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7.弟の心、姉知らず
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祖母の家でまったりしていると、外から馬蹄の音と馬の嘶きが聞こえてきた。随分と荒い音に私は驚きつつ、外を覗いて見た。
ドアを半開きにして見てみると、そこにいたのは我が愛しのレオンだった。馬に颯爽と乗っているレオンは安定の美しさである。あの、今度フェルを貸し出すんで、ぜひとも白馬の王子様バージョンプリーズ。
私が白馬のレオン姿を妄想している間に、レオンは手際よく馬を厩舎に繋ぎ、ズカズカと歩み寄ってきた。そして、その勢いを殺すことなく私を抱きしめた。普段私がレオンに抱き着くことは多くあれど、このパターンは珍しい。幼い頃はレオンもよく抱き着いてきたのだが、最近ではほとんど見られない。そんなレアなレオンに私は心の中で歓喜の叫びを上げていた。
「っはぁあ…ここは天国か…じゃなくて、レ、レオン?一体何が…」
「何がじゃないよ。急に家から飛び出しておいて…凄く、心配した」
そう言ってレオンは私の首元に顔を埋めた。甘えるようなその仕草に私のヒットポイントは爆発した。ちょ、うちのレオンが可愛いよ神様!
「取り敢えず中に入ろう。このままじゃ話しにくいし…」
レオンが私の手を握って玄関に入っていく。レオン、お姉ちゃんはさっきのままでも良かったよ?むしろ、どんなに寒かろうが暑かろうがレオンがいるなら他は割りとどーでもいい。
この後のことなど何も考えていないリゼは、幸せそうにムフフと笑いを漏らしていた。
ーーーー
リビングのソファに座り、姉弟は一瞬押し黙る。一応、家出した者とそれを追いかけてきた者であって、色々と話さなければと双方考え込んだためだ。ちなみに、祖母は気を遣って席を外してくれている。単に眠いだけだろとか考えちゃだめよ。
リゼは一方的な弟への愛を伝えつつ、弟離れのために姉として彼女との仲をどうにか祝福しようと考えていた。家出の前に同じような話をして、レオンの機嫌が悪かったことは既に彼女の記憶には残っていない。
「珍しく不機嫌な弟も最高だった」という記憶のみである。そうなったきっかけは遠い彼方へ忘れ去っていた。
「あ、その…」
「さっきは…」
意を決して切り出そうとするも、丁度二人の言葉が被る。譲り合った末にリゼから話を始めた。
「急に飛び出して心配かけてごめんね。でも、私もちゃんと考えたから!レオンのこと好きなのは止められないけど、彼女のことも…もご!?」
ところが、話の途中でいきなりレオンから口を封じられた。彼の手で塞がれたため、言葉尻は明確な言葉にならず、リゼは困惑した。何をするのだと真横に座っているレオンを見れば、彼はまた不服そうな顔をしていた。
「…まだ変な勘違いしていたの?姉さん…」
「えっ、勘違い!?」
だって最近私に抱きつかなくなったし、あんまり一緒にいて欲しくない的なプチ反抗期かなとか思って。そんな時にレオンが女の子に優しくしていたし仲良さそうだったからてっきり恋人かと思ったのに。勘違い…?レオンの恋人いないなら、私は今まで通りでOK?
レオンからしたら当たり前の事実にようやく辿り着いたリゼは、いつものようにレオンに抱き着いた。
「じゃあ、私がレオン愛でても大丈夫ってことよね」
「……今回のことで思ったんだけど、僕ももう遠慮とか高望みはやめようかな」
リゼの言葉に頷きつつも、レオンはボソリと呟く。
彼の言葉を理解できずリゼは首を傾げた。遠慮とか高望み…とは。遠慮はまぁ、レオンが何か慎み深いということだろう。しかし、高望みとは一体何のことだろうか。
はっ…!まさか彼女に対する理想の高さとか?
騎士学校のクラスメイト達はこう語っていたではないか。
「彼女にするならやっぱ顔の可愛さ」
「いや、やっぱ優しくて可愛い子だろ」
「いやいや、スタイルの良さだろーが」
総括するなら、可愛い優しい巨乳の美少女だ!まさか、レオンもそんな子が良いと思っていたの?確かにレオンの横に並ぶなら、そこらへんの女の子じゃ…とは思うけどさ!
抱き着いていた身体を離して、横で強ばった顔でレオンを凝視するリゼに、レオンはため息をついた。
「姉さんって思い込み激しいのが残念だよね」
「ドストーレト!もっとオブラートに包んでよレオン」
「じゃないと伝わらないでしょ?だから、僕が今から話すこともそのまま素直に受け取って」
打って変わって真剣なレオンの表情に、リゼは思わずゴクリと息を呑む。さっきまでとは違う緊張感が部屋中に漂う。そんな中で、目の前の美しい弟は、ミゼを正面から見つめ、告白した。
「僕は姉さんが大好きだよ。姉弟の愛じゃなくて、一人の男女としての愛でね。だからこそ、早く僕のことを男として見てもらいたかった」
「え、嘘…レオンが…?」
最近妙にリゼを避けていたのも、弟として守られてばかりなのが嫌だったかららしい。そう考えるレオンも可愛いぞ…おっといけない、思考が逸れていく。
「嘘じゃないよ。だから僕がキスするのは、姉さんだけだ」
そう言ったレオンは、驚くリゼの唇に自分のそれを重ねた。ふわりとした感触の後、レオンは動揺するリゼの唇に指をそっと這わせる。
「姉さんが僕のことを愛でるなら、僕も当然同じように姉さんを愛でてもいいんだよね?」
可愛い言葉とは裏腹に、怪しく微笑むレオンからは何となく危険な雰囲気を感じる。これが美形の本気か。リゼは顔を赤らめ、心の中で悶絶した。そして、返事は勿論イエス。これ一択しかないでしょうが!!
「勿論!両想いなんだし当然でしょう。あぁ尊いレオンを独り占め、最高!」
「うーん、ちゃんと僕の言う意味分かってる?後悔しても遅いからね」
レオンは少し困った風にリゼの頭を心配する。そんなレオンも可愛い!とはしゃぐリゼは、この時安易に返事した事を後程悔やむことになる。
ドアを半開きにして見てみると、そこにいたのは我が愛しのレオンだった。馬に颯爽と乗っているレオンは安定の美しさである。あの、今度フェルを貸し出すんで、ぜひとも白馬の王子様バージョンプリーズ。
私が白馬のレオン姿を妄想している間に、レオンは手際よく馬を厩舎に繋ぎ、ズカズカと歩み寄ってきた。そして、その勢いを殺すことなく私を抱きしめた。普段私がレオンに抱き着くことは多くあれど、このパターンは珍しい。幼い頃はレオンもよく抱き着いてきたのだが、最近ではほとんど見られない。そんなレアなレオンに私は心の中で歓喜の叫びを上げていた。
「っはぁあ…ここは天国か…じゃなくて、レ、レオン?一体何が…」
「何がじゃないよ。急に家から飛び出しておいて…凄く、心配した」
そう言ってレオンは私の首元に顔を埋めた。甘えるようなその仕草に私のヒットポイントは爆発した。ちょ、うちのレオンが可愛いよ神様!
「取り敢えず中に入ろう。このままじゃ話しにくいし…」
レオンが私の手を握って玄関に入っていく。レオン、お姉ちゃんはさっきのままでも良かったよ?むしろ、どんなに寒かろうが暑かろうがレオンがいるなら他は割りとどーでもいい。
この後のことなど何も考えていないリゼは、幸せそうにムフフと笑いを漏らしていた。
ーーーー
リビングのソファに座り、姉弟は一瞬押し黙る。一応、家出した者とそれを追いかけてきた者であって、色々と話さなければと双方考え込んだためだ。ちなみに、祖母は気を遣って席を外してくれている。単に眠いだけだろとか考えちゃだめよ。
リゼは一方的な弟への愛を伝えつつ、弟離れのために姉として彼女との仲をどうにか祝福しようと考えていた。家出の前に同じような話をして、レオンの機嫌が悪かったことは既に彼女の記憶には残っていない。
「珍しく不機嫌な弟も最高だった」という記憶のみである。そうなったきっかけは遠い彼方へ忘れ去っていた。
「あ、その…」
「さっきは…」
意を決して切り出そうとするも、丁度二人の言葉が被る。譲り合った末にリゼから話を始めた。
「急に飛び出して心配かけてごめんね。でも、私もちゃんと考えたから!レオンのこと好きなのは止められないけど、彼女のことも…もご!?」
ところが、話の途中でいきなりレオンから口を封じられた。彼の手で塞がれたため、言葉尻は明確な言葉にならず、リゼは困惑した。何をするのだと真横に座っているレオンを見れば、彼はまた不服そうな顔をしていた。
「…まだ変な勘違いしていたの?姉さん…」
「えっ、勘違い!?」
だって最近私に抱きつかなくなったし、あんまり一緒にいて欲しくない的なプチ反抗期かなとか思って。そんな時にレオンが女の子に優しくしていたし仲良さそうだったからてっきり恋人かと思ったのに。勘違い…?レオンの恋人いないなら、私は今まで通りでOK?
レオンからしたら当たり前の事実にようやく辿り着いたリゼは、いつものようにレオンに抱き着いた。
「じゃあ、私がレオン愛でても大丈夫ってことよね」
「……今回のことで思ったんだけど、僕ももう遠慮とか高望みはやめようかな」
リゼの言葉に頷きつつも、レオンはボソリと呟く。
彼の言葉を理解できずリゼは首を傾げた。遠慮とか高望み…とは。遠慮はまぁ、レオンが何か慎み深いということだろう。しかし、高望みとは一体何のことだろうか。
はっ…!まさか彼女に対する理想の高さとか?
騎士学校のクラスメイト達はこう語っていたではないか。
「彼女にするならやっぱ顔の可愛さ」
「いや、やっぱ優しくて可愛い子だろ」
「いやいや、スタイルの良さだろーが」
総括するなら、可愛い優しい巨乳の美少女だ!まさか、レオンもそんな子が良いと思っていたの?確かにレオンの横に並ぶなら、そこらへんの女の子じゃ…とは思うけどさ!
抱き着いていた身体を離して、横で強ばった顔でレオンを凝視するリゼに、レオンはため息をついた。
「姉さんって思い込み激しいのが残念だよね」
「ドストーレト!もっとオブラートに包んでよレオン」
「じゃないと伝わらないでしょ?だから、僕が今から話すこともそのまま素直に受け取って」
打って変わって真剣なレオンの表情に、リゼは思わずゴクリと息を呑む。さっきまでとは違う緊張感が部屋中に漂う。そんな中で、目の前の美しい弟は、ミゼを正面から見つめ、告白した。
「僕は姉さんが大好きだよ。姉弟の愛じゃなくて、一人の男女としての愛でね。だからこそ、早く僕のことを男として見てもらいたかった」
「え、嘘…レオンが…?」
最近妙にリゼを避けていたのも、弟として守られてばかりなのが嫌だったかららしい。そう考えるレオンも可愛いぞ…おっといけない、思考が逸れていく。
「嘘じゃないよ。だから僕がキスするのは、姉さんだけだ」
そう言ったレオンは、驚くリゼの唇に自分のそれを重ねた。ふわりとした感触の後、レオンは動揺するリゼの唇に指をそっと這わせる。
「姉さんが僕のことを愛でるなら、僕も当然同じように姉さんを愛でてもいいんだよね?」
可愛い言葉とは裏腹に、怪しく微笑むレオンからは何となく危険な雰囲気を感じる。これが美形の本気か。リゼは顔を赤らめ、心の中で悶絶した。そして、返事は勿論イエス。これ一択しかないでしょうが!!
「勿論!両想いなんだし当然でしょう。あぁ尊いレオンを独り占め、最高!」
「うーん、ちゃんと僕の言う意味分かってる?後悔しても遅いからね」
レオンは少し困った風にリゼの頭を心配する。そんなレオンも可愛い!とはしゃぐリゼは、この時安易に返事した事を後程悔やむことになる。
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