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第15話 友人
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……まぁローシュの命令でも異性と二人は良くないわけで。
「エカテリーナ侯爵令嬢は病気を理由にローシュ殿下という婚約者がいながらも、彼の側近を誑かしている」
何ていわれてるらしい、おかしいものだ。
(ローシュが私の世話をしてくれないのが悪いのに、何で私が悪いようになるの?)
そこは本当に理不尽だ。
男性よりも女性の方がこういう時に悪く言われるものだけれど、これは悪意をもってばら撒かれているとしか思えないわ。
だって私がローシュに拒否されているのは見ていればすぐにわかるはずだもの。
一応ローシュの元へ毎回教えを乞いにいって、敢えて断られてから仕方無しといった雰囲気を醸し出しつつ、困った顔でリヴィオに聞きにいっているのだから。
少なくとも同級生は絶っ対にその場面を見てる。
(なのに何故そのような噂が?)
口さがない噂が回るようになったから、それを否定する為に朝と帰り以外にもポエットに側にいてもらうようにした。
表向きはやはり学園生活が不安だから特別に許可を頂きたいと訴えて。
「エカテリーナ様、大丈夫ですか?」
「疲れましたか? 医務室にでも行きますか?」
気遣わしく声をかけてくれるポエットと、二人きりではない為に普通に話してくれるリヴィオに癒やされつつ、私は元気に頷く。
「二人がいるのだから、平気よ」
本心だ。
それなのに二人は、「健気に逆境に耐えるエカテリーナ」を憐れみ、優しい目を向けてくる。
その思いやりが嬉しいけれど、ほんのり罪悪感も感じてしまう。
(あぁ、早く婚約解消してくれないかなぁ)
そうしたら記憶を取り戻した振りをして、さっさと以前のように自由に行動するのに。
「あの、エカテリーナ様」
その懐かしい声に私は視線を向けた。
「あなたは?」
一応知らない振りをしてそう聞いてしまった。
「ご歓談中、申し訳ございません。私はルマンダ伯爵の長女、ペイルと申します」
キビキビとした綺麗な仕草で礼をされ、私は笑顔になる。
(相変わらずカッコいいわね)
無駄のない動きと切れ長の目の友人は少し緊張した面持ちであった。
「ペイル様。私はエカテリーナ=ブルックリンと申します」
「知っています。以前は、よくお話をさせて頂きましたので」
「あの、私の間違いでなければ、お見舞いの手紙を下さった方、ですよね?」
それを伝えるとペイルは笑顔になった。
「そうなのです! 手紙は送ったものの、お忙しいと思い屋敷までは訪ねることが出来なくて。久々に学園に来て戸惑っているエカテリーナ様を見て、急に近づいては余計混乱されるかと思い、声を掛けるのも憚られ……でもローシュ様があまりにもエカテリーナ様に消極的だったものですから、それならばわたくしが是非にと思いまして、声を掛けさせてもらったのです」
最初は遠慮がちな声掛けだったのに、手紙の事を言ったら、一気にペイルは捲し立てて来た。
きっと彼女も記憶喪失の私に戸惑って、どう近づいていいのかわからなかったのだろう。
「それは、ペイル様が色々と教えてくれるという事ですか?」
そうであれば今後かなり動きやすくなる。
期待を込めて言うと、ペイルは是非にと言わんばかりにこくこくと頷いた。
「えぇ。わたくしで良ければ」
私はとても嬉しくなったわ。
こうしてペイルが側にいてくれればとても心強いし、周囲の誤解も解けるかも。
いや、解けなくても再び友人になれたのだからこのままでいいや。
「友達が出来るなんて……とても嬉しいです」
今のエカテリーナに友達はいない。
記憶もないし、王子からは冷遇されているしで近づくものは居なかった。
皆少し距離を置いて様子を伺うくらいしかしないから、居心地はとても悪い。
(以前からペイルは良い子だったけれど、こうして話しかけに来てくれるなんて、やっぱり良い子だわ。頼りになる)
今の私と仲良くなるのは何のメリットもないのに、寧ろ王子の不興を買う恐れもある中で話しかけに来てくれるなんて。
もしもペイルに何かいう者がいれば、絶対に許さないわ。
「エカテリーナ侯爵令嬢は病気を理由にローシュ殿下という婚約者がいながらも、彼の側近を誑かしている」
何ていわれてるらしい、おかしいものだ。
(ローシュが私の世話をしてくれないのが悪いのに、何で私が悪いようになるの?)
そこは本当に理不尽だ。
男性よりも女性の方がこういう時に悪く言われるものだけれど、これは悪意をもってばら撒かれているとしか思えないわ。
だって私がローシュに拒否されているのは見ていればすぐにわかるはずだもの。
一応ローシュの元へ毎回教えを乞いにいって、敢えて断られてから仕方無しといった雰囲気を醸し出しつつ、困った顔でリヴィオに聞きにいっているのだから。
少なくとも同級生は絶っ対にその場面を見てる。
(なのに何故そのような噂が?)
口さがない噂が回るようになったから、それを否定する為に朝と帰り以外にもポエットに側にいてもらうようにした。
表向きはやはり学園生活が不安だから特別に許可を頂きたいと訴えて。
「エカテリーナ様、大丈夫ですか?」
「疲れましたか? 医務室にでも行きますか?」
気遣わしく声をかけてくれるポエットと、二人きりではない為に普通に話してくれるリヴィオに癒やされつつ、私は元気に頷く。
「二人がいるのだから、平気よ」
本心だ。
それなのに二人は、「健気に逆境に耐えるエカテリーナ」を憐れみ、優しい目を向けてくる。
その思いやりが嬉しいけれど、ほんのり罪悪感も感じてしまう。
(あぁ、早く婚約解消してくれないかなぁ)
そうしたら記憶を取り戻した振りをして、さっさと以前のように自由に行動するのに。
「あの、エカテリーナ様」
その懐かしい声に私は視線を向けた。
「あなたは?」
一応知らない振りをしてそう聞いてしまった。
「ご歓談中、申し訳ございません。私はルマンダ伯爵の長女、ペイルと申します」
キビキビとした綺麗な仕草で礼をされ、私は笑顔になる。
(相変わらずカッコいいわね)
無駄のない動きと切れ長の目の友人は少し緊張した面持ちであった。
「ペイル様。私はエカテリーナ=ブルックリンと申します」
「知っています。以前は、よくお話をさせて頂きましたので」
「あの、私の間違いでなければ、お見舞いの手紙を下さった方、ですよね?」
それを伝えるとペイルは笑顔になった。
「そうなのです! 手紙は送ったものの、お忙しいと思い屋敷までは訪ねることが出来なくて。久々に学園に来て戸惑っているエカテリーナ様を見て、急に近づいては余計混乱されるかと思い、声を掛けるのも憚られ……でもローシュ様があまりにもエカテリーナ様に消極的だったものですから、それならばわたくしが是非にと思いまして、声を掛けさせてもらったのです」
最初は遠慮がちな声掛けだったのに、手紙の事を言ったら、一気にペイルは捲し立てて来た。
きっと彼女も記憶喪失の私に戸惑って、どう近づいていいのかわからなかったのだろう。
「それは、ペイル様が色々と教えてくれるという事ですか?」
そうであれば今後かなり動きやすくなる。
期待を込めて言うと、ペイルは是非にと言わんばかりにこくこくと頷いた。
「えぇ。わたくしで良ければ」
私はとても嬉しくなったわ。
こうしてペイルが側にいてくれればとても心強いし、周囲の誤解も解けるかも。
いや、解けなくても再び友人になれたのだからこのままでいいや。
「友達が出来るなんて……とても嬉しいです」
今のエカテリーナに友達はいない。
記憶もないし、王子からは冷遇されているしで近づくものは居なかった。
皆少し距離を置いて様子を伺うくらいしかしないから、居心地はとても悪い。
(以前からペイルは良い子だったけれど、こうして話しかけに来てくれるなんて、やっぱり良い子だわ。頼りになる)
今の私と仲良くなるのは何のメリットもないのに、寧ろ王子の不興を買う恐れもある中で話しかけに来てくれるなんて。
もしもペイルに何かいう者がいれば、絶対に許さないわ。
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