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第22話 進展
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「慰謝料は勿論支払うが、それで終わりなわけはない。エカテリーナ嬢の記憶は本人にとっては勿論、ブルックリン侯爵家にとっても、王家にとってもかけがえのないものであった。それを失くした原因を作ったのは王家、いやお前だ。その為お前の個人資産も用いて、今後もエカテリーナ嬢への支援を続けていく」
ローシュは酷く慌てた。
「お待ちください。僕の個人資産を当てるというのはどういう事ですか。王家が支払っていくというのはわかるのですが、何故僕も負担を?」
「この状況を作った本人だからだと言っただろう。それにお金を払う以外に、お前はエカテリーナ嬢に何をしてあげられる? 学園での支援も側近であるリヴィオと侍女のポエットに任せ、学友たちと遊ぶだけのお前が。いくらでも機会はあったというのに、婚約者を支えてあげられなかったお前に、もはや期待する者はない」
陛下はそう言い切って、私に目を配る。
「解消について王家はもう反対しない。エカテリーナ嬢には今まで多くの事で助けてもらっていたのに、ローシュはその半分も返すことが出来なかったのだから。これ以上縛り付け、心労を重ねさせるわけには行かないと結論づいた。ローシュの教育について至らず、本当に申し訳ない」
頭は下げないものの陛下のその言葉で充分だ。
国のトップの謝罪など、本来ならば受けられるものではないし、婚約解消を賛成されたのならば、私からいう事はもうないわ。
寧ろ陛下の英断に感謝よ。
発言の撤回は私が思うよりも大変だったでしょうから。
「いいのです、陛下。以前の私がローシュ様に何をしたのか分かりませんし、今の私が分かるのはローシュ様が私を好いていないという事だけですので。それに正直私もローシュ様を好いておりませんし、これ以上一緒に居てもお互い不幸になりますもの。ですが支援はブルックリン家の為と、今後の為に有難く受け取らせていただきます。あとは婚約解消のサインを頂ければ私からいう事は何もありませんわ」
私は満面の笑顔で書類をローシュに渡す。
「君はそんな笑顔も出来るのか」
何を今更そんな事を。
「毎日リヴィオとポエットが側にいてくれて幸せですからね」
「……以前の君はそんな顔などしたことがなかったのに」
ぽつりぽつりとローシュが語りだす。
(あっ、これ面倒くさいし長くなるパターンだ)
早くサインをして欲しかったのに。
ローシュの語りだしを止められなかったのを後悔しながら、神妙な顔をする。
(まだやることはあるのだから、ぱぱっと終わって欲しいわね)
うだうだと話すローシュに仕方無しに耳を貸す事になってしまった。
ローシュは酷く慌てた。
「お待ちください。僕の個人資産を当てるというのはどういう事ですか。王家が支払っていくというのはわかるのですが、何故僕も負担を?」
「この状況を作った本人だからだと言っただろう。それにお金を払う以外に、お前はエカテリーナ嬢に何をしてあげられる? 学園での支援も側近であるリヴィオと侍女のポエットに任せ、学友たちと遊ぶだけのお前が。いくらでも機会はあったというのに、婚約者を支えてあげられなかったお前に、もはや期待する者はない」
陛下はそう言い切って、私に目を配る。
「解消について王家はもう反対しない。エカテリーナ嬢には今まで多くの事で助けてもらっていたのに、ローシュはその半分も返すことが出来なかったのだから。これ以上縛り付け、心労を重ねさせるわけには行かないと結論づいた。ローシュの教育について至らず、本当に申し訳ない」
頭は下げないものの陛下のその言葉で充分だ。
国のトップの謝罪など、本来ならば受けられるものではないし、婚約解消を賛成されたのならば、私からいう事はもうないわ。
寧ろ陛下の英断に感謝よ。
発言の撤回は私が思うよりも大変だったでしょうから。
「いいのです、陛下。以前の私がローシュ様に何をしたのか分かりませんし、今の私が分かるのはローシュ様が私を好いていないという事だけですので。それに正直私もローシュ様を好いておりませんし、これ以上一緒に居てもお互い不幸になりますもの。ですが支援はブルックリン家の為と、今後の為に有難く受け取らせていただきます。あとは婚約解消のサインを頂ければ私からいう事は何もありませんわ」
私は満面の笑顔で書類をローシュに渡す。
「君はそんな笑顔も出来るのか」
何を今更そんな事を。
「毎日リヴィオとポエットが側にいてくれて幸せですからね」
「……以前の君はそんな顔などしたことがなかったのに」
ぽつりぽつりとローシュが語りだす。
(あっ、これ面倒くさいし長くなるパターンだ)
早くサインをして欲しかったのに。
ローシュの語りだしを止められなかったのを後悔しながら、神妙な顔をする。
(まだやることはあるのだから、ぱぱっと終わって欲しいわね)
うだうだと話すローシュに仕方無しに耳を貸す事になってしまった。
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