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第76話 確信
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「急な訪問とは随分不躾じゃのう」
妾は目の前の若造、リーヴを睨みつける。
(こやつが急に来るからソレイユに会いに行けなくなったではないか)
苛立ちと、そして幾ばくかの不安が内心で渦巻く。
海底界の者達が来たのは、ソレイユがここに戻って来てすぐの事だ。
ソレイユ達のいる建物とは違う所の応接室に通したが、まさかソレイユの存在がばれたというわけではなかろうな。
「申し訳ございません。気になる事を耳にしたものですからつい飛んできてしまいました」
口調は丁寧だが、その目は笑ってはいない。
「地母神様。地上界の神、シェンヌが僕を攻撃してきたことはご存知ですよね?」
「その件については知っているし、申し訳なくは思うが……シェンヌからの話も聞かねば何とも言えぬ」
シェンヌが攻撃した事実は確かなものの、動機については詳しく知らない。
(何故シェンヌはリーヴと、そしてルナリアを攻撃した? こ奴らが先に何かをしたのではないか?)
元々大人しい性格の子だ、何か大きな理由があるとしか思えぬのだが……
「シェンヌはですね、ソレイユの事が好きなんだそうですよ」
「は?」
唐突にそんな事を言われて、呆気にとられる。
(確かにソレイユは魅力的だが、それが何故、リーヴへの攻撃につなが?……いや、違うな)
シェンヌが攻撃したのはルナリアだ。
嫉妬からか。
「それが何故リーヴ殿への攻撃につながるのじゃ? 妾にはよくわからぬのう」
ソレイユとルナリアの関係は公には出ていない。ここは知らない振りをしたほうが良いであろうか。
「シェンヌの攻撃対象は最初ルナリアでした。そのルナリアを庇う僕が邪魔となり、矛先が変わったのです。まぁ攻撃を仕掛けてきたのがシェンヌというのは間違いないですが」
そこだけは変わらぬ事実ではあるな。
「こちらの非じゃな、申し訳ない。後日改めてそちらに詫びをしに行かせてもらう、海王神とも話をしたいしな。本日はこのような辺鄙なところにまで来てもらい、すまなかった。手土産を渡す故、今日はこれ以上の話は勘弁してもらいたい」
すぐに神人にリーヴへの手土産の手配を命ずる。
「ご足労を掛けたな、道中気を付けるがよい」
「いやだなぁ、話はまだ途中ですよ。地母神様」
リーヴは笑みを浮かべ、ソファに座ったままだ。
「僕を帰したい気持ちはわかりますが、そう露骨ですと色々と勘ぐってしまいますよ。まぁ今日はその疑惑を晴らすためにここに来たのですが」
「疑惑じゃと?」
本当に面倒な童じゃ。一体何を言う気なのか。
「シェンヌがルナリアを襲った動機すら、僕は話していないのですよ。気になったりしませんか?」
「……一体何だというのじゃ」
知っていて聞くというのは何とも白々しい事だ。
「シェンヌはソレイユの事が好きだから、ルナリアに嫉妬し、攻撃をしたのだそうですよ。でもこれっておかしくありませんか? ルナリアはソレイユの異母妹。仲良くすれば彼に近づけるかもしれないし、話も聞けるかもしれない。普通ならそう考えると思うのですが」
「女兄弟ゆえにではないのか? 恋人を除けば、一番近い異性じゃからのう。仲良くしたいがソレイユの側いる女は許せないといったものか。女というものは複雑で単純じゃからな」
そのように思うものも少なからずいるので、それくらいは不自然ではないと思ったが。
「恋人、ですか」
迂闊にしゃべり過ぎたか。リーヴが踏み込んで来る。笑みも強くなった。
「地母神様、もしやご存じだったのですか? ルナリアはソレイユと恋仲だったそうですよ。異母兄妹という関係ながらも恋をしていたそうです」
「まさか……!」
驚くふりをしてリーヴから目をそらす。これ以上情報を与えてはまずい。
「天空界での一幕の時、あなたは居なかったから詳しくはご存じないのでしょうか」
「初耳じゃ」
妾の言葉を聞いてリーヴは首をかしげる。
「地上界の最高神である地母神様が、知らなかったなんて」
「あの時は姪の出産が重なり行くのも遅くなってしもうたからの。そんな事になっているとは露知らずじゃ」
「で、あるならばなぜシェンヌは知っていたのでしょうか?」
「シェンヌは誰かから聞いたのではないか? 天空界の神とかの。全くの無交流というわけでもないし、あり得ないことではないじゃろ」
「おかしいですね。仮に誰かに聞いたとしても、そんな重大な話を地母神様に話さないなんてあり得ないでしょう。それにシェンヌは自ら言いましたよ。ソレイユから聞いたと」
「ソレイユは、死んだと聞いておる。それこそシェンヌの勘違いではないのか?」
リーヴが何をしに来たのかわかった。こ奴、ソレイユの生存確認の為にここに来たのじゃな。
「勘違いで殺しにかかってくるなんて、それこそあり得ないでしょう。それに詳しく聞いたところ、ソレイユ本人に会ったのは間違いなさそうなのですよ。だからあなたに聞きに来たのです。この地上界を統べるあなたなら、本当に事を知っているでしょう」
リーヴは真っ向から妾の目を見据える。
言い逃れなど許さんとばかりに。
「ソレイユはどこですか」
妾は目の前の若造、リーヴを睨みつける。
(こやつが急に来るからソレイユに会いに行けなくなったではないか)
苛立ちと、そして幾ばくかの不安が内心で渦巻く。
海底界の者達が来たのは、ソレイユがここに戻って来てすぐの事だ。
ソレイユ達のいる建物とは違う所の応接室に通したが、まさかソレイユの存在がばれたというわけではなかろうな。
「申し訳ございません。気になる事を耳にしたものですからつい飛んできてしまいました」
口調は丁寧だが、その目は笑ってはいない。
「地母神様。地上界の神、シェンヌが僕を攻撃してきたことはご存知ですよね?」
「その件については知っているし、申し訳なくは思うが……シェンヌからの話も聞かねば何とも言えぬ」
シェンヌが攻撃した事実は確かなものの、動機については詳しく知らない。
(何故シェンヌはリーヴと、そしてルナリアを攻撃した? こ奴らが先に何かをしたのではないか?)
元々大人しい性格の子だ、何か大きな理由があるとしか思えぬのだが……
「シェンヌはですね、ソレイユの事が好きなんだそうですよ」
「は?」
唐突にそんな事を言われて、呆気にとられる。
(確かにソレイユは魅力的だが、それが何故、リーヴへの攻撃につなが?……いや、違うな)
シェンヌが攻撃したのはルナリアだ。
嫉妬からか。
「それが何故リーヴ殿への攻撃につながるのじゃ? 妾にはよくわからぬのう」
ソレイユとルナリアの関係は公には出ていない。ここは知らない振りをしたほうが良いであろうか。
「シェンヌの攻撃対象は最初ルナリアでした。そのルナリアを庇う僕が邪魔となり、矛先が変わったのです。まぁ攻撃を仕掛けてきたのがシェンヌというのは間違いないですが」
そこだけは変わらぬ事実ではあるな。
「こちらの非じゃな、申し訳ない。後日改めてそちらに詫びをしに行かせてもらう、海王神とも話をしたいしな。本日はこのような辺鄙なところにまで来てもらい、すまなかった。手土産を渡す故、今日はこれ以上の話は勘弁してもらいたい」
すぐに神人にリーヴへの手土産の手配を命ずる。
「ご足労を掛けたな、道中気を付けるがよい」
「いやだなぁ、話はまだ途中ですよ。地母神様」
リーヴは笑みを浮かべ、ソファに座ったままだ。
「僕を帰したい気持ちはわかりますが、そう露骨ですと色々と勘ぐってしまいますよ。まぁ今日はその疑惑を晴らすためにここに来たのですが」
「疑惑じゃと?」
本当に面倒な童じゃ。一体何を言う気なのか。
「シェンヌがルナリアを襲った動機すら、僕は話していないのですよ。気になったりしませんか?」
「……一体何だというのじゃ」
知っていて聞くというのは何とも白々しい事だ。
「シェンヌはソレイユの事が好きだから、ルナリアに嫉妬し、攻撃をしたのだそうですよ。でもこれっておかしくありませんか? ルナリアはソレイユの異母妹。仲良くすれば彼に近づけるかもしれないし、話も聞けるかもしれない。普通ならそう考えると思うのですが」
「女兄弟ゆえにではないのか? 恋人を除けば、一番近い異性じゃからのう。仲良くしたいがソレイユの側いる女は許せないといったものか。女というものは複雑で単純じゃからな」
そのように思うものも少なからずいるので、それくらいは不自然ではないと思ったが。
「恋人、ですか」
迂闊にしゃべり過ぎたか。リーヴが踏み込んで来る。笑みも強くなった。
「地母神様、もしやご存じだったのですか? ルナリアはソレイユと恋仲だったそうですよ。異母兄妹という関係ながらも恋をしていたそうです」
「まさか……!」
驚くふりをしてリーヴから目をそらす。これ以上情報を与えてはまずい。
「天空界での一幕の時、あなたは居なかったから詳しくはご存じないのでしょうか」
「初耳じゃ」
妾の言葉を聞いてリーヴは首をかしげる。
「地上界の最高神である地母神様が、知らなかったなんて」
「あの時は姪の出産が重なり行くのも遅くなってしもうたからの。そんな事になっているとは露知らずじゃ」
「で、あるならばなぜシェンヌは知っていたのでしょうか?」
「シェンヌは誰かから聞いたのではないか? 天空界の神とかの。全くの無交流というわけでもないし、あり得ないことではないじゃろ」
「おかしいですね。仮に誰かに聞いたとしても、そんな重大な話を地母神様に話さないなんてあり得ないでしょう。それにシェンヌは自ら言いましたよ。ソレイユから聞いたと」
「ソレイユは、死んだと聞いておる。それこそシェンヌの勘違いではないのか?」
リーヴが何をしに来たのかわかった。こ奴、ソレイユの生存確認の為にここに来たのじゃな。
「勘違いで殺しにかかってくるなんて、それこそあり得ないでしょう。それに詳しく聞いたところ、ソレイユ本人に会ったのは間違いなさそうなのですよ。だからあなたに聞きに来たのです。この地上界を統べるあなたなら、本当に事を知っているでしょう」
リーヴは真っ向から妾の目を見据える。
言い逃れなど許さんとばかりに。
「ソレイユはどこですか」
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