそう手強くないということもありますが、この成果はほぼマリスさんの誘導とペイント弾の正確性によるものだと思いますよ」
「……ええ、ええと……」
どうやら私の《索敵》は普通の《索敵》とは違うらしい。《鑑定》《地形把握》そして《完全脳内地図把握》が融合しているようだ。
「あの子たちにも、普通はこんなに簡単じゃないことを教えないといけないですねぇ」
大量の獲物を前に浮かれて騒ぐメンバーの方を見ながらそう言うオーライリに、私は首をすくめ
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と、小さな声で言った。
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