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3 魔法学校の聖人候補
363 〝汚城〟再び
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363
「はーかーせー! またモノがごっそり増えてるじゃないですか!」
しばらくぶりにやってきたグッケンス博士の研究棟は、またどこから持ってきたのかも判らないモノや資料で溢れていた。
以前掃除した時、あれほど言ったのに、研究のことしか見えない上に超多忙な博士は、出しっ放し読みっぱなし食べっぱなし生活を改められていない。
「お忙しいことは分かっていますけど、この状態で、ご不自由じゃないんですか?」
「慣れだな……」
真顔でそう言う博士に呆れた私は、早速ソーヤと再度掃除開始。
世話係兼内弟子の記念すべき初仕事だ。
(うーん、やっぱりメイドだなぁ、これ)
今度は、世話係試験の時とは違い時間をかけて、綺麗に整理整頓する方にお重きを置いた掃除を開始する。
丸ごと一棟のお城のように立派なグッケンス博士の住宅兼研究棟。だが、すでに半分ほどがよく分からない謎道具と謎資料で埋まっているので、生活に使える面積はそれほど広くない。日本風に言えば3LDKと言ったところだ。
その生活空間も、この調子でどんどん侵食されてしまうので、定期的な掃除が必須だ。ソーヤに時々頼んではいたが、下手にモノを動かすことは、基本主人の指示の下に動こうとする妖精さんには難しいようで、埃を払い部屋を綺麗にすることはできても、雑多に置かれた未整理のモノには対応できずにいたようだ。
(これからは私も一応〝住む〟訳だし、埋まっている部屋も含めて、ちょっと徹底的な掃除とリフォームが必要かもね)
私は《鑑定》を行いつつ簡易的に分類しながらソーヤにどんどん指示を出し、それをソーヤが高速収納というやり方で、一気に掃除を進めた。更に片付けたものは位置情報と共にリスト化して博士に渡す。これで、見つけられないと言うことはないはずだ。
数時間の格闘を経てあらかた片付いた部屋を見て私は頷く。非常に達成感のある仕事ではあった。
お客様が通せる程度には現状回復できたので、今日はここまでとしよう。
綺麗な花も飾られ、クロスもピシッと掛けられたテーブルでほっと一息つきながら、博士の蔵書の管理や資料のきちんとした分類をどうしようかと考えていた時、来客があった。
「あ、モートさん。お久しぶりです」
やってきたのは魔法学校の事務局にいるチェット・モートさん。
私の学校見学にもお付き合い頂いた方だ。
「ああ、本当にメイロードさんじゃないですか!びっくりしましたよ、凄腕のメイドがグッケンス博士のところにやってきたって、事務局でも話題になってましてね」
あの試験の結果、思った通り、私は世話係どころかメイドポジションで〝凄腕〟と認識されているようだ。その方が目立たず好都合なので、特に訂正するつもりもない。
「掃除をして〝内弟子〟になった人は初めてですよ。見てみたかったなぁ、その掃除魔法」
モートさん、なんだか楽しげだ。
「あの、グッケンス博士はお出かけになっていますが、ご伝言を承りましょうか?」
私の言葉に、モートさんちょっと言いにくそうに笑う。
「いや、用があるのはあなたなんですよ。ちょっとご相談がありまして……」
なんだか、私に頼みたいことがあるらしい。
「では、とにかくお話をお聞きしましょうか。どうぞこちらへ」
私は
(片付いていてよかった)
と思いながら、お客様用のソファーに案内し、ソーヤにお茶とお菓子を頼んだ。
ミントをベースにした爽やかなハーブティーと来客用に用意しておいたお菓子を出す。チョコレートとバタークッキーを市松模様に焼き上げたチェッカークッキーと中央にジャムを仕込んで2度焼きしたロシアケーキ。食べ応えのあるドッシリしっとりのこのクッキーとケーキの中間といった感じの菓子は、色々なアレンジで季節ごとに楽しめるので、私のお気に入り。
ソーヤが色々な味を食べたがるので、一時期ジャムやナッツを入れたロシアケーキをかなりの数試作した。だから、このレパートリーだけで実は20種類以上あり、我が家の定番菓子になっているのだ。
でも、半分以上が栽培されているわけではない野生種の果物をベースにしているので、大量生産は難しく、まだ商品化のめどは立っていない。
(お茶によく合うんだけどね)
「これもメイロードさんが作ったのですか?美味しいものですね」
モートさんは、以前と同様遠慮なくがっちり食べて、楽しんでくれた。私もその方が嬉しいので、楽しく雑談をしながら追加に沿海州で作った〝ニギ餅〟と沿海州の昆布茶をお代わりとして出し、沿海州の素材で作ったこの和菓子についてちょっと説明した。
すると、モートさんはスッと真顔になり、こう切り出した。
「やはりメイロードさんにご相談するのが正しかったようです。その食に対する広い知識と技術は以前に見せて頂いた時以上になられている。是非、私たちのために協力して頂けないでしょうか。このままでは、生徒たちがしっかり勉強できず、さらなる退学者が大量に出そうな危機的状況なのです。
どうか、どうか、お助けください!」
ガバッと勢いよく頭を下げるモートさんに、私とソーヤは顔を見合わせて
(早速かーい!)
と、入学初日からやってきた大変そうな相談事に、心の中でツッコミを入れていた。
「はーかーせー! またモノがごっそり増えてるじゃないですか!」
しばらくぶりにやってきたグッケンス博士の研究棟は、またどこから持ってきたのかも判らないモノや資料で溢れていた。
以前掃除した時、あれほど言ったのに、研究のことしか見えない上に超多忙な博士は、出しっ放し読みっぱなし食べっぱなし生活を改められていない。
「お忙しいことは分かっていますけど、この状態で、ご不自由じゃないんですか?」
「慣れだな……」
真顔でそう言う博士に呆れた私は、早速ソーヤと再度掃除開始。
世話係兼内弟子の記念すべき初仕事だ。
(うーん、やっぱりメイドだなぁ、これ)
今度は、世話係試験の時とは違い時間をかけて、綺麗に整理整頓する方にお重きを置いた掃除を開始する。
丸ごと一棟のお城のように立派なグッケンス博士の住宅兼研究棟。だが、すでに半分ほどがよく分からない謎道具と謎資料で埋まっているので、生活に使える面積はそれほど広くない。日本風に言えば3LDKと言ったところだ。
その生活空間も、この調子でどんどん侵食されてしまうので、定期的な掃除が必須だ。ソーヤに時々頼んではいたが、下手にモノを動かすことは、基本主人の指示の下に動こうとする妖精さんには難しいようで、埃を払い部屋を綺麗にすることはできても、雑多に置かれた未整理のモノには対応できずにいたようだ。
(これからは私も一応〝住む〟訳だし、埋まっている部屋も含めて、ちょっと徹底的な掃除とリフォームが必要かもね)
私は《鑑定》を行いつつ簡易的に分類しながらソーヤにどんどん指示を出し、それをソーヤが高速収納というやり方で、一気に掃除を進めた。更に片付けたものは位置情報と共にリスト化して博士に渡す。これで、見つけられないと言うことはないはずだ。
数時間の格闘を経てあらかた片付いた部屋を見て私は頷く。非常に達成感のある仕事ではあった。
お客様が通せる程度には現状回復できたので、今日はここまでとしよう。
綺麗な花も飾られ、クロスもピシッと掛けられたテーブルでほっと一息つきながら、博士の蔵書の管理や資料のきちんとした分類をどうしようかと考えていた時、来客があった。
「あ、モートさん。お久しぶりです」
やってきたのは魔法学校の事務局にいるチェット・モートさん。
私の学校見学にもお付き合い頂いた方だ。
「ああ、本当にメイロードさんじゃないですか!びっくりしましたよ、凄腕のメイドがグッケンス博士のところにやってきたって、事務局でも話題になってましてね」
あの試験の結果、思った通り、私は世話係どころかメイドポジションで〝凄腕〟と認識されているようだ。その方が目立たず好都合なので、特に訂正するつもりもない。
「掃除をして〝内弟子〟になった人は初めてですよ。見てみたかったなぁ、その掃除魔法」
モートさん、なんだか楽しげだ。
「あの、グッケンス博士はお出かけになっていますが、ご伝言を承りましょうか?」
私の言葉に、モートさんちょっと言いにくそうに笑う。
「いや、用があるのはあなたなんですよ。ちょっとご相談がありまして……」
なんだか、私に頼みたいことがあるらしい。
「では、とにかくお話をお聞きしましょうか。どうぞこちらへ」
私は
(片付いていてよかった)
と思いながら、お客様用のソファーに案内し、ソーヤにお茶とお菓子を頼んだ。
ミントをベースにした爽やかなハーブティーと来客用に用意しておいたお菓子を出す。チョコレートとバタークッキーを市松模様に焼き上げたチェッカークッキーと中央にジャムを仕込んで2度焼きしたロシアケーキ。食べ応えのあるドッシリしっとりのこのクッキーとケーキの中間といった感じの菓子は、色々なアレンジで季節ごとに楽しめるので、私のお気に入り。
ソーヤが色々な味を食べたがるので、一時期ジャムやナッツを入れたロシアケーキをかなりの数試作した。だから、このレパートリーだけで実は20種類以上あり、我が家の定番菓子になっているのだ。
でも、半分以上が栽培されているわけではない野生種の果物をベースにしているので、大量生産は難しく、まだ商品化のめどは立っていない。
(お茶によく合うんだけどね)
「これもメイロードさんが作ったのですか?美味しいものですね」
モートさんは、以前と同様遠慮なくがっちり食べて、楽しんでくれた。私もその方が嬉しいので、楽しく雑談をしながら追加に沿海州で作った〝ニギ餅〟と沿海州の昆布茶をお代わりとして出し、沿海州の素材で作ったこの和菓子についてちょっと説明した。
すると、モートさんはスッと真顔になり、こう切り出した。
「やはりメイロードさんにご相談するのが正しかったようです。その食に対する広い知識と技術は以前に見せて頂いた時以上になられている。是非、私たちのために協力して頂けないでしょうか。このままでは、生徒たちがしっかり勉強できず、さらなる退学者が大量に出そうな危機的状況なのです。
どうか、どうか、お助けください!」
ガバッと勢いよく頭を下げるモートさんに、私とソーヤは顔を見合わせて
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と、入学初日からやってきた大変そうな相談事に、心の中でツッコミを入れていた。
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