隣国が戦を仕掛けてきたので返り討ちにし、人質として三国の王女を貰い受けました

しろねこ。

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番外編:奥手な術師と積極的な魔道具師②

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「僕は平民出で大した人物でもない。でも君の為に、命も賭けられるし、僕の命に代えても助ける。絶対に」
 不器用な、辿々しい言葉だが、サミュエルは尚も言い募る。

「僕と結婚したら、帝国へと移住するようになるんだけれど、それでも君と一緒に行きたいんだ。君が側にいてくれると勇気が出るし、心も暖かくなる。そして、僕も、そんな存在になりたいと、思っているんだ。一生大事にするから、僕と来てくれませんか?」
 そこまで言って、ハッと何かを思い出したようにポケットの中から何かを取り出した。

「もし良かったらこれを、受け取って欲しい」
 出されたのはネックレスだ。

 この戦で買いに行くことは出来なかったので、前々から準備して渡せずにいたものだ。

 サミュエルの髪の色と同じ宝石がついている。

 しばし沈黙が流れ、ようやくシフが口を開いた。

「嬉しい……」
 シフの目から涙が溢れる。

「プロボーズなんてされないかと思ってた。だってなかなか会いに来てくれないし、不安だったわ」

「ご、ごめん」
 何回目の謝罪だろうか。

「いいわ、許してあげる。だからそのネックレスつけてくれる?」

「僕が?」
 シフに触れていいのだろうか。

「うん、サミュエルにお願いしたいの」
 そう言われ、シフの後ろに回った

 普段から髪をアップにしているため、細いうなじがあらわになっている。

 ぎこちない手で留め具を外し、白くきれいな肌に触れないように気をつけながらネックレスをつけた。

「嬉しい、ありがとう……」
 そう言うシフが耳まで真っ赤になっているのに気づく。

 サミュエルは勇気を出して後ろから抱きしめた。

「サミュ?」

「シフ、大好き。愛している」
 サミュエルは真っ赤になりながらも伝えたが、後ろからの為表情は見えない。

 主のリオンを見習い頑張って伝えたが、ここから先はどうしていいか分からず、二人とも動かない。

 やがて顔を赤くした二人はお互いを見つめ合い、手に触れ、嬉しそうに微笑み合った。

「私も愛しているわ。これから末永くよろしくね」
 金の瞳がサミュエルを映し、頬に口づけをされる。

 そんな大胆で恥ずかしい行いにサミュエルは目を白黒させ、床に座り込んでしまった。

 触れあう事すらまだ慣れていないのに、キスだなんてハードルが高すぎる。

 火照りと緊張と眩暈でサミュエルは立てなくなり、シフは慌ててシュナイを呼びに行ってしまった。

 そこで養父に結婚の報告をするという何とも恥ずかしい話になってしまったが、サミュエルを笑う者はいない。

 嬉しい祝福を受けて、帝国へ移るまでの数日、サミュエルは仮面を付けながらも漏れだす笑顔を隠せなくなっていた。

 その為、周囲の者からは不気味な笑顔を浮かべているという悪評を最後の最後まで受けてしまったが、もはや気にならない。

 わかってくれる者だけが知っていればいいのだという事に、ようやくサミュエルは気づけた。

 おかげでここを発つときは堂々と仮面を外すことも出来、リオンの側に控える事が出来た。

 容姿はシフやセシルにいじってもらい、多少見られるようにしてもらったから、初めてサミュエルを見た者からはどよめきが上がる。

「シフ、必ず幸せにするからね」

「はい」
 筆頭魔術師兼医師という、とても大変な立ち位置だが、義父のロキとも約束したのだから、頑張らなければいけない。

「俺様の娘を連れて行くんだ。けして不幸にするな、そして恥ずかしい思いをさせるなよ」
 それはサミュエルにもっと自覚を持てという事だろう。

 サミュエルの評価はそのままシフの評価となる。夫婦になるのだから一蓮托生だ。

 リオンの側近として仕えていた頃とは違う緊張感を感じる、今後は自分一人ではなく、家族が出来たのだから。

「僕は、もう自分を卑下しない。シフにとって誇れる男になるんだから」
 そんな思いを持って、リオンに従い帝国へと向かった。

 元々のサミュエルを知らない事と、そして多くの女性の契約魔法を優しく解除していたことから、サミュエルは存外にモテた。
 もともとの優しい性格と、穏やかな風貌、そして医師という立場もあってとてもモテる。

 シフが嫉妬したのは言うまでもない話であった。







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