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呪い返しと婚約解消

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「アルフレッド様、発言の許可を頂きたく思います」
ミューズの後ろに控えていたマオが手を上げる。

「許す。どうした? マオ」
国王アルフレッドは息子の従者に許可を出した。

皆の視線がマオに集中する。

「このまま婚約を交わすということは、呪いについては秘密にする、ということですよね?」

「そうなるな。サミュエルの存在を外に出したくないという理由もあるが」
アドガルムには呪いを解けるものがいると知られたら、サミュエルが狙われてしまう可能性もある。

呪いの力は危険性の高さに反して、認知度が低く、扱える者は更に少ない。

無理矢理にでもサミュエルを手に入れようとする者が出ても、おかしくないのだ。

「ではミューズ様を陥れた令嬢方の処罰について、お聞きしたいのです。このままアドガルムとしては済ますわけはないと思ってますが、どうするおつもりですか?」

「もちろん何らかの処分は秘密裏にする予定ではあるが、表立っては難しいだろう」
呪いの証拠を提出できない限り、令嬢方への処罰はアドガルムからは要求出来ない。

ミューズへの悪評を流した事や、ドレスを汚した罪くらいしか問い詰められないだろう。

あとは私刑という方法だ。

「重い処罰を望むです。ティタン様が見つけなければ、どうなっていたか、考えるだけでゾッとするです。そのような事をされてこのままとは、許せない」
たとえ表立った処罰は無理でも、裏でぜひ痛い目に合わせたいと、マオは訴えた。

「それは俺も同感です。父上、極刑を望みます。なんなら俺が手を下しに行きます」

「なら僕が手を下すので、ティタン様は大人しくしてて欲しいです。僕の手で復讐するので」

「俺がするから、マオがミューズと共に待っていてくれ」
お互い復讐をするのは自分だとヒートアップしていた。

「落ち着け、二人共。ミューズ嬢が困っているではないか」
アルフレッドがティタンとマオを諌める。

復讐の話となり、ミューズはおろおろしていた。

「二人共、何もそこまでしなくていいんですよ。こうして無事なんですから」

「「良くない」」
二人は声を揃えて言った。

「君は自分の魅力がわかってない。俺以外の男にでも見つかってたら危なかったんだぞ」

「あのような姿のミューズ様をそのままにしていくとは、非道にも程があるです。同じ目に合わせなきゃ許せないです」

「それ、出来るよ」
術師のサミュエルがマオの言葉を受けて、さらっと言った。

「準備は必要だけど、呪い返し出来る。そうすれば呪いをかけた者たちが同じ目に合うだけだ、誰も手を下したことにならない」
サミュエルは事もなげに言った。

「それならば、呪いの薬を作った者に行くのではないのか?」
エリックの疑問に首を横に振る。

「これだけ高度の呪いを作るものが、そんなヘマをするとは思えません。購入者、つまり実行者にその権利が移ります。呪いとは、本当に厭らしい力ですので」
サミュエルはまた床に座り込んだ。 

立っているだけで疲れたらしい。

「薬を作る時間と体力を回復させるために、少々お時間は頂きますが。呪いを返すタイミングをお教えくだされば、合わせます」
エリックは少し考えた。

「一週間後はどうだ。この城で婚約パーティを開こう。リンドールの貴族をひと通り招待する。件の令嬢も、ディエス殿もだ」
ミューズとマオを見た。

「マオとミューズ嬢は背丈が似てると言ったな。ヴェールやウィッグを被り入場や挨拶の際に身代わりとなってくれ。喋らなければバレないだろ」

「僕ですか?!」

「体型は、まぁ、胸は布を詰めればいけるだろ。母上、お揃いのドレスを一組用意してほしいです。体型の違いがばれづらいデザインがいいですね」
アナスタシアにも協力を仰ぐ。

「ふふ、マオにドレスなんて面白そうね」
やる気になっているようだ。

「当日は俺もレナンもサポートに入る。話しかけられたらフォローするが、ばらすタイミングをいつにするか」
口元に手を当てている。

「目立つとしたらダンスの時間ではないかしら? わたくしとマオが揃って中座し、そこでミューズ様の呪いを解いてもらって、ミューズ様と戻るのはどうでしょう?」
レナンの提案にエリックも頷く。

「ではそれで行こう。ティタンはどうだ?」
渋い顔をしている弟に声をかける。

「わかりました」
本当は婚約パーティをしたくなかったのだが、ミューズが受けた仕打ちを返せる場を作れるのはいいかもしれない。

そしてその勢いで婚約が駄目になる可能性もあると考えれば、ティタンにとっては悪いことではない。

「お待ち下さい、私は復讐を望んでおりません!」
あまりにも皆が賛同するものだから、ミューズは焦ってしまった。

言葉を挟む前に次々と皆が案を出すものだから、なかなか言い出せなかった。

「それに、そんな婚約パーティをしたいわけではありません……ティタン様との婚約なのだから、きちんとお披露目したいです」

折角憧れの人と婚約をするのだから、良いパーティにしたい。


「そうだな、すまない。復讐話に盛り上がってしまった」
ミューズの気持ちを置いてきぼりにしてしまった。

「改めてしっかりとしたパーティを開こう」

「……」
ティタンがその言葉を聞いて、顔を暗くしている。

少々気持ちが沈んでいるように感じられ、ミューズは気がかりになった。

ティタンは視線を感じ、誤魔化すように話す。

「ミューズ嬢の婚約パーティならば、きちんとしたものを挙げさせたい」
本心が洩れ出た。

「そうだな、案を変える。申し訳なかった」
エリックは素直に謝った。

ティタンはそうじゃないと言わんばかりに首を横に振った。

「俺との婚約パーティもしないということです。呪いを解いたら、ミューズ嬢との婚約解消を願います」






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