隣国が戦を仕掛けてきたので返り討ちにし、人質として三国の王女を貰い受けました

しろねこ。

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番外編:護衛術師兼薬師と新たな王宮医師②

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「もともと私はレベッカ先生の後任として王宮医師を継ぐ予定だったの。それで色々な経験を重ねるために、レベッカ先生と共に街で医師として働き、様々な人を診たわ」
 要するに実践を重ねていたわけだ。

「全く知りませんでした」

「シュナイ先生が言わなきゃわかるわけ無いもの、仕方ないわ。先の戦が終わり、殿下達も結婚したし、そろそろ王城に戻ろうかなって思ってたら、今度は帝国が攻めてきて……もう嫌になっちゃう」
 ジュエルは嘆息した。

「でもこうして来てもらい助かります。今後はレナン様達の診察もありますから」

「そのために学んできたのよ。さすがに普段の診察はシュナイ先生でもいいとして、出産に関することは任せられないから」

「なるほど。そう言う事でしたか」
 セシルは頷く。

 街で出産についてを直に学び、そして、あらゆるケースの出産に備えようと言う話だ。

 王族の出産は国の今後を左右する、とても重要なものだ。

「だから今日からよろしくね」
 
「えぇ。こちらこそよろしくお願いします」
 ニコリと微笑まれ、セシルも微笑み返した。





 そこからジュエルと共に働いたのだが、知らない事だらけでセシルは感動していた。

「ジュエル様は凄いですね。医師と名乗るのに僕はまだまだです」
 そう言いながらセシルは驕ることなく、そして卑屈にもならずに勉学に励む。

「そんなことない、セシルも凄いわよ。王子の護衛をしながら医師や薬師の勉強もしてるのだもの。寝る時間もないんじゃない?」

「そうですね。今はまだマシですが、昔は徹夜もあって。けれど兄弟子がいるので今も昔も耐えられます、彼が頑張ってるのだから、僕も頑張らないと」
 一人では挫けていたかもしれないけれど、同じ立場の者がいることで、励まされている。

 今は遠く離れているが兄として、また仲間として尊敬する気持ちを忘れてはいない。

 サミュエルを思い出し、思わず口元に笑みが浮かんでしまう。

「あなたは素直ないい子ね」
 ぽつりと呟いたジュエルの言葉にセシルは困ったような顔をする。

「必要に応じてこのような性格になったというか……僕が感情を素直に表さないと先生も義兄も察することも出来ないし、会話も続かない。はっきりと言わないと僕の家族は気づきませんから」

「そうね。あの二人はどちらも不器用だし、口数も少ないもの。あなたも苦労したわよね」
 ジュエルはセシルの大変さをわかってくれる。

「そう言ってくれるのはティタン様達以外で初めてです」
 ティタン達は勿論言わないが、他の者には結構八つ当たりをされていた。

 シュナイやサミュエルとの話では埒が明かないと、セシルが窓口となっていたが、時には暴言などもあった。

 腕があり王族の信頼が厚いシュナイに直接不満を言わず、若輩のセシルに当たるのは如何なものかとずっと耐えていたと、ついジュエルに漏らしてしまう。

「……それ、シュナイ先生にもレベッカ先生にも言ってないわよね」
 初めて聞くシュナイの性格の弊害に、ジュエルは心配した。

「そうですね。自分で跳ね返さないとと思って特に相談しませんでした。最近はそういう輩も減ってますし」
 年齢も実績も重ねたからか、認められたのか。
 余計な事を言うものは減ってきている。

「これからは私にしっかりと話しなさい。そういう者を野放しにしては、後継に響くから」
 セシルが蔑ろにされていた事にジュエルは憤る。

(こんな努力家でいい子を虐げるなんて、まったく頭の固い連中はこれだから嫌ね)
 一方セシルは困惑した表情をしている。

(後継か。その考えはなかったな)
 今の状況も昔からは考えつかないものだ。

 シュナイの跡を継ぐのはサミュエルだと思っていたし、ジュエルの事も知ってはいたが、レベッカの後継として一緒に働くとは考えていなかった。

 少し考えれば女医も必要だとわかることなのに思い至らず、相当頭の回りが悪くなっている気がする。

「ありがとうございます、ジュエル様。色々な事を気付かさせてくれて。今後も何がありましたらぜひ教えて下さい」
 自分はまだまだだとセシルは反省し、真っ直ぐにジュエルを見つめてお願いをする。

 やや顔を赤くしたジュエルは咳払いをし、セシルを見つめる。

「とりあえず不当なことを言われたら、すぐに私に相談してね。ちなみに、セシルは婚約者はいる?」
 探るように聞くと、セシルは首を横に振る。

「話は来ますが、まだ考えていないですね」
 セシルにも婚約の打診は来ているが、周囲の恋愛模様を見ていると、無理に決めることはないと考えさせられる。

 なので今は積極的に決めようとはしていない。

 それに今は仕事が忙しく、デートなども出来ない。夜中に呼び出される事もあるだろうし、仕事への理解をしてくれる女性だといいなと思う。

「年上は、嫌い?」

「そんな事はないです。お互いに尊敬できる間柄であれば、という思いです」
 微笑むセシルと、期待を持つジュエル。

 今は一方通行な想いだが、徐々に育まれるだろうか。




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