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3 魔法学校の聖人候補
430 みんなのお持ち寄り
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430
最近の学校内の売店は、以前より軽食が美味しくなり充実してきていると評判だ。
以前は、数種類のパン(具材なし)や果物数種類、3種のジャムといった感じで、空腹だけは満たされる、といった内容だったが、今は、具材豊富なサンドウィッチに、色々なおかずが少しづつ入ったお弁当風のボックス。フルーツもそのままではなく、食べやすい大きさに切り、いくつか組み合わせてガラスの容器で売っている。もちろんガラスの容器は返却することで次回からは中身の料金だけで買える仕組みだ。
(全部、私が考えたやつだね)
相変わらず月例の学食向上委員会に出席している私は、結局売店で販売している食べ物のついての意見も求められることになり、コミットすることになってしまった。
今では、売り上げ倍増になった売店担当者から、委員会のたびに期待に満ちた目で意見を求められている。最近では私が売店の近くを通ると向こうから寄ってきて挨拶されるし、ちょっとしたものを買おうとするとお金を受け取ってくれないしで、感謝してくれるのは嬉しいが、ちょっとめんどくさい。
次にオーライリが紹介してきた持ち寄り品は、大判のしっとりクッキーだった。
「父がイスの名店〝大地の恵み〟亭に行ったお土産に買って送ってくれたものです。こちらのお料理は本当に素晴らしいのですけれど、デザートがまた素晴らしいんです。双子の天才料理人が作る甘味は、イスの女性の憧れの美味と言われているんですよ」
(ああ、これ商品化できたんだ。やるねぇ、マルコとロッコ)
これも私がかんでいる商品だ。〝大地の恵み〟亭は、相変わらずの大人気で予約が取りづらいことで有名な店だ。そこで、ご来店になったお客様から思い出話とともに、なにか持ち帰りたいという要望があったため、お土産菓子を考えることになった。
相談を受けた私はしっとりとしたクッキーの作り方を、マルコとロッコに教えてみたのだ。この製法は日本独特の工夫らしいのだが、生地に豆を潰した餡を混ぜることで、しっとりとした食感を出している。それに、ナッツやドライフルーツなどを混ぜ込み、ちゃんと製品化できたようだ。
マルコとロッコは、できあがったら味見をしてほしいと言っていたが、私は多忙だし、ふたりを信用しているから自分たちの判断で店に出していいと話してあったので、私も見るのは初めてだった。
「オーライリ、これ美味しいね。本当だ、カリッとしているのかと思ったら食べるとしっとりしてる。不思議な食感だね。ねえ、美味しいよね、マリスさん!」
「ええ、本当によくできています。きっと、料理人の方が努力されたんでしょうね」
私の感想にオーライリも満足げだ。オーライリは私が〝大地の恵み〟亭と関わりがあることは知っているが、今は魔法学校にずっといる私は、最近出た新商品についてまでは知らないだろうと思って持ってきてくれたのだろう。
「私の持ってきたお菓子はこれですの。なかなか手の入らないのですけれど、今回は無理を言って取り寄せました」
自信満々のクローナが見せてくれたのは、パレスにあるチョコレート専門店〝カカオの誘惑〟のチョコレートだった。
「この店は、皇妃であられるリアーナ様が名前をお付けになったという名店で、味も格別なんですの。
値段も高いですが、それ以上に販売数が少なくて、予約してもすぐには手の入らないのです。今回は、父が褒賞を受けた時に頂いたものを、一部譲ってもらったのですよ」
(ああ、だから箱に入っていなくて、皿に盛りつけられていたのね)
みんな、最初は茶色の塊に恐る恐るだったが、口に入れた瞬間目を見開いた。
「これ、溶ける。溶けるわ。不思議な味ね。甘くて苦くて美味しい!」
「噂では聞いていましたが、まだイスではチョコレートはほとんど食べられません。先ほどの〝大地の恵み〟亭のデザートで少し食べられるそうですけど。そう、こんな味だったのですね」
オーライリは、イスの食文化に自信を持っているので、少し残念そうだ。そして、ちょっと恨みがましい目で私を見る。
(え、そんな目で見ないでよ。まだ、イスにまで店を作れるほどカカオが採れないんだから、仕方ないんだってば!)
「きっと、そのうちイスにもチョコレートは普及していきますよ」
私が諭すような口調で言うと、オーライリはハッとして顔を赤らめた。
「そ、そうですね。その日を待っていればいいですよね。きっと、次はイスにお店ができますよね」
生粋のイスっ子のオーライリらしくて笑ってしまう。確かに、イスを食文化で花開かせようと提案したのは私だし、その洗礼をモロに浴びて育ったオーライリのプライドを育てたのも私だ。パレスにぜひ二号店をという根強いオファーはあるが、やはり次はイスに作ることにしよう。
なんだか、このところの私のお仕事の発表会のようになってしまったが、それだけ色々な場所で受け入れられ、美味しく食べられていることが解ってうれしかった。
和気藹々としたお茶会が終われば、次はいよいよ〝魔法競技会〟本戦。
(みんなとの楽しい学生生活を守るためにも、頑張らなくっちゃね。あれ、頑張っちゃだめか……)
最近の学校内の売店は、以前より軽食が美味しくなり充実してきていると評判だ。
以前は、数種類のパン(具材なし)や果物数種類、3種のジャムといった感じで、空腹だけは満たされる、といった内容だったが、今は、具材豊富なサンドウィッチに、色々なおかずが少しづつ入ったお弁当風のボックス。フルーツもそのままではなく、食べやすい大きさに切り、いくつか組み合わせてガラスの容器で売っている。もちろんガラスの容器は返却することで次回からは中身の料金だけで買える仕組みだ。
(全部、私が考えたやつだね)
相変わらず月例の学食向上委員会に出席している私は、結局売店で販売している食べ物のついての意見も求められることになり、コミットすることになってしまった。
今では、売り上げ倍増になった売店担当者から、委員会のたびに期待に満ちた目で意見を求められている。最近では私が売店の近くを通ると向こうから寄ってきて挨拶されるし、ちょっとしたものを買おうとするとお金を受け取ってくれないしで、感謝してくれるのは嬉しいが、ちょっとめんどくさい。
次にオーライリが紹介してきた持ち寄り品は、大判のしっとりクッキーだった。
「父がイスの名店〝大地の恵み〟亭に行ったお土産に買って送ってくれたものです。こちらのお料理は本当に素晴らしいのですけれど、デザートがまた素晴らしいんです。双子の天才料理人が作る甘味は、イスの女性の憧れの美味と言われているんですよ」
(ああ、これ商品化できたんだ。やるねぇ、マルコとロッコ)
これも私がかんでいる商品だ。〝大地の恵み〟亭は、相変わらずの大人気で予約が取りづらいことで有名な店だ。そこで、ご来店になったお客様から思い出話とともに、なにか持ち帰りたいという要望があったため、お土産菓子を考えることになった。
相談を受けた私はしっとりとしたクッキーの作り方を、マルコとロッコに教えてみたのだ。この製法は日本独特の工夫らしいのだが、生地に豆を潰した餡を混ぜることで、しっとりとした食感を出している。それに、ナッツやドライフルーツなどを混ぜ込み、ちゃんと製品化できたようだ。
マルコとロッコは、できあがったら味見をしてほしいと言っていたが、私は多忙だし、ふたりを信用しているから自分たちの判断で店に出していいと話してあったので、私も見るのは初めてだった。
「オーライリ、これ美味しいね。本当だ、カリッとしているのかと思ったら食べるとしっとりしてる。不思議な食感だね。ねえ、美味しいよね、マリスさん!」
「ええ、本当によくできています。きっと、料理人の方が努力されたんでしょうね」
私の感想にオーライリも満足げだ。オーライリは私が〝大地の恵み〟亭と関わりがあることは知っているが、今は魔法学校にずっといる私は、最近出た新商品についてまでは知らないだろうと思って持ってきてくれたのだろう。
「私の持ってきたお菓子はこれですの。なかなか手の入らないのですけれど、今回は無理を言って取り寄せました」
自信満々のクローナが見せてくれたのは、パレスにあるチョコレート専門店〝カカオの誘惑〟のチョコレートだった。
「この店は、皇妃であられるリアーナ様が名前をお付けになったという名店で、味も格別なんですの。
値段も高いですが、それ以上に販売数が少なくて、予約してもすぐには手の入らないのです。今回は、父が褒賞を受けた時に頂いたものを、一部譲ってもらったのですよ」
(ああ、だから箱に入っていなくて、皿に盛りつけられていたのね)
みんな、最初は茶色の塊に恐る恐るだったが、口に入れた瞬間目を見開いた。
「これ、溶ける。溶けるわ。不思議な味ね。甘くて苦くて美味しい!」
「噂では聞いていましたが、まだイスではチョコレートはほとんど食べられません。先ほどの〝大地の恵み〟亭のデザートで少し食べられるそうですけど。そう、こんな味だったのですね」
オーライリは、イスの食文化に自信を持っているので、少し残念そうだ。そして、ちょっと恨みがましい目で私を見る。
(え、そんな目で見ないでよ。まだ、イスにまで店を作れるほどカカオが採れないんだから、仕方ないんだってば!)
「きっと、そのうちイスにもチョコレートは普及していきますよ」
私が諭すような口調で言うと、オーライリはハッとして顔を赤らめた。
「そ、そうですね。その日を待っていればいいですよね。きっと、次はイスにお店ができますよね」
生粋のイスっ子のオーライリらしくて笑ってしまう。確かに、イスを食文化で花開かせようと提案したのは私だし、その洗礼をモロに浴びて育ったオーライリのプライドを育てたのも私だ。パレスにぜひ二号店をという根強いオファーはあるが、やはり次はイスに作ることにしよう。
なんだか、このところの私のお仕事の発表会のようになってしまったが、それだけ色々な場所で受け入れられ、美味しく食べられていることが解ってうれしかった。
和気藹々としたお茶会が終われば、次はいよいよ〝魔法競技会〟本戦。
(みんなとの楽しい学生生活を守るためにも、頑張らなくっちゃね。あれ、頑張っちゃだめか……)
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