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第2話 違和感

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「うん、良く似合っている」
 次の茶会の時にはローシュに送られたものと、似たようなものを身につけてみた。

 試すようで悪いが、似て異なるデザインのドレスを身につけてきたのだが、ローシュは気づいていない。

 侍従たちは気づいて俯くばかりだが、別に意地悪でそうしたわけではないのだ。

(愛がないならばないなりに振舞えるもの)
 私としても別にその事を咎めるつもりはない。

 ただ事実確認をしたかっただけだ。

「ローシュ様のセンスが良いのです、ありがとうございます」
 笑顔でお礼を言って、侍従たちにも笑顔を向ける。

(心配することはないわ。別にそのくらいの事で目くじらは立てないもの)
 寧ろ試すようなことをして悪いとも思っている。

 それからはローシュがプレゼントを勘違いしたりしなかったりで、そのたびに私は「さすが殿下からの贈り物です」と感謝を伝え、お礼をいっぱい伝えた。

 だって忙しいのに私の為に買ってきてもらうよう手配しているのだから、それはそれで嬉しい。

(これくらいならまだ大丈夫、いい結婚になるわ)
 嫌われてるわけではないし。

 そう思っていたのに、学園に入学してからまたローシュは変わってしまった。

 悪い方へと。





「学園は楽しいね」
 一定の年齢になると貴族の子息・息女は学園へと入る。

 勉学に励むためというのもあるが、本格的な社会に出る前の、プチ社交界経験を得るために、入ることが義務付けられているのだ。

 そこでローシュはモテた。
 モテて、大きく道を逸れてしまった。

 普通に考えれば王族の側につきたいと思う者は多い。

 しかし話す機会はなかなか訪れないものだ。

 それが学園という場所のお陰で距離が縮まり、話しかけやすくなった。

 もちろん善意ばかりの者ではないので、敎育係に近づきすぎないようにとは言われてはいたが、それでもローシュは浮かれてしまった。

 今まで病弱ゆえに思うように動けなかった事、そして第二王子として働きも期待されていなかった事で、頼りにされるという感覚に嬉しくなったようだ。

「甘言に惑わされ、大事なことを見誤るなよ」
 兄のカルロスは心配で何度もローシュに言ってくれていたが、それを真面目に聞くことはなかった。

「恵まれた兄様にはわからないよ」
 皆が自分をちやほやして、話しかけて来てくれる。

 王城に居る時とは大違いなのだから。

(折角カルロス殿下が忠言なさってくれたのに)
 兄の言葉も聞いてくれないローシュ殿下に私はまた幻滅することとなった。



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