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嘘八百

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「ミューズ様、進みましたか?」
マオがカレンと話し終わったあと、急いでミューズのもとに来る。

「マオ、今の話は…」
青ざめているミューズと怒りの空気を纏う使用人達、皆話を聞いていたのだ。
そんな中しれっとマオは言う。

「今の話はほぼ嘘です。追い返すためのものですよ」
せっかく僕が引き留めていたのに進んでないじゃないですかとぼやきながら、マオは手を動かしていく。

「あんな女、うちのエリック様が相手にするわけありません。追い出した後気持ち悪くなって嘔吐までしたんですよ、婚姻なんてあり得ない」
ゲーッと吐く真似をして、おどけてみせる。

「ここの荷物はミューズ様の大事な思い出が詰まっているでしょ?一つだって渡すわけにはいかない」
そのためにマオが遣わされたのだ。

「でも私のためにあんなにたくさんの宝石まで用意するなんて…」
本当はカレンが大事なのではないかと疑ってしまう。

「あれは我が国自慢のイミテーションです、つまり模造品。おもちゃみたいなものですね」

宝石の目利きができるものからしたら価値などほぼない。

「劣化も早いし、試作段階なんですよね。本物を知ってる人なら見抜けるほど技術はまだ拙いです」
試しにと一つミューズに手渡してみる。

よくよく見ると継ぎ目があったり、軽い。
削りも粗いからか触り心地も今ひとつだ。

「追い返すためとはいえ、ミューズ様への数々の暴言大変申し訳ございませんでした。あなたは我が国にとってとても大切な花嫁です。聞いていたあなたの心を深く傷つけてしまいました。本国へ戻り次第相応の罰を受ける覚悟です」

深々と頭をさげ、そして低い声でそう告げる。本気でマオはそう考えているのだ。

「罰だなんて、あれはカレンを追い返すためのものでしょう」
「だとしても私は言ってはいけないことを口にしたのです。陛下に報告をし、罰を受けねば気が済みません。
あっ、でもティタン様には言わないで欲しいです、下手したら罰どころか殺されちゃいますので」
真面目な口調から一変したマオの様子にくすっとミューズが微笑む。
その美しさは先程の義妹とは全然違う。

(マジで女神だな、この人)
生まれた時からあらゆる教養を身につけてきたのだろう、洗練さが違う。
「あと、愛する人がいるというくだりも秘密にしてほしいのです。言ったら陛下にも殺されちゃいます」

命が幾つあっても足りないやとマオは肩を竦める。

「どなたの事でしょう?」
秘密という事は本当だということだ。

あのエリックが王妃に相応しいとされる人物は一体誰なのか、すごく気になった。

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