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2 海の国の聖人候補
359 料理人の鉄槌
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359
今、パレスに借りたチョコレート菓子作りのための専用工房で、マルコとロッコにはイスとパレスのおじさまのレストランから選抜した職人たちへのチョコレート菓子製造の指導をしてもらっている。大事な未来のショコラティエ達を守るためにも、この工房の周囲には結界を貼り、作業場は地下に配置、香りでチョコレート工房だと悟られるようなことはしていない。
それでも、今やイスの人気者パティシエ兄弟〝マルコとロッコ〟が揃ってパレスに来ていることは、隠しきれなかったようだ。タガローサが、いったいどこでその情報を得たのかは不明だが、恐らくイスの店やパレスの店を間者に見張らせていたのだろう。そしてこの2人なら今回のチョコレートについて知っているに違いない、とタガローサ側に当たりをつけさせてしまったのは、私のミスだった。
前回の蛇男ことセカー・バーバルによるマルコの拉致事件は、バーバルの遁走によりタガローサには伝わっていないはずだ。
(なのに、またあの兄弟が狙われちゃうとは……)
焦る気持ちのまま、私はチョコレート工房内に隠して設置しておいた《無限回廊の扉》を出た。
〔セーヤ、マルコとロッコは、今どこ!〕
〔2人は講習を受けている人たちのために昼ごはんを調達しようとしたようで、材料を買いに出ました。まだ、工房からそう離れていません。
……やはり、出てくるのを待っていた者達が、2人の後をつけてきているようですよ〕
私は《索敵》を継続し2人の場所と状況を確認しつつ、《迷彩魔法》で隠れながら全速力で移動を開始。
脳内の表示には、確かにマルコとロッコを追いかける4つの影があった。
(懲りないなぁ……)
なんとかマルコたちに怪我のないうちに追いつけた私は、少し安心した後、息を整え、魔法で男たちを制すか、2人を守るか……と一瞬考えた。だがそれは、作ってはいけない一瞬だった。
その時、私の行動より一足早く男達が臨戦態勢に入り、2人に襲いかかったのだ。
(ああ、危ない!)
私が出遅れたことを後悔した次の瞬間、私が見たのは想像もしていなかった光景だった。
マルコはこの突然の襲撃者に全く動じることなく、素早く背負っていた長めの麺棒を手に持ち、男のうちの1人の喉元へ突きつけ敵の動きを止めていた。
ロッコはロッコで、いつの間にか腰に巻いていた布と鎖を手にグルグルと巻きつけ補強し、襲いかかってきたもう1人の男に素早い動きで蹴りを入れた後、ボディに重い音のパンチを入れていた。男が崩れ落ち、動けないのを確認すると、すぐに次の男へと向かうロッコ。
マルコは麺棒で相手を牽制しつつ、相手の小手を鋭く叩き、武器を落とし激痛によろめく男の側頭部を一撃。この男も、ズルズルと崩れ落ちている。
私は、2人の素晴らしい戦い振りに、魔法を使うのも忘れて、見入ってしまった。
すると、残った男のうちの1人がしびれ薬か何かを2人に向かって投げようとした。そこで、投げる直前に《風魔法》でその男の撒いた薬が、襲ってきた2人にかかるよう軌道修正。
「うわあ!!」
と叫んで襲撃者は逃げようとしたが、自分の撒いた薬にやられて動けなくなりあえなくダウン。
襲撃者はこの4名だけだと《索敵》で確認した後、私は《迷彩魔法》を解き、2人に駆け寄る。その間にソーヤは、手慣れた様子で倒れている男たちをあっという間に縛り上げて転がしていた。
「2人とも、怪我はない?大丈夫?」
突然現れた私に、2人はちょっと驚きながらも汗を拭い、いい笑顔で大丈夫だと答えてくれた。
「また、メイロードさまに助けて頂いたようですね。まだまだだなぁ、俺たちも……」
2人は頭を掻きながら苦笑いをしている。
なんでも、あの事件の後、自分たちの不甲斐なさに思うところがあったという2人は、サイデムおじさまに頼んでイスの警備隊を紹介してもらい、彼らの訓練に参加しながら護身術を学んできたのだという。
「他の料理人も時々参加してます。
こんな連中にいちいち捕まってられないですからね」
2人がやけに筋肉質になっているとは感じていたが、そんなことをしていたとは思いもよらなかった。でも、彼らの鍛錬は無駄じゃない。受けた訓練は、きちんと彼らを守る盾になっていた。
「忙しいでしょうに、頑張ったのね。あなたたちは私の誇りだわ!」
「いやいや、結局、メイロードさまがいなかったら、またやられてましたよ。申し訳ありません」
2人は残念そうだが、私は感動していた。私は、とてもいい従業員を持っている。
そして、同時にタガローサに対する怒りが、ふつふつと湧いてくるのを感じた。
(一度ならず二度までも、私の大事な料理人を襲うとは、許せない!!タガローサのバカ!)
今、パレスに借りたチョコレート菓子作りのための専用工房で、マルコとロッコにはイスとパレスのおじさまのレストランから選抜した職人たちへのチョコレート菓子製造の指導をしてもらっている。大事な未来のショコラティエ達を守るためにも、この工房の周囲には結界を貼り、作業場は地下に配置、香りでチョコレート工房だと悟られるようなことはしていない。
それでも、今やイスの人気者パティシエ兄弟〝マルコとロッコ〟が揃ってパレスに来ていることは、隠しきれなかったようだ。タガローサが、いったいどこでその情報を得たのかは不明だが、恐らくイスの店やパレスの店を間者に見張らせていたのだろう。そしてこの2人なら今回のチョコレートについて知っているに違いない、とタガローサ側に当たりをつけさせてしまったのは、私のミスだった。
前回の蛇男ことセカー・バーバルによるマルコの拉致事件は、バーバルの遁走によりタガローサには伝わっていないはずだ。
(なのに、またあの兄弟が狙われちゃうとは……)
焦る気持ちのまま、私はチョコレート工房内に隠して設置しておいた《無限回廊の扉》を出た。
〔セーヤ、マルコとロッコは、今どこ!〕
〔2人は講習を受けている人たちのために昼ごはんを調達しようとしたようで、材料を買いに出ました。まだ、工房からそう離れていません。
……やはり、出てくるのを待っていた者達が、2人の後をつけてきているようですよ〕
私は《索敵》を継続し2人の場所と状況を確認しつつ、《迷彩魔法》で隠れながら全速力で移動を開始。
脳内の表示には、確かにマルコとロッコを追いかける4つの影があった。
(懲りないなぁ……)
なんとかマルコたちに怪我のないうちに追いつけた私は、少し安心した後、息を整え、魔法で男たちを制すか、2人を守るか……と一瞬考えた。だがそれは、作ってはいけない一瞬だった。
その時、私の行動より一足早く男達が臨戦態勢に入り、2人に襲いかかったのだ。
(ああ、危ない!)
私が出遅れたことを後悔した次の瞬間、私が見たのは想像もしていなかった光景だった。
マルコはこの突然の襲撃者に全く動じることなく、素早く背負っていた長めの麺棒を手に持ち、男のうちの1人の喉元へ突きつけ敵の動きを止めていた。
ロッコはロッコで、いつの間にか腰に巻いていた布と鎖を手にグルグルと巻きつけ補強し、襲いかかってきたもう1人の男に素早い動きで蹴りを入れた後、ボディに重い音のパンチを入れていた。男が崩れ落ち、動けないのを確認すると、すぐに次の男へと向かうロッコ。
マルコは麺棒で相手を牽制しつつ、相手の小手を鋭く叩き、武器を落とし激痛によろめく男の側頭部を一撃。この男も、ズルズルと崩れ落ちている。
私は、2人の素晴らしい戦い振りに、魔法を使うのも忘れて、見入ってしまった。
すると、残った男のうちの1人がしびれ薬か何かを2人に向かって投げようとした。そこで、投げる直前に《風魔法》でその男の撒いた薬が、襲ってきた2人にかかるよう軌道修正。
「うわあ!!」
と叫んで襲撃者は逃げようとしたが、自分の撒いた薬にやられて動けなくなりあえなくダウン。
襲撃者はこの4名だけだと《索敵》で確認した後、私は《迷彩魔法》を解き、2人に駆け寄る。その間にソーヤは、手慣れた様子で倒れている男たちをあっという間に縛り上げて転がしていた。
「2人とも、怪我はない?大丈夫?」
突然現れた私に、2人はちょっと驚きながらも汗を拭い、いい笑顔で大丈夫だと答えてくれた。
「また、メイロードさまに助けて頂いたようですね。まだまだだなぁ、俺たちも……」
2人は頭を掻きながら苦笑いをしている。
なんでも、あの事件の後、自分たちの不甲斐なさに思うところがあったという2人は、サイデムおじさまに頼んでイスの警備隊を紹介してもらい、彼らの訓練に参加しながら護身術を学んできたのだという。
「他の料理人も時々参加してます。
こんな連中にいちいち捕まってられないですからね」
2人がやけに筋肉質になっているとは感じていたが、そんなことをしていたとは思いもよらなかった。でも、彼らの鍛錬は無駄じゃない。受けた訓練は、きちんと彼らを守る盾になっていた。
「忙しいでしょうに、頑張ったのね。あなたたちは私の誇りだわ!」
「いやいや、結局、メイロードさまがいなかったら、またやられてましたよ。申し訳ありません」
2人は残念そうだが、私は感動していた。私は、とてもいい従業員を持っている。
そして、同時にタガローサに対する怒りが、ふつふつと湧いてくるのを感じた。
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