26 / 70
第26話 告白の返事
しおりを挟む
「わかりました」
はっきりと聞こえたその返事に思わず顔を上げると、リヴィオの大きくて硬い手が私の顔に触れた。
優しい表情と肌の触れ合いに思わず言葉を失い、顔が火照る。
「この傷の責任も取らせてもらいます」
その言葉に私は少し悲しくなるが、次の行動で倒れそうになる。
リヴィオが私を抱きしめてくれた!
理解が追いつきそうにない……なんて心地良いのかしら。
どうしたらいいかわからず、棒立ちになってしまう。顔が沸騰したように熱いの、触らなくてもわかるわ。
絶対に真っ赤よ。
「今度はこのような傷を負わせません。体も、そして心も。ローシュ様のように、あなたを粗末に扱うようなことは致しません」
密着する感覚に息が止まりそうだ。
嬉しすぎる。
そして耳元でそっと囁かれた。
「あなたに初めて会った時からお慕いしておりました」
その後リヴィオはいかに私を愛しているかを語ってくれて、ずっとローシュが私を大事にしない事に対して憤っていたと話してくれる。
しかし、それでもローシュはリヴィオの主で、命令には従わなくてはならなかった。
王家の命令もあり、乳兄弟でもある為、ローシュを守らねばというのはあったが年々辛かったそうだ。
「怪我をしたエカテリーナ様を見て、思ったのです。俺は何をしているんだろうと」
自分勝手に私をを振り回すローシュに、とうとう愛想が尽きたのだと教えてくれる。
そんな反発心をローシュは察したためか、小言を嫌って積極的にリヴィオを私の元に派遣していたらしい。
怪我の功名で私はリヴィオと話す機会が増え、それに伴いこうして満足できる結果になって良かった。
(ずっと頑張ってきてよかったわ)
想いが報われて、胸が温かくなる。
部屋にいたはずのポエットはいつの間にか消えていた、本当に気が利く優秀な子ね。
私とリヴィオは婚約を交わし、その事をすぐに皆に報告したわ。
王家や親しい友人、そして学園にも話は広まった。
中には勘ぐるものもいたが、カルロス様がお祝いを大体的に行なってくれたので、文句を言うものは居なかったわ。
「おめでとう。俺が言える立場ではないが、今度こそ幸せになって欲しい」
元婚約者の兄で、王太子であるカルロス様に祝福の言葉を頂いたのだ。
この状況で何かを言うものがいたら逆に凄い。
そしてローシュはというと、すっかりと落ち着いて……という事もなく、いまだに色々な事に追われていて忙しいそうよ。
「エカテリーナという婚約者がいなくなったのだから、もっとしっかりしなさい」
侯爵令嬢で且つ希少な魔女を自ら切り捨てたのだから、ローシュは自力で頑張らなくてはならなくなった。
今まで私がしてきた手助けがない分外部に頼みたかったようだけど、婚約者だから踏み込めた部分もあり、他のものに頼むには難しいところがある。
そして記憶喪失の婚約者を捨てたという事で、彼の株はだいぶ落ちている。
私とリヴィオは彼の側に寄る事はなかったけれど、それでも話は耳に入ってくるわ。
(いい気味だわ)
内心でほくそ笑み、彼の悪い話を聞くと胸がすく思いだ。
性格が悪いと言われても、陥れた人を心配するほどの優しい性格だったら、そもそも婚約解消を画策しないわよ。
そうして彼が堕ちていくのに反比例して、私達は評価は上昇したわ。
私が今まで支えていたから、ローシュは卒なくこなせていたと皆がわかり始めたのだ。
彼自身の能力はそこまで高くない。普通の貴族ならともかく、王族としてはやや劣るところなので、皆失望しただろう。
この件で王位継承権も失ったし、風当たりも厳しくなってどんどん生きづらくなるのは確かになった。
そして今まで注目されていなかったリヴィオの方は評価がうなぎ登りだ。
リヴィオの献身ぷりは皆が見ていたし、ローシュに命令されて動いてたのも見ているから不貞も疑われない。
リヴィオは主が虐げる女性を身を挺して守る、健気な男性として映っていたそうだ。
中にはリヴィオの魅力に気づき、私が記憶喪失だからという理由だけで、追い落とそうというものもでたが、
「俺はエカテリーナ様一筋なので」
と、きっぱりはっきりと断ってくれて、私は歓喜しますますリヴィオを大好きになったわ。
ずっと欲しかったの。
誠実で私だけを見てくれる、素敵なナイトが。
私は自分で言うのもあれだけど、身分も容姿も家族にも恵まれている。
そして生まれつき魔法も使えて、物理的にも強い。
でも本当は守って欲しかった。
物語のお姫様のように体を張って守って欲しい、優しく心に寄り添ってくれる人が欲しいと思っていたの。
でも実際は私がローシュを助けることしかなくて、精神的にも肉体的にも守られる事がなくて……その点でもうんざりしていたわ。
だから、今の生活は幸せなの。
誰も私を頼らず、寧ろ頼らせてくれる。
(このまま記憶喪失でもいいかもしれない)
王子妃になるのだからと気を張っていたあの頃に戻るのに、躊躇いが生まれてきた。
だって、今周囲にいる皆はそのような事を気にしていない。
ならばもう少しだけこの幸せな生活にひたらせて貰おう。
例え束の間の平穏だとしても。
はっきりと聞こえたその返事に思わず顔を上げると、リヴィオの大きくて硬い手が私の顔に触れた。
優しい表情と肌の触れ合いに思わず言葉を失い、顔が火照る。
「この傷の責任も取らせてもらいます」
その言葉に私は少し悲しくなるが、次の行動で倒れそうになる。
リヴィオが私を抱きしめてくれた!
理解が追いつきそうにない……なんて心地良いのかしら。
どうしたらいいかわからず、棒立ちになってしまう。顔が沸騰したように熱いの、触らなくてもわかるわ。
絶対に真っ赤よ。
「今度はこのような傷を負わせません。体も、そして心も。ローシュ様のように、あなたを粗末に扱うようなことは致しません」
密着する感覚に息が止まりそうだ。
嬉しすぎる。
そして耳元でそっと囁かれた。
「あなたに初めて会った時からお慕いしておりました」
その後リヴィオはいかに私を愛しているかを語ってくれて、ずっとローシュが私を大事にしない事に対して憤っていたと話してくれる。
しかし、それでもローシュはリヴィオの主で、命令には従わなくてはならなかった。
王家の命令もあり、乳兄弟でもある為、ローシュを守らねばというのはあったが年々辛かったそうだ。
「怪我をしたエカテリーナ様を見て、思ったのです。俺は何をしているんだろうと」
自分勝手に私をを振り回すローシュに、とうとう愛想が尽きたのだと教えてくれる。
そんな反発心をローシュは察したためか、小言を嫌って積極的にリヴィオを私の元に派遣していたらしい。
怪我の功名で私はリヴィオと話す機会が増え、それに伴いこうして満足できる結果になって良かった。
(ずっと頑張ってきてよかったわ)
想いが報われて、胸が温かくなる。
部屋にいたはずのポエットはいつの間にか消えていた、本当に気が利く優秀な子ね。
私とリヴィオは婚約を交わし、その事をすぐに皆に報告したわ。
王家や親しい友人、そして学園にも話は広まった。
中には勘ぐるものもいたが、カルロス様がお祝いを大体的に行なってくれたので、文句を言うものは居なかったわ。
「おめでとう。俺が言える立場ではないが、今度こそ幸せになって欲しい」
元婚約者の兄で、王太子であるカルロス様に祝福の言葉を頂いたのだ。
この状況で何かを言うものがいたら逆に凄い。
そしてローシュはというと、すっかりと落ち着いて……という事もなく、いまだに色々な事に追われていて忙しいそうよ。
「エカテリーナという婚約者がいなくなったのだから、もっとしっかりしなさい」
侯爵令嬢で且つ希少な魔女を自ら切り捨てたのだから、ローシュは自力で頑張らなくてはならなくなった。
今まで私がしてきた手助けがない分外部に頼みたかったようだけど、婚約者だから踏み込めた部分もあり、他のものに頼むには難しいところがある。
そして記憶喪失の婚約者を捨てたという事で、彼の株はだいぶ落ちている。
私とリヴィオは彼の側に寄る事はなかったけれど、それでも話は耳に入ってくるわ。
(いい気味だわ)
内心でほくそ笑み、彼の悪い話を聞くと胸がすく思いだ。
性格が悪いと言われても、陥れた人を心配するほどの優しい性格だったら、そもそも婚約解消を画策しないわよ。
そうして彼が堕ちていくのに反比例して、私達は評価は上昇したわ。
私が今まで支えていたから、ローシュは卒なくこなせていたと皆がわかり始めたのだ。
彼自身の能力はそこまで高くない。普通の貴族ならともかく、王族としてはやや劣るところなので、皆失望しただろう。
この件で王位継承権も失ったし、風当たりも厳しくなってどんどん生きづらくなるのは確かになった。
そして今まで注目されていなかったリヴィオの方は評価がうなぎ登りだ。
リヴィオの献身ぷりは皆が見ていたし、ローシュに命令されて動いてたのも見ているから不貞も疑われない。
リヴィオは主が虐げる女性を身を挺して守る、健気な男性として映っていたそうだ。
中にはリヴィオの魅力に気づき、私が記憶喪失だからという理由だけで、追い落とそうというものもでたが、
「俺はエカテリーナ様一筋なので」
と、きっぱりはっきりと断ってくれて、私は歓喜しますますリヴィオを大好きになったわ。
ずっと欲しかったの。
誠実で私だけを見てくれる、素敵なナイトが。
私は自分で言うのもあれだけど、身分も容姿も家族にも恵まれている。
そして生まれつき魔法も使えて、物理的にも強い。
でも本当は守って欲しかった。
物語のお姫様のように体を張って守って欲しい、優しく心に寄り添ってくれる人が欲しいと思っていたの。
でも実際は私がローシュを助けることしかなくて、精神的にも肉体的にも守られる事がなくて……その点でもうんざりしていたわ。
だから、今の生活は幸せなの。
誰も私を頼らず、寧ろ頼らせてくれる。
(このまま記憶喪失でもいいかもしれない)
王子妃になるのだからと気を張っていたあの頃に戻るのに、躊躇いが生まれてきた。
だって、今周囲にいる皆はそのような事を気にしていない。
ならばもう少しだけこの幸せな生活にひたらせて貰おう。
例え束の間の平穏だとしても。
18
お気に入りに追加
756
あなたにおすすめの小説
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。
2度目の人生は好きにやらせていただきます
みおな
恋愛
公爵令嬢アリスティアは、婚約者であるエリックに学園の卒業パーティーで冤罪で婚約破棄を言い渡され、そのまま処刑された。
そして目覚めた時、アリスティアは学園入学前に戻っていた。
今度こそは幸せになりたいと、アリスティアは婚約回避を目指すことにする。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる