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癇癪リボン
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「ちょっと、何なのこれ!私が頼んだのは真っ赤なリボンよ!?」
朝から家中に響くような声で怒鳴るのは、この家の次女サーシャ。責められているのは勿論、使用人の如く生活するアリステラだ。
サーシャは手に取ったリボンを力任せに床に叩きつけた。
いや、それ貴方のだけどそんなに乱暴に扱っていいの?というか、サーシャはリボンのストックが豊富過ぎて、彼女の望むリボンがどれなのか分かりづらい。
アリステラは、ちらりとサーシャの部屋のクローゼットの横にある、これまた真っ赤なリボン入れを見る。その中には、端から端まで真っ赤なリボンがズラリと並んでいる。よくよく見れば、わずかに布や意匠の違いがあるが、色についてはもはやアリステラに理解できない。
面倒なので、アリステラは右から赤1、赤2と勝手に呼んでいる。今日サーシャが選んだのは先日選んだものと同じだったので、間違いはないはずだが、本人としては違うらしい。もう自分で選んで欲しい。
「え、と、今日はこの赤54…じゃなかった。ブリブリ赤リボンではないのですか」
口が滑った。
「ブリブリとは何なの!!」
そして、怒られた。
見た者全員が納得すると思うんだけどなぁ。リボンのサイズは特大、中央にはムーンストーン等の宝石が、そしてリボンの端にはこれでもかとフリルが付いている。
正直、服を隠されるよりも、このリボンを付けて人前に出ろと言われた方が拷問である。
「信じられないわ、私が美しいから僻んでいるのね!?欲しがったってこのリボンはあげないわ」
いらないわ、心の底から。
嫌そうな顔を浮かべたアリステラに、サーシャの堪忍袋の緒が切れた。元々切れてはいたが。
サーシャは、ずかずかとアリステラの近くまで大股で近づき、力いっぱい彼女を突き飛ばした。サーシャが力任せなことをするとは思わなかったアリステラは、受身も取れずに床に転がった。その拍子に、かけていた眼鏡がアリステラ同様に床に叩きつけられた。
「ふん!芋虫みたいでいい気味!あたしは出かけるから掃除でもしとくのね」
鼻息も荒く、サーシャはそう言い捨てて勢い良くドアを閉めた。その姿をぼーっと眺めてアリステラは思った。
あの癇癪リボン、絶対夫なんてできないわ。似合わないツインテールもそろそろやめた方がいいだろうに。
彼女が家庭に入る姿がまるで想像できない。結婚してもすぐに離婚しそうだ。
やれやれと、アリステラは突き飛ばされた時に吹っ飛んだ眼鏡を回収する。拾い上げた眼鏡の片方のレンズには、細長くヒビが入っていた。
「おおぅ、なんてことを…。ま、伊達眼鏡だからそこまで問題でもないか。テープで補強しておこう」
その後、サーシャの部屋をそれっぽく掃除して、アリステラは眼鏡の手当を行った。これでも、長い付き合いなのだ。物を大事にするアリステラとしては、ヒビが入ったから替えようという考えは浮かばなかった。
朝から家中に響くような声で怒鳴るのは、この家の次女サーシャ。責められているのは勿論、使用人の如く生活するアリステラだ。
サーシャは手に取ったリボンを力任せに床に叩きつけた。
いや、それ貴方のだけどそんなに乱暴に扱っていいの?というか、サーシャはリボンのストックが豊富過ぎて、彼女の望むリボンがどれなのか分かりづらい。
アリステラは、ちらりとサーシャの部屋のクローゼットの横にある、これまた真っ赤なリボン入れを見る。その中には、端から端まで真っ赤なリボンがズラリと並んでいる。よくよく見れば、わずかに布や意匠の違いがあるが、色についてはもはやアリステラに理解できない。
面倒なので、アリステラは右から赤1、赤2と勝手に呼んでいる。今日サーシャが選んだのは先日選んだものと同じだったので、間違いはないはずだが、本人としては違うらしい。もう自分で選んで欲しい。
「え、と、今日はこの赤54…じゃなかった。ブリブリ赤リボンではないのですか」
口が滑った。
「ブリブリとは何なの!!」
そして、怒られた。
見た者全員が納得すると思うんだけどなぁ。リボンのサイズは特大、中央にはムーンストーン等の宝石が、そしてリボンの端にはこれでもかとフリルが付いている。
正直、服を隠されるよりも、このリボンを付けて人前に出ろと言われた方が拷問である。
「信じられないわ、私が美しいから僻んでいるのね!?欲しがったってこのリボンはあげないわ」
いらないわ、心の底から。
嫌そうな顔を浮かべたアリステラに、サーシャの堪忍袋の緒が切れた。元々切れてはいたが。
サーシャは、ずかずかとアリステラの近くまで大股で近づき、力いっぱい彼女を突き飛ばした。サーシャが力任せなことをするとは思わなかったアリステラは、受身も取れずに床に転がった。その拍子に、かけていた眼鏡がアリステラ同様に床に叩きつけられた。
「ふん!芋虫みたいでいい気味!あたしは出かけるから掃除でもしとくのね」
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「おおぅ、なんてことを…。ま、伊達眼鏡だからそこまで問題でもないか。テープで補強しておこう」
その後、サーシャの部屋をそれっぽく掃除して、アリステラは眼鏡の手当を行った。これでも、長い付き合いなのだ。物を大事にするアリステラとしては、ヒビが入ったから替えようという考えは浮かばなかった。
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