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第7話 妹達と臆病な姉

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 ご飯を食べて家まで送ってもらったはいいけれど、何だか妹達の様子がいつもと違う。

「お姉ちゃん、お帰り」

 何だかにこにことした顔で私を見てくるのだけど……。

「ただいま。って、そんな事よりもどういうつもりなの? 北杜さんとご飯に行くように仕向けたのはあなた達よね」

「だっていつもあたし達とでは味気ないでしょ? 偶には二人っきりでゆっくり食べるのもいいかなぁと思ったのよ」

 そう言うのはすぐ下の妹、静夏しずかだ。

 もうすぐ大学を卒業するのだが、このところ忙しくてずっと顔を合わせていなかった。

 なのに今日に限っているのはどうしてかしら。

「それにそろそろ結婚でしょ? 熱いプロポーズは受けた? 指輪とか、式についてとか話しした?」

 なるほど。そう言う話が聞きたくて二人にさせたのね。

 北杜さんは望んでいないのだから、そんな甘やかな話にはならないのに。

 妹達は勝手に盛り上がっていたようだ。

 ずっと否定してるのに。

 改めて私は説明をする。

「あのね、私達は好き合って結婚するのではないの。義務で結婚するんだから、そんな話しは出ないわよ。五百雀グループの会社を北杜さんと共に支えるために結婚するんだから、そんな事私と話す必要はないわ。全てあちらがいいようにしてくれるはずだもの」

 そう言うと静夏はきょとんとし、他の妹達も唖然としていた。

「まだそんな事言ってたの?」

「そんな事って」

「今時無理矢理結婚なんてないよ。それにお姉ちゃん、こう言ったらなんだけどさ、うちってお金ないよね。そんな家に援助して結婚までしてくれるって、義務でなんて出来なくない?」

 妹の秋音あきねが痛いところを突いてくる。

「そもそも無理矢理じゃないし。ていうかお姉ちゃんが勘違いしたんでしょ。央小父さんの会社を息子と一緒に支えてくれって言われたら、結婚かもって少しは頭がよぎるものじゃない?」

 双子の妹の方の茅冬ちふゆにもそんな事を言われた。

(そういうものなの? いえ、絶対に違うわ)

 私は首を横に振る、だって認めてしまったら、彼は私の事を好きだという事になってしまう。

(そんな事絶対にない……)

 あの怒りに満ちた顔を思い出せば、熱くなった頭も少し落ち着いてくる。

「とにかく彼とは思いなんて通じてないの」

 そう言って私は強引に部屋に行き、一人になる。

 この家に居られるのも、妹達があんなにのびのびと過ごせたのは、まごう事無く五百雀家のおかげ。

 ならば自分も腹を括るべきなのだろう。

 けれど、なかなか踏ん切りがつかないのは……。

(好きではないからいつか捨てられるんじゃないかな……)

 他に好きな人が出来たとか言ってくれればいい。

 一番最悪なのは愛人を作られる事。

 慰謝料を貰って終わりになればいいけれど、央さんの顔を立てるために離縁はしない、何て北杜さんに言われたらきっと地獄だ。

 好きな人が別な人に思いを寄せている姿なんて見たくないもの。

「そんな事ないだろうけど、でも」

 はっきりと北杜さんに気持ちを聞いた事はない。

 聞くのが怖いのだ。

 本当に別に好きな人がいると言われるのも、自分の事が嫌いだと言われるのも。

「いっそ約束の日が来なければいいのに」

 約束の日とは妹達が卒業する日、つまり成人する日だ。

 その日に私は北杜さんと籍を入れることになっている。



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