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第186話 幸せの時間
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レナンは幸せだった。
アドガルム国はだいぶ落ち着いてきていて、周りも笑顔の者が増えている。
数年が立ち、街並みもすっかりと整えられて、もう戦の傷跡などないように思えた。
「あの時は全てが突然だったわね」
平穏が一気に崩れ去ったあの日の事は忘れることは出来ない。
突如戦の準備が始まり、瞬く間に戦争が始まった。
武器や鎧を身につけ、騎馬に乗り、騎士たちた出国していくのを見て、レナンは震えあがったのを覚えている。
戦をするという事は、人が死ぬという事。見知った者達が決意を込めて死地に向かう姿を見て恐ろしかった。
その中には異母兄のルアネドもいた。
彼は穏やかに微笑み、レナンにも行く前に挨拶にきてくれた。彼の婚約者である令嬢がしきりに泣いて何かを必死に伝えていた姿を鮮明に覚えている。
そんなルアネドが捕虜となって生きていると聞いた時は、自分の事のように嬉しかった。
アドガルムの慈悲に感謝をした。
そんなルアネドだが、今はパルス国国王となり奮闘している。そして当時の婚約者だった女性は王妃になった。
レナンは異母妹としてではなくアドガルム国の王太子妃として結婚式に参加したが、ルアネドの妻になるロゼッタはほわほわとした雰囲気の可愛らしい女性であった。
「実はロゼッタは不思議な力の持ち主でね、そのおかげでいつも助かっているんだ」
アドガルムとの戦でも帝国との戦でも命を落とさなかったのは、その不思議な力のお陰らしい。
「まぁ万能ではないけど、何かあったらすぐに知らせるからね」
と言われたが、どういった力かまでは教えてもらえなかった。
少なくともレナンのものとは違うらしい。無理に聞き出すのは良くないとして、詳しく聞くのは止めた。
そしてパルス国との交流も増え、エリックとルアネドはとても親しくなる。
お互いを呼び捨てにするくらい親密に。
「俺も混ぜてくれ」
その関係に嫉妬したグウィエンが、自分も仲良くなりたいと何度もアドガルムに来て大変であった。
数年の口説き落としでようやくエリックもグウィエンに呼び捨てを許可する。
もう少ししたら属国から同盟国くらいになれそうというのと、グウィエンも国王の座を奪う目処が立ったそうなので特別に、という事らしい。
「エリック様もなんだかんだでグウィエン様を嫌ってはなさそうだし」
物怖じもせずエリックを怖がりもしないグウィエンは、どことなくティタンに雰囲気も似ている。
それゆえか文句や愚痴は言いながらもそこまで突き放していない、ように見える。
まぁ相変わらずレナンを口説こうとするのは変わりないが、それはエリックが全力で止めていた。
いつか本気で氷漬けにされるのではと冷や冷やしてしまうが。
「レナン様。お茶をお淹れしましょうか」
物思いにふけっているとラフィアがそっと声を掛けてくれた。
幼い頃から一緒の優しい侍女だ。
政略結婚でアドガルムに来る際、母国から一緒についてきてくれた忠実なる女性である。そんな彼女も最近自分の幸せを掴み、笑顔が増えていた。
「ありがとう、頂くわね」
ラフィアがお茶の準備を始めたので、レナンも動かしていた手を止める。
可愛らしい、小さな産着を縫っていた。
赤ちゃんの肌はとても薄くデリケートなので、縫い目が皮膚に当たってこすれないよう注意する。
一番初めに作った時は四苦八苦したが、枚数を重ねるごとに手際が良くなり、形も整ってきた。
「とても可愛らしいデザインですね」
ラフィアがレナンの手にある産着を見る。
「今は出来ることが少ないし、つい張り切っちゃって」
大きなお腹を摩り、ゆったりとソファに凭れ掛かる。
最初の子の時よりはやや小さめだが、それでも赤子がいるとこんなに大きくなるのかと驚くほど大きい。
「最初が双子だった事もあって大きくなりやすいのかしら?」
優しく優しく我が子のいるお腹を撫でる。
「あなたはどんな子かしら。早く会いたいわね」
穏やかな笑みでそう呟くと、返事をするように中から押されるのを感じた。
ますますレナンの笑顔が深くなる。
アドガルム国はだいぶ落ち着いてきていて、周りも笑顔の者が増えている。
数年が立ち、街並みもすっかりと整えられて、もう戦の傷跡などないように思えた。
「あの時は全てが突然だったわね」
平穏が一気に崩れ去ったあの日の事は忘れることは出来ない。
突如戦の準備が始まり、瞬く間に戦争が始まった。
武器や鎧を身につけ、騎馬に乗り、騎士たちた出国していくのを見て、レナンは震えあがったのを覚えている。
戦をするという事は、人が死ぬという事。見知った者達が決意を込めて死地に向かう姿を見て恐ろしかった。
その中には異母兄のルアネドもいた。
彼は穏やかに微笑み、レナンにも行く前に挨拶にきてくれた。彼の婚約者である令嬢がしきりに泣いて何かを必死に伝えていた姿を鮮明に覚えている。
そんなルアネドが捕虜となって生きていると聞いた時は、自分の事のように嬉しかった。
アドガルムの慈悲に感謝をした。
そんなルアネドだが、今はパルス国国王となり奮闘している。そして当時の婚約者だった女性は王妃になった。
レナンは異母妹としてではなくアドガルム国の王太子妃として結婚式に参加したが、ルアネドの妻になるロゼッタはほわほわとした雰囲気の可愛らしい女性であった。
「実はロゼッタは不思議な力の持ち主でね、そのおかげでいつも助かっているんだ」
アドガルムとの戦でも帝国との戦でも命を落とさなかったのは、その不思議な力のお陰らしい。
「まぁ万能ではないけど、何かあったらすぐに知らせるからね」
と言われたが、どういった力かまでは教えてもらえなかった。
少なくともレナンのものとは違うらしい。無理に聞き出すのは良くないとして、詳しく聞くのは止めた。
そしてパルス国との交流も増え、エリックとルアネドはとても親しくなる。
お互いを呼び捨てにするくらい親密に。
「俺も混ぜてくれ」
その関係に嫉妬したグウィエンが、自分も仲良くなりたいと何度もアドガルムに来て大変であった。
数年の口説き落としでようやくエリックもグウィエンに呼び捨てを許可する。
もう少ししたら属国から同盟国くらいになれそうというのと、グウィエンも国王の座を奪う目処が立ったそうなので特別に、という事らしい。
「エリック様もなんだかんだでグウィエン様を嫌ってはなさそうだし」
物怖じもせずエリックを怖がりもしないグウィエンは、どことなくティタンに雰囲気も似ている。
それゆえか文句や愚痴は言いながらもそこまで突き放していない、ように見える。
まぁ相変わらずレナンを口説こうとするのは変わりないが、それはエリックが全力で止めていた。
いつか本気で氷漬けにされるのではと冷や冷やしてしまうが。
「レナン様。お茶をお淹れしましょうか」
物思いにふけっているとラフィアがそっと声を掛けてくれた。
幼い頃から一緒の優しい侍女だ。
政略結婚でアドガルムに来る際、母国から一緒についてきてくれた忠実なる女性である。そんな彼女も最近自分の幸せを掴み、笑顔が増えていた。
「ありがとう、頂くわね」
ラフィアがお茶の準備を始めたので、レナンも動かしていた手を止める。
可愛らしい、小さな産着を縫っていた。
赤ちゃんの肌はとても薄くデリケートなので、縫い目が皮膚に当たってこすれないよう注意する。
一番初めに作った時は四苦八苦したが、枚数を重ねるごとに手際が良くなり、形も整ってきた。
「とても可愛らしいデザインですね」
ラフィアがレナンの手にある産着を見る。
「今は出来ることが少ないし、つい張り切っちゃって」
大きなお腹を摩り、ゆったりとソファに凭れ掛かる。
最初の子の時よりはやや小さめだが、それでも赤子がいるとこんなに大きくなるのかと驚くほど大きい。
「最初が双子だった事もあって大きくなりやすいのかしら?」
優しく優しく我が子のいるお腹を撫でる。
「あなたはどんな子かしら。早く会いたいわね」
穏やかな笑みでそう呟くと、返事をするように中から押されるのを感じた。
ますますレナンの笑顔が深くなる。
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