14 / 32
第14話 進級
しおりを挟む
レナンの卒業式が終わると、彼女はエリックのいる王城へと移った。
これから本格的な王太子妃教育が始まるそうだ。
卒業式にはエリックは出向き、見事なエスコートでレナンを連れて行ったそうだ。
そしていよいよ新学期。
魔術コースにミューズとマオが、騎士コースにティタンとキールが進んだ。
新たな生活に胸が踊る。
「こうやって、見学できるのは嬉しいわね」
「ティタン様がんばってるです、去年よりまた体が大きくなったです」
学科が違いクラスは離れたものの、将来の騎士候補の訓練を自由に見られるのは、嬉しかった。
ありがたく見学させてもらうことにする。
将来の人脈作りや婚約者作りのため、垣根をなるべく作らないようにしているようだ。
ミューズ達はもちろんティタンを見に来たが、大半の女子生徒はキールなどの見目のいい騎士を見ているようだ。
(でも少なからずティタンを見ている人もいるわよね)
ちらりと横目で他の女生徒を見る。
将来の護衛騎士候補として、しっかり見定めようと見る者は多い。
……そうじゃない視線もあるようだ。
「マオ、あちらは?」
「アニス=フランク子爵令嬢です。確か隣国シェスタから来てるです」
ひそひそと話をした。
マオも気にしていたようで、話が早い。
「あの目、ティタンを見つめているわよね?」
「はい、キラキラお目々です。まさかミューズ様以外でティタン様をあのような目で見る女性がいるとは」
「マオ?」
どういう意味かと問いたかったが、流されてしまった。
二人に気がつき、ティタンがミューズに笑顔で手を振っている。
振り返そうとしたが、それより早く先程の令嬢が大きく振っていた。
ティタンは気づかないようなので、ミューズも改めて手を振る。
にかっと嬉しそうに笑うとまた訓練に戻った。
「あたしに手を振ってくれたわ!」
と件の令嬢はキャアキャアと周りの令嬢と話をしていた。
ミューズとマオは複雑な顔をして視線を交わす。
「今日見に来てくれたろ! 凄く嬉しかった!」
王室寮に戻るなりぎゅうぎゅうとミューズを抱きしめる。
よしよしと手を回し、背中をさすってあげるが、ミューズの前では本当に子どものようだ。
「ティタン様、僕たちの隣で手を降っていた女性は知り合いですか?」
「いや? 誰かいたのか?」
目に入ったのはミューズだけのようだ。
一応説明だけはしておく。
「アニス……知らないな。仮に好意を持たれていても返すことはないが、気のせいじゃないのか?」
「まぁティタン様ですし、僕らの気のせいかもしれません。でも件の令嬢とは念のため二人きりは止めてほしいのです。冤罪怖いです」
「あぁ~そういう事もあるか。わかった、ルドかライカを俺の護衛として借りるぞ。誰かがいればそういう事は防げるだろうから」
今まではティタンは強いので必要ないとし、ミューズの守りとして護衛騎士二人を交代でつけていた。
だが、ティタンがもしも件の女生徒と二人になり、襲ったなどとあらぬ疑いをかけられては困るという話だ。
それを防ぐためにも誰かが側にいるというのは証人にもなるので、心強い。
「勘違いならまぁいい。勘違いでなかった場合が厄介だな」
今までエリックがいかに大変だったのかを聞いていたので、女性問題の厄介さも身に沁みてわかっている。
まさか自分がとは多少思ったが、念の為だ。
「俺にはこんなに可愛い婚約者がいるから、そんな事絶対にしないのに」
ミューズを抱き上げ、頬ずりをする。
「もう、すぐ抱っこするのやめて」
抱えられると顔が近くなるので、慣れてきてはいるが恥ずかしいのだ。
「そうなのです、去年は騒動もありましたし、クラスは違えどわかりそうなのですが」
「折を見て聞いてみようかしら、私ちょっといやだもの」
小さい声で呟くミューズに、ティタンは歓喜で涙が出る。
「ミューズがヤキモチを妬いてくれるだなんて……!俺はなんて幸せ者なんだ」
「ミューズ様大丈夫です! 何かあれば僕とティタン様で力づくで排除するです!」
「それは止めて」
止めるものがいない二人の暴走にミューズは苦笑いをするしかなかった。
これから本格的な王太子妃教育が始まるそうだ。
卒業式にはエリックは出向き、見事なエスコートでレナンを連れて行ったそうだ。
そしていよいよ新学期。
魔術コースにミューズとマオが、騎士コースにティタンとキールが進んだ。
新たな生活に胸が踊る。
「こうやって、見学できるのは嬉しいわね」
「ティタン様がんばってるです、去年よりまた体が大きくなったです」
学科が違いクラスは離れたものの、将来の騎士候補の訓練を自由に見られるのは、嬉しかった。
ありがたく見学させてもらうことにする。
将来の人脈作りや婚約者作りのため、垣根をなるべく作らないようにしているようだ。
ミューズ達はもちろんティタンを見に来たが、大半の女子生徒はキールなどの見目のいい騎士を見ているようだ。
(でも少なからずティタンを見ている人もいるわよね)
ちらりと横目で他の女生徒を見る。
将来の護衛騎士候補として、しっかり見定めようと見る者は多い。
……そうじゃない視線もあるようだ。
「マオ、あちらは?」
「アニス=フランク子爵令嬢です。確か隣国シェスタから来てるです」
ひそひそと話をした。
マオも気にしていたようで、話が早い。
「あの目、ティタンを見つめているわよね?」
「はい、キラキラお目々です。まさかミューズ様以外でティタン様をあのような目で見る女性がいるとは」
「マオ?」
どういう意味かと問いたかったが、流されてしまった。
二人に気がつき、ティタンがミューズに笑顔で手を振っている。
振り返そうとしたが、それより早く先程の令嬢が大きく振っていた。
ティタンは気づかないようなので、ミューズも改めて手を振る。
にかっと嬉しそうに笑うとまた訓練に戻った。
「あたしに手を振ってくれたわ!」
と件の令嬢はキャアキャアと周りの令嬢と話をしていた。
ミューズとマオは複雑な顔をして視線を交わす。
「今日見に来てくれたろ! 凄く嬉しかった!」
王室寮に戻るなりぎゅうぎゅうとミューズを抱きしめる。
よしよしと手を回し、背中をさすってあげるが、ミューズの前では本当に子どものようだ。
「ティタン様、僕たちの隣で手を降っていた女性は知り合いですか?」
「いや? 誰かいたのか?」
目に入ったのはミューズだけのようだ。
一応説明だけはしておく。
「アニス……知らないな。仮に好意を持たれていても返すことはないが、気のせいじゃないのか?」
「まぁティタン様ですし、僕らの気のせいかもしれません。でも件の令嬢とは念のため二人きりは止めてほしいのです。冤罪怖いです」
「あぁ~そういう事もあるか。わかった、ルドかライカを俺の護衛として借りるぞ。誰かがいればそういう事は防げるだろうから」
今まではティタンは強いので必要ないとし、ミューズの守りとして護衛騎士二人を交代でつけていた。
だが、ティタンがもしも件の女生徒と二人になり、襲ったなどとあらぬ疑いをかけられては困るという話だ。
それを防ぐためにも誰かが側にいるというのは証人にもなるので、心強い。
「勘違いならまぁいい。勘違いでなかった場合が厄介だな」
今までエリックがいかに大変だったのかを聞いていたので、女性問題の厄介さも身に沁みてわかっている。
まさか自分がとは多少思ったが、念の為だ。
「俺にはこんなに可愛い婚約者がいるから、そんな事絶対にしないのに」
ミューズを抱き上げ、頬ずりをする。
「もう、すぐ抱っこするのやめて」
抱えられると顔が近くなるので、慣れてきてはいるが恥ずかしいのだ。
「そうなのです、去年は騒動もありましたし、クラスは違えどわかりそうなのですが」
「折を見て聞いてみようかしら、私ちょっといやだもの」
小さい声で呟くミューズに、ティタンは歓喜で涙が出る。
「ミューズがヤキモチを妬いてくれるだなんて……!俺はなんて幸せ者なんだ」
「ミューズ様大丈夫です! 何かあれば僕とティタン様で力づくで排除するです!」
「それは止めて」
止めるものがいない二人の暴走にミューズは苦笑いをするしかなかった。
0
お気に入りに追加
147
あなたにおすすめの小説
溺愛される妻が記憶喪失になるとこうなる
田尾風香
恋愛
***2022/6/21、書き換えました。
お茶会で紅茶を飲んだ途端に頭に痛みを感じて倒れて、次に目を覚ましたら、目の前にイケメンがいました。
「あの、どちら様でしょうか?」
「俺と君は小さい頃からずっと一緒で、幼い頃からの婚約者で、例え死んでも一緒にいようと誓い合って……!」
「旦那様、奥様に記憶がないのをいいことに、嘘を教えませんように」
溺愛される妻は、果たして記憶を取り戻すことができるのか。
ギャグを書いたことはありませんが、ギャグっぽいお話しです。会話が多め。R18ではありませんが、行為後の話がありますので、ご注意下さい。
「君を愛す気はない」と宣言した伯爵が妻への片思いを拗らせるまで ~妻は黄金のお菓子が大好きな商人で、夫は清貧貴族です
朱音ゆうひ
恋愛
アルキメデス商会の会長の娘レジィナは、恩ある青年貴族ウィスベルが婚約破棄される現場に居合わせた。
ウィスベルは、親が借金をつくり自殺して、後を継いだばかり。薄幸の貴公子だ。
「私がお助けしましょう!」
レジィナは颯爽と助けに入り、結果、彼と契約結婚することになった。
別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0596ip/)
【完結】27王女様の護衛は、私の彼だった。
華蓮
恋愛
ラビートは、アリエンスのことが好きで、結婚したら少しでも贅沢できるように出世いいしたかった。
王女の護衛になる事になり、出世できたことを喜んだ。
王女は、ラビートのことを気に入り、休みの日も呼び出すようになり、ラビートは、休みも王女の護衛になり、アリエンスといる時間が少なくなっていった。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
嘘つきな私が貴方に贈らなかった言葉
海林檎
恋愛
※1月4日12時完結
全てが嘘でした。
貴方に嫌われる為に悪役をうって出ました。
婚約破棄できるように。
人ってやろうと思えば残酷になれるのですね。
貴方と仲のいいあの子にわざと肩をぶつけたり、教科書を隠したり、面と向かって文句を言ったり。
貴方とあの子の仲を取り持ったり····
私に出来る事は貴方に新しい伴侶を作る事だけでした。
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
絶対に離縁しません!
緑谷めい
恋愛
伯爵夫人マリー(20歳)は、自邸の一室で夫ファビアン(25歳)、そして夫の愛人ロジーヌ(30歳)と対峙していた。
「マリー、すまない。私と離縁してくれ」
「はぁ?」
夫からの唐突な求めに、マリーは驚いた。
夫に愛人がいることは知っていたが、相手のロジーヌが30歳の未亡人だと分かっていたので「アンタ、遊びなはれ。ワインも飲みなはれ」と余裕をぶっこいていたマリー。まさか自分が離縁を迫られることになるとは……。
※ 元鞘モノです。苦手な方は回避してください。全7話完結予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる