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第59話 激しい音(リヴィオ視点)
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(エカテリーナ様は大丈夫だろうか)
カルロス様は道中、様々な話をしてくれた。
ローシュの企み、エカテリーナ様の事、ブルックリン侯爵家について。そしてどうしてカルロス様が無理矢理に俺を引き入れたかったのか、などの理由を。
こんなにも問題が広がってしまったのは、俺にも責任がある。
(あの時ローシュ達の会話を聞いていたら、こんな事にはならなかったのに)
友人同士の大事な会話だからと席を外すように命じられたのだが、こんな事になるならば側を離れなければ良かったと後悔の念が押し寄せた。
仲直りのデートも、そんなつもりは最初からなかったのだと気づき、今更ながら悔やまれる。
エカテリーナ様を故意に傷つけようとしたなんて、如何なる理由があろうと許せるわけがない。
ローシュの犯した罪についてをカルロス様から教えられ、そして謝罪をされる。
「リヴィオには色々な事を背負わせてしまい、すまなかった。王家がすぐに対応していたらまた違っただろうに、本当に申し訳ない」
頭を下げるまではしなかったものの、眉間に皺を寄せ、後悔の表情を見せられたのでは、咎めの言葉など出るわけもなかった。
「いえ。側近としてローシュ様の事を諫められなかったのは事実ですし、カルロス様が謝る事ではございません」
正直カルロス様がローシュをただ放置していたのかというと、語弊がある。
カルロス様はとても忙しい人だ。
幼い頃から次代の王になるべく厳しい教育を受け、常に国王・王妃からも王族としての在り方を説かれ、優しい言葉を掛けられている事など見た事もない。
今では陛下の代わりに様々な政務もこなしており、大事な立場であるにも関わらず、自ら戦場に行くこともある。
彼に救われたもの、そして慕うものは存外多い。彼の隣にいるヴェイツもその一人だ。
一方のローシュは病弱であった事から昔から陛下に溺愛され、エカテリーナ様という優秀な婚約者もつけられ、大事にされていた。
ずっと守られてきたから、辛いことなど今まで経験したこともない。
最近では国王陛下からの溺愛にも拍車がかかり、ミリティア様の家に手紙も出したそうだ。
「ローシュに対して厳しすぎるのでは? 従姉妹なのだから優しくしてあげて欲しい」
という苦言の手紙を送ったそうだ。
救いようがない。
「早めに父には引退してもらって、実権は握らせてもらうつもりだ。俺が皆に認められているというわけではないが、ローシュの件もあるし、これ以上失態を重ねて国全体を揺るがす事になっては困るからな。責任はとらせる」
些かうんざりとしているカルロス様の口調に苦笑いをしてしまった。
ここまで彼と深い話をしたことはない。あれだけローシュの側近として、王族と顔を合わせていたのにだ、。
「ただでさえ他国とのいざこざで不安定な中、王家と貴族が揺れるのは困る。せめていろいろな足枷がないならば、俺も適任者に譲っていいとは思うのだが、そう簡単にはいかないものだな」
少し寂しそうな口調だ。
幼き頃から次代の王になるべく教育を受けてきた人だ、誰かに譲ってもいいなどと弱気になっているのは、ローシュの事があるからだろうか。
本音はどこにあるのだろう。
何も言えぬ中それでも馬車はひたすら走り続ける。
やがて街はずれの不自然な場所にとついた。
(あれか……)
あの屋敷にエカテリーナ様が居るかと思うと居ても立ってもいられない。
早く会って安心させてあげたい。
カルロス様と共についた屋敷から、突然轟音と共に竜巻が発生した。
「行くぞ」
それを合図にカルロス様と、屋敷を包囲していた騎士団が建物内に流れ込む。驚いている暇はないようだ。
俺も皆に倣い、カルロス様と共に中へ入る。
(まずはこの不埒者共を倒さなくてはな)
余計な考えを振り払うように剣を握り、迫りくる敵を討ち倒していく。
話しによればここに居るのはタリフィル子爵の名を使い、不法にバークレイ国に侵入してきたリーデガル教団の者だそうだ。
死を恐れない狂信者が、何故タリフィル子爵家、及び我が国に目をつけたのか。
ラウドのせいでタリフィル子爵家は付け込まれたと聞く。子爵邸を隠れ蓑にし、リーデガル教団の手の者がバークレイに隠れ潜んでいたが、それらも今は制圧したそうだ。
あそこを拠点にバークレイに何をしようとしていたのかは、語らずともわかるだろう。
王族と侯爵令嬢の命を狙ったものが平和主義なわけはない。
次々と騎士団が狂信者を捕縛していく中、ひと際異彩を放っていたのはエイシャスだ。
エカテリーナ様と同じ魔女の彼女は、抵抗されぬように次々と魔法で気絶させていく。
その表情はとても面倒くさそうなものだが、手を抜くことはない。
時折ヴェイツに目を向け、褒められたいというのがありありとわかる視線を送っていた。
魔女というのはとても一途だと先程聞いたが、エカテリーナ様もあのような視線を自分に送っていたのだろうかと考えてしまう。
そうしているうちにまた轟音が響いた。
「妙だ。二度目の合図を出すなんて、聞いていないが?」
カルロス様の焦る様な声に妙な胸騒ぎがする。
止められる前に俺は駆け出した。
まさかエカテリーナ様に何かあったのではないかと、恐怖で心臓が痛い。
生かして捕らえろと言われた事も忘れ、剣を振るいながら先に進んだ。
見知らぬ者よりもエカテリーナ様の元に行く方が大切に決まっている。
「エカテリーナ様っ!」
辿り着いたその先で見た光景に俺は驚愕してしまった。
カルロス様は道中、様々な話をしてくれた。
ローシュの企み、エカテリーナ様の事、ブルックリン侯爵家について。そしてどうしてカルロス様が無理矢理に俺を引き入れたかったのか、などの理由を。
こんなにも問題が広がってしまったのは、俺にも責任がある。
(あの時ローシュ達の会話を聞いていたら、こんな事にはならなかったのに)
友人同士の大事な会話だからと席を外すように命じられたのだが、こんな事になるならば側を離れなければ良かったと後悔の念が押し寄せた。
仲直りのデートも、そんなつもりは最初からなかったのだと気づき、今更ながら悔やまれる。
エカテリーナ様を故意に傷つけようとしたなんて、如何なる理由があろうと許せるわけがない。
ローシュの犯した罪についてをカルロス様から教えられ、そして謝罪をされる。
「リヴィオには色々な事を背負わせてしまい、すまなかった。王家がすぐに対応していたらまた違っただろうに、本当に申し訳ない」
頭を下げるまではしなかったものの、眉間に皺を寄せ、後悔の表情を見せられたのでは、咎めの言葉など出るわけもなかった。
「いえ。側近としてローシュ様の事を諫められなかったのは事実ですし、カルロス様が謝る事ではございません」
正直カルロス様がローシュをただ放置していたのかというと、語弊がある。
カルロス様はとても忙しい人だ。
幼い頃から次代の王になるべく厳しい教育を受け、常に国王・王妃からも王族としての在り方を説かれ、優しい言葉を掛けられている事など見た事もない。
今では陛下の代わりに様々な政務もこなしており、大事な立場であるにも関わらず、自ら戦場に行くこともある。
彼に救われたもの、そして慕うものは存外多い。彼の隣にいるヴェイツもその一人だ。
一方のローシュは病弱であった事から昔から陛下に溺愛され、エカテリーナ様という優秀な婚約者もつけられ、大事にされていた。
ずっと守られてきたから、辛いことなど今まで経験したこともない。
最近では国王陛下からの溺愛にも拍車がかかり、ミリティア様の家に手紙も出したそうだ。
「ローシュに対して厳しすぎるのでは? 従姉妹なのだから優しくしてあげて欲しい」
という苦言の手紙を送ったそうだ。
救いようがない。
「早めに父には引退してもらって、実権は握らせてもらうつもりだ。俺が皆に認められているというわけではないが、ローシュの件もあるし、これ以上失態を重ねて国全体を揺るがす事になっては困るからな。責任はとらせる」
些かうんざりとしているカルロス様の口調に苦笑いをしてしまった。
ここまで彼と深い話をしたことはない。あれだけローシュの側近として、王族と顔を合わせていたのにだ、。
「ただでさえ他国とのいざこざで不安定な中、王家と貴族が揺れるのは困る。せめていろいろな足枷がないならば、俺も適任者に譲っていいとは思うのだが、そう簡単にはいかないものだな」
少し寂しそうな口調だ。
幼き頃から次代の王になるべく教育を受けてきた人だ、誰かに譲ってもいいなどと弱気になっているのは、ローシュの事があるからだろうか。
本音はどこにあるのだろう。
何も言えぬ中それでも馬車はひたすら走り続ける。
やがて街はずれの不自然な場所にとついた。
(あれか……)
あの屋敷にエカテリーナ様が居るかと思うと居ても立ってもいられない。
早く会って安心させてあげたい。
カルロス様と共についた屋敷から、突然轟音と共に竜巻が発生した。
「行くぞ」
それを合図にカルロス様と、屋敷を包囲していた騎士団が建物内に流れ込む。驚いている暇はないようだ。
俺も皆に倣い、カルロス様と共に中へ入る。
(まずはこの不埒者共を倒さなくてはな)
余計な考えを振り払うように剣を握り、迫りくる敵を討ち倒していく。
話しによればここに居るのはタリフィル子爵の名を使い、不法にバークレイ国に侵入してきたリーデガル教団の者だそうだ。
死を恐れない狂信者が、何故タリフィル子爵家、及び我が国に目をつけたのか。
ラウドのせいでタリフィル子爵家は付け込まれたと聞く。子爵邸を隠れ蓑にし、リーデガル教団の手の者がバークレイに隠れ潜んでいたが、それらも今は制圧したそうだ。
あそこを拠点にバークレイに何をしようとしていたのかは、語らずともわかるだろう。
王族と侯爵令嬢の命を狙ったものが平和主義なわけはない。
次々と騎士団が狂信者を捕縛していく中、ひと際異彩を放っていたのはエイシャスだ。
エカテリーナ様と同じ魔女の彼女は、抵抗されぬように次々と魔法で気絶させていく。
その表情はとても面倒くさそうなものだが、手を抜くことはない。
時折ヴェイツに目を向け、褒められたいというのがありありとわかる視線を送っていた。
魔女というのはとても一途だと先程聞いたが、エカテリーナ様もあのような視線を自分に送っていたのだろうかと考えてしまう。
そうしているうちにまた轟音が響いた。
「妙だ。二度目の合図を出すなんて、聞いていないが?」
カルロス様の焦る様な声に妙な胸騒ぎがする。
止められる前に俺は駆け出した。
まさかエカテリーナ様に何かあったのではないかと、恐怖で心臓が痛い。
生かして捕らえろと言われた事も忘れ、剣を振るいながら先に進んだ。
見知らぬ者よりもエカテリーナ様の元に行く方が大切に決まっている。
「エカテリーナ様っ!」
辿り着いたその先で見た光景に俺は驚愕してしまった。
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