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第5話 最悪なデート
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「次はどこにいこうか?」
「そうですね、どうしましょ」
悩む素振りを見せつつも、私は内心うんざりとしていた。
(もう家に帰りたい!)
ローシュ殿下にチーズは苦手だと改めて話し、ベリーのタルトを頼む。
美味しかったし、店の雰囲気も良かった。
残念だったのはローシュ殿下の話題だ。
彼は一生懸命に最近親しくなった友人たちの話を色々としてくれた
どこそこの誰は面白いとか、誰々は情報通だとか。
私はにこにことして聞いているが、とても興味がない話題だ。
(婚約者に対して他の女性の話を延々とするなんて、この人こんなにお話下手だったかしら)
これはもう私を嫌っているとしか思えない。
「君もぜひ話をしてみるといいよ」
「はぁ」
あなたはまず目の前の婚約者と真剣に話をした方がいいと思いますよ。
婚約者の好きなものも忘れ、友人と称する女性の好物を嬉々として報告する事の、何が面白いのかしら。
(ポエットとリヴィオも能面のような顔をしているけれど)
最近の彼らはいつも疲れた顔をしている。
きっと私が話をしたから一生懸命に軌道修正をしているのだけど、聞いてくれないのだろう。
だってローシュ殿下、最近は自分の周りを学園で新たに知り合った側近候補たちで固めていて、ポエットはともかくリヴィオとも距離を置いているもの。
そのおかげでリヴィオは私の護衛に回ることが多くなったし、ポエットも前以上に側であれこれ世話をしてくれるから、そこは嬉しいわ。
「とりあえず少し歩いてみよう、気になるお店があれば入ってみればいいよ」
そう言ってローシュ殿下は歩き出す。
(エスコートもないなんて、寂しいわね)
婚約者だから手を繋いでもいいのになんて思ったが、期待するだけ無駄だ。
周囲の店をみながら私はローシュ殿下の後ろをついていく。
段々と店の数が減り、人影もまばらになる。
「殿下?」
「道に迷ったみたいだ。引き返そうか」
すっかり人通りのないところに入ってしまったようだ。
リヴィオは腰の剣に手を当てて警戒している。
「一旦大通りに戻ろう、そうすればきっとわかるはず……」
そう言ったローシュ殿下の頭上から矢が降ってきた。
素早く反応したリヴィオの一閃で、矢は誰にも当たる事もなく地面に落ちた。
「囲まれたな……」
リヴィオが口元を歪め、吐き捨てるように言った。
私達の周りにはいかにもという男達がいる。
ベタだなぁって感じの人相の悪い者達一斉に襲い掛かってきた。
「そうですね、どうしましょ」
悩む素振りを見せつつも、私は内心うんざりとしていた。
(もう家に帰りたい!)
ローシュ殿下にチーズは苦手だと改めて話し、ベリーのタルトを頼む。
美味しかったし、店の雰囲気も良かった。
残念だったのはローシュ殿下の話題だ。
彼は一生懸命に最近親しくなった友人たちの話を色々としてくれた
どこそこの誰は面白いとか、誰々は情報通だとか。
私はにこにことして聞いているが、とても興味がない話題だ。
(婚約者に対して他の女性の話を延々とするなんて、この人こんなにお話下手だったかしら)
これはもう私を嫌っているとしか思えない。
「君もぜひ話をしてみるといいよ」
「はぁ」
あなたはまず目の前の婚約者と真剣に話をした方がいいと思いますよ。
婚約者の好きなものも忘れ、友人と称する女性の好物を嬉々として報告する事の、何が面白いのかしら。
(ポエットとリヴィオも能面のような顔をしているけれど)
最近の彼らはいつも疲れた顔をしている。
きっと私が話をしたから一生懸命に軌道修正をしているのだけど、聞いてくれないのだろう。
だってローシュ殿下、最近は自分の周りを学園で新たに知り合った側近候補たちで固めていて、ポエットはともかくリヴィオとも距離を置いているもの。
そのおかげでリヴィオは私の護衛に回ることが多くなったし、ポエットも前以上に側であれこれ世話をしてくれるから、そこは嬉しいわ。
「とりあえず少し歩いてみよう、気になるお店があれば入ってみればいいよ」
そう言ってローシュ殿下は歩き出す。
(エスコートもないなんて、寂しいわね)
婚約者だから手を繋いでもいいのになんて思ったが、期待するだけ無駄だ。
周囲の店をみながら私はローシュ殿下の後ろをついていく。
段々と店の数が減り、人影もまばらになる。
「殿下?」
「道に迷ったみたいだ。引き返そうか」
すっかり人通りのないところに入ってしまったようだ。
リヴィオは腰の剣に手を当てて警戒している。
「一旦大通りに戻ろう、そうすればきっとわかるはず……」
そう言ったローシュ殿下の頭上から矢が降ってきた。
素早く反応したリヴィオの一閃で、矢は誰にも当たる事もなく地面に落ちた。
「囲まれたな……」
リヴィオが口元を歪め、吐き捨てるように言った。
私達の周りにはいかにもという男達がいる。
ベタだなぁって感じの人相の悪い者達一斉に襲い掛かってきた。
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