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第46話 誘いに乗りましょう
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(う~ん。それでも行きたくないわね)
ローシュ様の命を盾に迫られているが、本当にいるのかも怪しい。
そこまで仔細に彼の行動を知るわけではないし、もしかしたらもうとっくに王城に帰っていた、何てこともあり得る。
この学園に入れたという事は、この男は本当にタリフィル子爵家の従者なのだろうが、世間では隠している秘密を知っているのはどういうことだろうか。
(殺し屋を雇ったのが、タリフィル子爵なのかしら)
安直すぎる気もするが、否定する材料も今はない。
ここでこの男を捕えて尋問出来ればいいが、この前の者達のようにまた自殺してしまうかもしれないし、本当にローシュ様が殺される可能性もある。
(別に彼が死んでもどうでもいいけれど、カルロス様が困るかしら)
それにリヴィオも困るかもしれない。
それに貴重な情報を彫られる好機だから、思い切って見ようかしら。
「そんな怪しいところに行くわけが……「行くわ」
ポエットが尚も拒否したのを遮って、返答をする。
「行けません、エカテリーナ様! このような怪しい男に付いて行くのは駄目です」
ポエットが慌てて引き止めるが、私は首を横に振る。
「あなたが一緒だから大丈夫よ。それに私を危ない目に合わせるはずはないわよね?」
ちらりと男を見ると彼は頷いている。
噓つきの目ね、確約なんてないのでしょう。
「ただリヴィオも連れて行きたいわ。彼を待つ事は出来ない?」
「それなら伝言を残しましょう。子爵家に向かったと伝えれば後ほど迎えにいらしてくれるでしょうから」
駄目元で言ったが、やはり却下され代替案が出されたわ。それにしても、まるで彼が直ぐに戻らない事を知っているような口ぶりだわ。
(学園長に呼ばれたなんてのはついさっきの事よ? どこからがこの男達の計画かしら)
なんだか怪しい。
気にはなるもののここで追及しても言わないだろうから、男の望み通りに適当な学生を捕まえてリヴィオへの伝言をお願いする。
「では急ぎましょう」
依頼が終わって直ぐ向かうように促される。
案内された先にあったのは、黒い紋のない馬車だ。
「少しお待ちを。子爵家の馬車に乗る旨を侯爵家の御者にも伝えねばなりませんので」
そうしてポエットは馬車乗り場付近にいる門衛に伝達を頼む。
何も言わずに子爵家に行っては、侯爵家の皆に帰りが遅いと心配をされるだろう。
行先を伝えて、リヴィオと後から来てもらえるようにとお願いした。
本当はあいての馬車になんて乗りたくないが、侯爵家の馬車一台で学園に来てるから仕方がない。
ポエットが門衛と話しいる間、従者は私を好奇の目で見てくる。
私は顔を逸らし不愉快さを示すように眉間に皺を寄せたが、その程度では牽制にもならない。
「ブルックリン侯爵令嬢様は本当に記憶がないのですか?」
「……」
質問に答える気はない為無言を貫く。
「ローシュ殿下はあなたの事を可愛げがない女性と話していたそうですが、果たしてそうなのでしょうか。優秀なあなたに対して嫉妬したのではないですか?」
だから何だというのか。
ぺらぺらと煩い男ね、こういうタイプは嫌いよ。
「嫉妬でこのように美しく、素晴らしい女性を手放したとあれば愚かとしか言えないですね。まぁ失ったものの大きさに今頃になって気づき始めているようですが」
「……あなた、どういうつもりなの?」
明らかな不敬な言葉はただの従者が言う言葉ではない。
ここは密室ではなく、開かれた学園の敷地内だ。
馬車に乗るために他の者も多い。それなのにローシュ様を愚かだというなんて。
まぁ、事実だけども。
「そのままを言っただけですが、返答が来て嬉しいです」
変わらずに厭らしい笑みを浮かべているので、もはや存在ごと無視することにした。
その内に話を終えたポエットがまた間に入り、一緒に男の用意した馬車に乗ったわ。
中に乗るのは私とポエットだけで、男は別な馬車へと向かう。
一緒に乗らずホッとしたのだが、今度は外から鍵をかける音が聞こえてきた。やはり罠よね。
「エカテリーナ様、大丈夫です。私がついていますからね」
ポエットが私の手を握り、安心させるように力を込める。
強引に誘いに乗ったのは私なのに、怒りもしないなんて本当に申し訳ないわ。
こんなに甘やかしてくれるポエットには感謝しかない。
(ごめんなさいね、本当は飛び込むものではないのだろうけれど)
この怪しい男の言う事を突っぱねてすぐに調査を頼めばいいとはわかっている。
しかしそれでは真実が私の耳に入ってくるのが、かなり遅くなるだろう。
カルロス様が教えてくれたあの話も恐らくだいぶ前に判明している事だし、全てを話してくれたわけではないと思う。
それならば私自身が現場に飛び込んだ方が、まだ真実に近い話が聞ける可能性がある。
(カルロス様は嘘は言っていないのだろうけれど、全ては教えてくれないもの)
悪いとは言わない。
彼はそういう立場の者だし、ローシュ様より余程自分の役割をわかっている。
少なからず味方してくれたから信用はしてるけれど、それでは足りないわ。
(私は私の命を奪おうとしたもの達を許したくない)
王家の処刑で許してあげるつもりはない、この手で罰を与えたいのよ。
ローシュ様の命を盾に迫られているが、本当にいるのかも怪しい。
そこまで仔細に彼の行動を知るわけではないし、もしかしたらもうとっくに王城に帰っていた、何てこともあり得る。
この学園に入れたという事は、この男は本当にタリフィル子爵家の従者なのだろうが、世間では隠している秘密を知っているのはどういうことだろうか。
(殺し屋を雇ったのが、タリフィル子爵なのかしら)
安直すぎる気もするが、否定する材料も今はない。
ここでこの男を捕えて尋問出来ればいいが、この前の者達のようにまた自殺してしまうかもしれないし、本当にローシュ様が殺される可能性もある。
(別に彼が死んでもどうでもいいけれど、カルロス様が困るかしら)
それにリヴィオも困るかもしれない。
それに貴重な情報を彫られる好機だから、思い切って見ようかしら。
「そんな怪しいところに行くわけが……「行くわ」
ポエットが尚も拒否したのを遮って、返答をする。
「行けません、エカテリーナ様! このような怪しい男に付いて行くのは駄目です」
ポエットが慌てて引き止めるが、私は首を横に振る。
「あなたが一緒だから大丈夫よ。それに私を危ない目に合わせるはずはないわよね?」
ちらりと男を見ると彼は頷いている。
噓つきの目ね、確約なんてないのでしょう。
「ただリヴィオも連れて行きたいわ。彼を待つ事は出来ない?」
「それなら伝言を残しましょう。子爵家に向かったと伝えれば後ほど迎えにいらしてくれるでしょうから」
駄目元で言ったが、やはり却下され代替案が出されたわ。それにしても、まるで彼が直ぐに戻らない事を知っているような口ぶりだわ。
(学園長に呼ばれたなんてのはついさっきの事よ? どこからがこの男達の計画かしら)
なんだか怪しい。
気にはなるもののここで追及しても言わないだろうから、男の望み通りに適当な学生を捕まえてリヴィオへの伝言をお願いする。
「では急ぎましょう」
依頼が終わって直ぐ向かうように促される。
案内された先にあったのは、黒い紋のない馬車だ。
「少しお待ちを。子爵家の馬車に乗る旨を侯爵家の御者にも伝えねばなりませんので」
そうしてポエットは馬車乗り場付近にいる門衛に伝達を頼む。
何も言わずに子爵家に行っては、侯爵家の皆に帰りが遅いと心配をされるだろう。
行先を伝えて、リヴィオと後から来てもらえるようにとお願いした。
本当はあいての馬車になんて乗りたくないが、侯爵家の馬車一台で学園に来てるから仕方がない。
ポエットが門衛と話しいる間、従者は私を好奇の目で見てくる。
私は顔を逸らし不愉快さを示すように眉間に皺を寄せたが、その程度では牽制にもならない。
「ブルックリン侯爵令嬢様は本当に記憶がないのですか?」
「……」
質問に答える気はない為無言を貫く。
「ローシュ殿下はあなたの事を可愛げがない女性と話していたそうですが、果たしてそうなのでしょうか。優秀なあなたに対して嫉妬したのではないですか?」
だから何だというのか。
ぺらぺらと煩い男ね、こういうタイプは嫌いよ。
「嫉妬でこのように美しく、素晴らしい女性を手放したとあれば愚かとしか言えないですね。まぁ失ったものの大きさに今頃になって気づき始めているようですが」
「……あなた、どういうつもりなの?」
明らかな不敬な言葉はただの従者が言う言葉ではない。
ここは密室ではなく、開かれた学園の敷地内だ。
馬車に乗るために他の者も多い。それなのにローシュ様を愚かだというなんて。
まぁ、事実だけども。
「そのままを言っただけですが、返答が来て嬉しいです」
変わらずに厭らしい笑みを浮かべているので、もはや存在ごと無視することにした。
その内に話を終えたポエットがまた間に入り、一緒に男の用意した馬車に乗ったわ。
中に乗るのは私とポエットだけで、男は別な馬車へと向かう。
一緒に乗らずホッとしたのだが、今度は外から鍵をかける音が聞こえてきた。やはり罠よね。
「エカテリーナ様、大丈夫です。私がついていますからね」
ポエットが私の手を握り、安心させるように力を込める。
強引に誘いに乗ったのは私なのに、怒りもしないなんて本当に申し訳ないわ。
こんなに甘やかしてくれるポエットには感謝しかない。
(ごめんなさいね、本当は飛び込むものではないのだろうけれど)
この怪しい男の言う事を突っぱねてすぐに調査を頼めばいいとはわかっている。
しかしそれでは真実が私の耳に入ってくるのが、かなり遅くなるだろう。
カルロス様が教えてくれたあの話も恐らくだいぶ前に判明している事だし、全てを話してくれたわけではないと思う。
それならば私自身が現場に飛び込んだ方が、まだ真実に近い話が聞ける可能性がある。
(カルロス様は嘘は言っていないのだろうけれど、全ては教えてくれないもの)
悪いとは言わない。
彼はそういう立場の者だし、ローシュ様より余程自分の役割をわかっている。
少なからず味方してくれたから信用はしてるけれど、それでは足りないわ。
(私は私の命を奪おうとしたもの達を許したくない)
王家の処刑で許してあげるつもりはない、この手で罰を与えたいのよ。
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