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2 海の国の聖人候補

347 招待状

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347

とりあえず、ギルドの皆さんに落ち着いてもらい、この話はギルド内に留めてくれるよう改めてお願いしてから、話を再開。

他の報奨金についても、別に放棄してしまってよかったのだが、それだと

〝じゃあ、何しにダンジョンに行ったの?〟

っと痛くもない腹を探られる可能性もあるので、地図以外の報奨金は受け取ることにした。

元々はおじさまからの調査依頼、更に元を辿ればシド帝国の軍部に関わることのため、隙を見せるわけにはいかない。

(あくまで一冒険者のしたことで通しておかないとね)

それから、冒険者ギルドに今回のダンジョンで採取した、精製されていない純度の低い火薬を半分買い取ってもらい、魔石も半分を売ることにした。

ギルドの買い取り担当の方は、ものすごく嬉しそうだ。

「これからは、このような火薬や魔石がここで取引されるようになるかと思うと、感無量です」

丁寧に《火の魔石》の数を数えてから、納品書を渡してもらい手付金も頂いた。
手付金ということになったのは、全額となると高額すぎて、ここのギルドではすぐには用意できなかったからだ。売り先がある程度決まったところで、残金を支払う、ということになっている。

「こんな高額のお取引がこのラキの冒険者ギルドで再びできるようになるとは思いませんでした。ありがとうございます。メイロード・マリスさま」

どうやら、私の名前はこの冒険者ギルド中に知れ渡ってしまったらしい。
職員の皆さんは皆最敬礼という感じの挨拶を返してくるし、その様子に冒険者の皆さんも騒つくし、歩いているだけでそこら中から視線が突き刺さり、私についての噂が広がる音が聞こえるようだ。

(いたたまれない……さっさと撤収しよっと。もう、することもないし)

そそくさと冒険者ギルドを後にし、ラキの拠点へ戻る。
だが帰った拠点にはもう、セイカの姿はなかった。

「今回のことを、すぐに中央へ知らせなければならないらしくて、まだ本調子じゃないのに大神殿へ戻っていったよ。挨拶もできずにごめんなさいってさ……」

エジン先生がセイカの伝言を私に伝えてくれた。

さよならが言えなかったのは残念だけれど、彼女が今回のことをで、報告に帰ることができただけで私は満足だ。きっと伝えられた相手も喜んだ事だろう。大事な〝青の巫女〟を失わずに、この危機を回避できたのだから。

マホロの神殿の奥にいるのなら、また顔を見る機会もあるかもしれないし、今は彼女の無事を喜んでおこう。

そこから数日、ラキの拠点とマホロの別荘の間を行き来しながら、事後処理をしつつをおじさまへの報告書を書く日々が続いた。《伝令》を使い、一報として

「〝爆砂〟はありませんでした。軍部が警戒すべきダンジョンではありません」

と、伝えてはあるが、軍部への報告、それだけでは済まない。セイカのことや《青の祈祷》のことは省いて、それ以外は詳細に報告を書く必要がある。

《真空エア・バブル》での攻撃については、グッケンス博士がやったことに改変。(一応、博士から許可は取った)
とはいえ、博士がやったにしても《ネオ・パクー》を丸ごと殲滅してしまった事実を報告するのは、さすがにマズいので、そこは同行者一丸となって切り抜けたという感じで書いておいた。

(新しい魔法の軍事転用とか、考えられたら困るし……ね)

ダンジョン以外の情報についても、しっかりレポートには盛り込むことができた。
ラキの現状については、エジン先生が調べてくれた情報がとても役立ってくれたし、報告書作成の作業も積極的にエジン先生が手伝ってくれた。彼は文字を書く仕事については恐ろしく早くて正確なのだ。
とはいえこれはなかなかの作業量。一週間をかけて、やっと私たちは誰にも文句がつけられない体裁を整えた、分厚い報告書を書き上げた。

「メイロードの報告書の書き方は面白いね。初めて見たけど、グラフっていうの気に入った!
君といると、どんどん新しいことが知れて嬉しいよ!」

今回はかなりこき使ってしまったのに、エジン先生はものすごく楽しそうだ。

(この世界、統計学とか疫学とかあんまり発達してないのかな?まぁ、いいか、エジン先生が面白そうにしてるから……)

出来上がった報告書はソーヤに頼んで直接おじさまの元に届けてもらうことにした。
これで、私の任務は完了だ。

思いもしなかったことがいろいろあったけれど、グッケンス博士には新たな研究材料を提供できたし、セイリュウは〝巫女〟を助けられたし、エジン先生は統計の面白さを知ったみたいだし、セイカの命は助かったし、まずは良いダンジョン攻略だったかな……

それにしてもミカミ一族って偉いな。
莫大な富を生み出すダンジョンなのに命がけで封印してでも、平和の維持を優先するなんて、為政者にはなかなかできない選択だと思う。アキツでは各地の産業が決してうまく育っていっていない。そのことは長く滞在するにつけ私にも分かってきている。〝爆砂〟を断つのは苦渋の選択に違いない。

(結構茨の道だよね。でも、この一族が為政者なら以前より実りある国にできるよ、きっと!)

予定よりだいぶ早いが、この拠点ともそろそろお別れだな、と思っていたところへ、一通の手紙が届けられた。

それは、マホロにある天地教の総本山でもある大神殿への招待状だった。
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