騎士様は一直線!

コトイアオイ

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11.誓いの朝

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 「レ、レイモンド。レイチェル…レファ…ストクリス!レンドルゴルトス!!」


「おはよう。何朝から大声出しているの、姉さん」


相変わらず騎士服を着こなすリゼは、今日も見た目は爽やかな麗人である。行動が毎回突拍子もないだけで。

しかし、雀がちゅんちゅんと囀る平和な朝、廊下の窓を全開にして叫ぶ姉に、1ミリも動揺せずレオンは首を傾げる。


「おはよう、レオン!その、私とレオンが結婚したら子供にどんな名前つけようかなって」


気が早いリゼのその言葉に、レオンも一瞬驚くが、すぐに頷いてリゼの手を握る。


「ふふ、姉さんのひたすら前向きな所、僕は大好きだよ。そうだね、姉さんに似た子供だと嬉しいかなぁ」


「私よりレオン激似を希望!」


大人レオンと子供レオンに囲まれるという、この世の幸せをリゼは妄想し、しゃがみこんで奇声をあげる。そんな通常運転の姉をレオンは愛しげに見つめ、リゼの片手をそっと掲げる。するりと指にはめられたのは、領主が受け継ぐ黄金の指輪だった。


羽を大きく広げる鳥の意匠と家名が彫られた指輪は、普通の指輪よりも重い。突然生じた指の重みに、自分の手元へ目をやったリゼは目を丸くした。


「これ…!」



「既に結婚式の準備は進めているんだ。この国で異母姉弟の結婚が認められていて良かった。…まぁ、認められていなくても力づくでどうにかしてみせたけどね」


「えっ、何?」


「ううん、結婚式が待ち遠しいよねってこと。本当は式で改めて指輪を贈るんだけど、この指輪はうちの伝統だから。万一、領主が過ちを犯した場合は、妻がよく正すようにっていう」


レオンの言葉にリゼも顔を引き締める。バンクロフト家は領民の生活を統治する責任がある。レオンの隣に立つためには、そうした責任も負わなければならないのだ。


きりっと真面目な顔に戻ったリゼはその指輪に、軽く口付けをして誓いの言葉を立てる。


「私、リゼ・バンクロフトはレオン・バンクロフトを愛し、よく支え、民を想う妻となります」


指輪を空に掲げ、堂々と宣言したリゼに対して、レオンも同じように宣言する。



「僕、レオン・バンクロフトはリゼ・バンクロフトただ一人を生涯愛し、妻が誇る領主として努めます」


見つめ合った二人は微笑み、自然と唇を重ねる。


晴れやかな朝、それぞれが指輪に誓い、二人は新たな一歩を歩み出した。
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