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第21話 解消についての話し合い
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そうして事実の確認がなされた。
我がブルックリン家と、そして王家も調査に乗り出して、ローシュのこれまでの素行が調べ上げられる。
婚約者を大事にしない、世話を丸投げ、下位貴族であるフロルとはよく話をする姿が見かけられていた。
だが、二人きりという事はなく、必ず他の誰かもいる時に話をしていたようで、その為に浮気とは言えないという結論になった。
でも彼女が侯爵令嬢である私を蔑むような言葉を発したのは事実なので、その点については罰を与える事が決まる。
貴族にとって誇りや矜持は大事なもので、貶されたのに放置はまずない。そして一度出した言葉は戻らない。
フロルの言ったこと、行なったことは許せるものではないし、私は王族の婚約者でもある。ブルックリン家だけでなく、王家をも侮辱したに等しい扱いだ。
フロルに関しては王家とお父様が何らかの事をするらしく、詳細は知らない。まぁ、結末は甘くはないだろうな。
そちらについてはもう興味はない。
それよりも残念な結果に落胆せざるを得なかった。
ローシュと私との婚約が、解消まで至らなかったのだ。
(まだ早かったわね)
早計だったことを悔やみ、私はため息をつく。
「このまま婚約は継続していく事となった。異論は、まだあるか?」
お父様もけして賛成しているわけではないのが分かる。
苦々しい言葉と表情に少しだけ気持ちが救われるが、だからと言って浮上出来るわけではない。
「お父様のいう事に従います」
そう伝える以外なく、私は静かに頭を下げて退室した。
またこの何とも言えない関係性が続いていくのかと思うと、げんなりとしてしまう。
だが意外と早くその事は撤回され、そして婚約解消の場を設けられた。
「エカテリーナ。婚約解消を受け入れるよ」
お互いの家族が集まるこの場で、ローシュはいつものおっとりとした口調で話す。
今いるのは王城の応接室だ。
私の父と兄、そして侍女と護衛。
そしてローシュの両親こと国王夫妻とカルロス様、そして侍女や近衛騎士達が揃っている。
他にも見届け人として宰相と騎士団長、書類作成のために弁護士もいる。
豪勢な面子だわ。
本格的な婚約解消がこれで始まると思うと胸が躍るわね。
「僕もね、無理に婚約を継続して嫌な思いをさせたいわけではないんだ。でもエカテリーナ、本当に後悔しない?」
探る様な目線を私に向けてくる。
「解消という事だけれど、一般的に言えば女性側である君には瑕疵がつく。それにこう言ってはあれだけれど……少なからず顔に傷もついているよね。覚えた知識も教養も以前の半分も取り戻せていない中で、王家の庇護下を抜けるようになるけれど、本当にいいの?」
心配しているようにも聞こえるけれど、引き止めようとしているのかしら。
「まぁ何を言われようと君から解消を言われたのだから、戻るつもりはないけれど。そこまでの覚悟があるのかの確認をしたくてね」
引き止めではなかったようだ。
そうなると利点を話し、私から残るように縋らせようとしたのかしら。
それならばもっと交渉について学ぶべきだし、そして下調べもしないと駄目よ。
ローシュ、あなた勘違いをしているわ。
「ローシュ、何を言う。エカテリーナ嬢はお前の為に体を張って、命を賭けて守ってくれたのだ。婚約解消しても王家はブルックリン侯爵の後ろ盾となって、動いていく所存だ」
陛下の言葉にローシュは驚いていた。
「慰謝料で済ませて終わり、ではないのですか?」
私とすっぱりと縁が切れるとでも思っていたのだろうか。
こんな大ごと、お金だけで終わる話ではないわよ。
(私の功績も考えればわかるはずなのに)
そんな不誠実な態度を取ったら他の貴族からの信用は落ちるもの、そんな事を陛下が許すはずがないわ。
信用を失うのは早いが、得るには数十倍の労力が必要なんだから。
我がブルックリン家と、そして王家も調査に乗り出して、ローシュのこれまでの素行が調べ上げられる。
婚約者を大事にしない、世話を丸投げ、下位貴族であるフロルとはよく話をする姿が見かけられていた。
だが、二人きりという事はなく、必ず他の誰かもいる時に話をしていたようで、その為に浮気とは言えないという結論になった。
でも彼女が侯爵令嬢である私を蔑むような言葉を発したのは事実なので、その点については罰を与える事が決まる。
貴族にとって誇りや矜持は大事なもので、貶されたのに放置はまずない。そして一度出した言葉は戻らない。
フロルの言ったこと、行なったことは許せるものではないし、私は王族の婚約者でもある。ブルックリン家だけでなく、王家をも侮辱したに等しい扱いだ。
フロルに関しては王家とお父様が何らかの事をするらしく、詳細は知らない。まぁ、結末は甘くはないだろうな。
そちらについてはもう興味はない。
それよりも残念な結果に落胆せざるを得なかった。
ローシュと私との婚約が、解消まで至らなかったのだ。
(まだ早かったわね)
早計だったことを悔やみ、私はため息をつく。
「このまま婚約は継続していく事となった。異論は、まだあるか?」
お父様もけして賛成しているわけではないのが分かる。
苦々しい言葉と表情に少しだけ気持ちが救われるが、だからと言って浮上出来るわけではない。
「お父様のいう事に従います」
そう伝える以外なく、私は静かに頭を下げて退室した。
またこの何とも言えない関係性が続いていくのかと思うと、げんなりとしてしまう。
だが意外と早くその事は撤回され、そして婚約解消の場を設けられた。
「エカテリーナ。婚約解消を受け入れるよ」
お互いの家族が集まるこの場で、ローシュはいつものおっとりとした口調で話す。
今いるのは王城の応接室だ。
私の父と兄、そして侍女と護衛。
そしてローシュの両親こと国王夫妻とカルロス様、そして侍女や近衛騎士達が揃っている。
他にも見届け人として宰相と騎士団長、書類作成のために弁護士もいる。
豪勢な面子だわ。
本格的な婚約解消がこれで始まると思うと胸が躍るわね。
「僕もね、無理に婚約を継続して嫌な思いをさせたいわけではないんだ。でもエカテリーナ、本当に後悔しない?」
探る様な目線を私に向けてくる。
「解消という事だけれど、一般的に言えば女性側である君には瑕疵がつく。それにこう言ってはあれだけれど……少なからず顔に傷もついているよね。覚えた知識も教養も以前の半分も取り戻せていない中で、王家の庇護下を抜けるようになるけれど、本当にいいの?」
心配しているようにも聞こえるけれど、引き止めようとしているのかしら。
「まぁ何を言われようと君から解消を言われたのだから、戻るつもりはないけれど。そこまでの覚悟があるのかの確認をしたくてね」
引き止めではなかったようだ。
そうなると利点を話し、私から残るように縋らせようとしたのかしら。
それならばもっと交渉について学ぶべきだし、そして下調べもしないと駄目よ。
ローシュ、あなた勘違いをしているわ。
「ローシュ、何を言う。エカテリーナ嬢はお前の為に体を張って、命を賭けて守ってくれたのだ。婚約解消しても王家はブルックリン侯爵の後ろ盾となって、動いていく所存だ」
陛下の言葉にローシュは驚いていた。
「慰謝料で済ませて終わり、ではないのですか?」
私とすっぱりと縁が切れるとでも思っていたのだろうか。
こんな大ごと、お金だけで終わる話ではないわよ。
(私の功績も考えればわかるはずなのに)
そんな不誠実な態度を取ったら他の貴族からの信用は落ちるもの、そんな事を陛下が許すはずがないわ。
信用を失うのは早いが、得るには数十倍の労力が必要なんだから。
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