【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。

しろねこ。

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第11話 復学

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 久しぶりの登園の朝、私の屋敷の外には王家の紋が入った馬車がきた。

 しかしローシュが乗るにしては少し見劣りするような……?

 そう思ったのだが、予感は的中する。

「ローシュ様はまだ体調が優れず、学園にてエカテリーナ様をお待ちしています」
 申し訳ありませんと、リヴィオが深々と頭を下げる。

「私のところに寄ってからの登園だと、長い時間馬車に揺られることになりますからお辛いですよね。仕方ありませんわ」
 以前朝が苦手とも言っていたし、そういうのもあってだろう。私は仕方ない事だと言葉では許し、リヴィオの顔を上げさせる。

(上手く口実を作るものね)
 またまた気持ちはマイナスに傾くが、婚約の解消にはまだ弱い。

 地道にこういう事を記録していき、実績を積み上げてもらおう。

「でもリヴィオ様が来てくれて嬉しいわ。ずっと私を励ましてくれていたあなたが一緒なら、学園生活も楽しみです。頼りにしていますよ」

「お、俺なんかでよければ」
 リヴィオが照れたようにそう言って俯いてしまう。

「ポエットもありがとう。二人がいるから私も安心して過ごせるのです。今日から改めてよろしくね」

「あたしもエカテリーナ様が快適に過ごせるように頑張ります。よろしくお願いします」
 ポエットは握り拳をつくり、やる気だと見せてくれる。

 日が経つにつれ、私と二人の関係はどんどん深まった。
 遠くの婚約者よりも近くの従者ね。

 手紙だけのやり取りよりもこうして毎日顔を合わせ、話をしてくれる人の方がやっぱり信頼できるもの。

「ねぇ、学園につくまで二人とも一緒の馬車に乗ってくれる? 話でもしていないと緊張しちゃって仕方ないの。お願い」
 両手を胸の前で組み、二人にお願いをする。

 この仕草も以前の私ではしたことがないし、このようなお願いもしたことはなかった。

 完璧な淑女から遠ざかれば遠ざかるほど記憶喪失だという事がリアルになると思っての事だが、そろそろ以前の自分の事を本気で忘れそうになってくる。

「「わかりました」」
 ポエットは笑顔で、リヴィオは体裁を気にしつつ渋々了承してくれる。

(二人きりではないのにリヴィオも真面目ね)
 私が婚約者以外の男性と過ごすことは外聞が悪いと考えているのだろう。

 しかし彼を寄こしたのは婚約者のローシュなのだから、責められるとしたらローシュだ。

 それに私自身はローシュよりもリヴィオがいいので、この状況は嬉しい。
 おかげで学園につくまで楽しく過ごせたわ。


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