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第13話 甘やかす
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「あの、私は大丈夫だから、ね?」
「ダメだ」「ダメです」「ダメよ」
三人の声が聞こえ、ミューズは諦めた。
今は王室寮に戻り、ミューズの部屋にいる。
後ろからティタンに抱っこされ、ティタンの膝に座らせられている状態だ。
マオはせっせとお菓子や紅茶を運び、レナンは隣でミューズの手を握っている。
キュアは王族になるレナンの妹に手を出した五人の処罰で席を外している。
あとでお礼を言わないと。
「それにしてもティタン様、もう少しミューズをしっかり守ってください」
「それについては面目ない、初動が甘いと兄上にもマオにも怒られた」
怖い思いをさせた自覚はある。
「次に残せばもっと陰湿に悪質になりますので、エリック様の手ほどきをもらったのです。次はもっと上手くやります」
マオはエリックからの手紙をレナンにも見せる。
「では、今回ミューズが傷ついたのもエリック様のせいですか?」
「ミューズが囮になることで集結しやすいとはあったが、耐え難かったな。俺は俺なりのやり方も模索していきます」
すりすりとミューズの頭に頬ずりをする。
「食事はこちらに運んでもらうのです。すみませんがレナン様、しばらくはミューズ様とお休み時ご一緒して頂けませんか?ミューズ様を一人にしたくないのです」
マオは必要とは言え、ほんの少しでもミューズと離れたのが嫌だったのだろう。
精神の苦痛を慮っているみたいだ。
幸いなのは姉であるレナンがこうしてすぐ側にいる事。
気心のしれた姉がこんなに近くにいるのは、精神面から支える事が出来るからだ。
「もちろん!わたくしも一人にしたくないと考えてるわ。一緒に寝るなんてワクワクするわね」
「皆、私大丈夫だから」
「「「絶対にダメ」」」
三人の声が一致した。
そして三日間授業を休まされて教室へ戻ると、詳しい事情を知らない級友達から、溺愛令嬢と呼ばれるようになった。
「ミューズ様、あたしきちんと処罰してきました! ぎゅーってしてください」
「キュア、ありがとう」
言葉通りキュアをぎゅっと抱きしめる。
キュアはミューズよりも背が高く、包み込むようにして抱きしめ返す。
髪に顔をうずめ、すんすんと匂いも嗅ぐ。
「あぁミューズ様の香り、極上だわ……」
「いい加減離れろ、ミューズが減る」
不機嫌そうにティタンがキュアの頭を掴むと後ろに下げた。
扱いがぞんざいだが、キュアはケロッとしている。
「また何かあればあたし頑張りますのでばんばん言ってくださいな! 女神に囲まれて幸せです」
きゃあっ言っちゃった!と頬に手を当て赤くなっていく。
キュアは女性が好きだ。
可愛い女性は皆好きで、庇護の対象だそうだ。
魔力は強いし、レナンとミューズを崇拝しているので裏切る心配もない。
ティタンとエリックにはもちろん好かれてないのだが。
「感謝はしている、ありがとう」
ここではいち貴族のティタンは表立っては処罰出来ない。
王太子妃の妹となるのだから王家が責任を持って処罰すると、キュアに後始末を任せたのだ。
「エリック様からもよろしくと言われています。大丈夫です! でも今後はより大事にしてると見せつけるため、護衛を増やしましょう。ルドとライカを護衛騎士としてがっつりつけますよ」
キュアからの進言を有り難く受け止める。
ひと悶着あり、そのままにはしておきたくない。
いかにミューズを大事にしているかを見せつけ、今後はあのような手出しをさせたくない。
ルドとライカは要人の護衛を主とし、一時期はエリックやティタンにもついていた。
ティタンも稽古で二人と打ち合いしたが、強かったのを覚えている。
事件から三日目、ようやくミューズは登校出来た。
初日は事件のショックで熱を出してしまったものの、ずっと誰かがミューズのそばにいたおかげで気持ちは安定していた。
教室に登校しても皆からは何も言われず、ちらちらとは見られるが話かけて来るものもイヤミを言うものも、今のところはない。
ミラと取り巻きがいなくなったが、聞くものはいなさそうだ。
キールは変わらず話をしてくれるが、ミラを気にした様子はない。
(来年には友達出来るといいな)
皆は級友としては優しいけど、友達となるとちょっと違うと思った。
来年は専門の学科に分かれるため、クラス編成も異なる。
騎士、魔術、文官、神官と、自分で選んだり適正を調べたりする。
ミューズは文官と迷ったものの、己が身を守る術を持つため、魔術を専攻した。
「ダメだ」「ダメです」「ダメよ」
三人の声が聞こえ、ミューズは諦めた。
今は王室寮に戻り、ミューズの部屋にいる。
後ろからティタンに抱っこされ、ティタンの膝に座らせられている状態だ。
マオはせっせとお菓子や紅茶を運び、レナンは隣でミューズの手を握っている。
キュアは王族になるレナンの妹に手を出した五人の処罰で席を外している。
あとでお礼を言わないと。
「それにしてもティタン様、もう少しミューズをしっかり守ってください」
「それについては面目ない、初動が甘いと兄上にもマオにも怒られた」
怖い思いをさせた自覚はある。
「次に残せばもっと陰湿に悪質になりますので、エリック様の手ほどきをもらったのです。次はもっと上手くやります」
マオはエリックからの手紙をレナンにも見せる。
「では、今回ミューズが傷ついたのもエリック様のせいですか?」
「ミューズが囮になることで集結しやすいとはあったが、耐え難かったな。俺は俺なりのやり方も模索していきます」
すりすりとミューズの頭に頬ずりをする。
「食事はこちらに運んでもらうのです。すみませんがレナン様、しばらくはミューズ様とお休み時ご一緒して頂けませんか?ミューズ様を一人にしたくないのです」
マオは必要とは言え、ほんの少しでもミューズと離れたのが嫌だったのだろう。
精神の苦痛を慮っているみたいだ。
幸いなのは姉であるレナンがこうしてすぐ側にいる事。
気心のしれた姉がこんなに近くにいるのは、精神面から支える事が出来るからだ。
「もちろん!わたくしも一人にしたくないと考えてるわ。一緒に寝るなんてワクワクするわね」
「皆、私大丈夫だから」
「「「絶対にダメ」」」
三人の声が一致した。
そして三日間授業を休まされて教室へ戻ると、詳しい事情を知らない級友達から、溺愛令嬢と呼ばれるようになった。
「ミューズ様、あたしきちんと処罰してきました! ぎゅーってしてください」
「キュア、ありがとう」
言葉通りキュアをぎゅっと抱きしめる。
キュアはミューズよりも背が高く、包み込むようにして抱きしめ返す。
髪に顔をうずめ、すんすんと匂いも嗅ぐ。
「あぁミューズ様の香り、極上だわ……」
「いい加減離れろ、ミューズが減る」
不機嫌そうにティタンがキュアの頭を掴むと後ろに下げた。
扱いがぞんざいだが、キュアはケロッとしている。
「また何かあればあたし頑張りますのでばんばん言ってくださいな! 女神に囲まれて幸せです」
きゃあっ言っちゃった!と頬に手を当て赤くなっていく。
キュアは女性が好きだ。
可愛い女性は皆好きで、庇護の対象だそうだ。
魔力は強いし、レナンとミューズを崇拝しているので裏切る心配もない。
ティタンとエリックにはもちろん好かれてないのだが。
「感謝はしている、ありがとう」
ここではいち貴族のティタンは表立っては処罰出来ない。
王太子妃の妹となるのだから王家が責任を持って処罰すると、キュアに後始末を任せたのだ。
「エリック様からもよろしくと言われています。大丈夫です! でも今後はより大事にしてると見せつけるため、護衛を増やしましょう。ルドとライカを護衛騎士としてがっつりつけますよ」
キュアからの進言を有り難く受け止める。
ひと悶着あり、そのままにはしておきたくない。
いかにミューズを大事にしているかを見せつけ、今後はあのような手出しをさせたくない。
ルドとライカは要人の護衛を主とし、一時期はエリックやティタンにもついていた。
ティタンも稽古で二人と打ち合いしたが、強かったのを覚えている。
事件から三日目、ようやくミューズは登校出来た。
初日は事件のショックで熱を出してしまったものの、ずっと誰かがミューズのそばにいたおかげで気持ちは安定していた。
教室に登校しても皆からは何も言われず、ちらちらとは見られるが話かけて来るものもイヤミを言うものも、今のところはない。
ミラと取り巻きがいなくなったが、聞くものはいなさそうだ。
キールは変わらず話をしてくれるが、ミラを気にした様子はない。
(来年には友達出来るといいな)
皆は級友としては優しいけど、友達となるとちょっと違うと思った。
来年は専門の学科に分かれるため、クラス編成も異なる。
騎士、魔術、文官、神官と、自分で選んだり適正を調べたりする。
ミューズは文官と迷ったものの、己が身を守る術を持つため、魔術を専攻した。
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