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第165話 限界
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「カミュ、行くよ」
突如発生した霧に乗じて移動することを命令する。
無言でレナンの背後に移動をし、ウィグルに頼んで枷を外してもらおうと託す。
「あっ!」
突然現れたリオン達を見て、思わずレナンは声を上げてしまう。
ルビアとヴァージルが振り返るより早くリオンとキュアは駆け出した。
「あんた達いつの間に!」
ルビアは魔石に手を掛け、死霊達をけしかける。
「ミューズ様を返しなさい!」
キュアの手から光が放たれた。
キュアの魔法は以前よりも強く、死霊の力を押し返すほどに成長している。
「おかしいわ、こんな短期間でそこまで魔力が上がるわけがないじゃない!」
ルビアは更に魔力を解放するが、キュアの魔法を消すことが出来ない。
(何故? 魔石は減ったけれど、ミューズを取り込んで強くなっているはずなのに)
「ただの魔術師風情があたしに勝てるわけないのよ!」
ヒステリックな叫び声を上げたルビアにキュアは笑顔を向ける。
「ただの魔術師ではないわ、あたしの中にはとても強い助っ人がいるのよ」
キュアの表情が変わる。
「よくも私とディエスをこんなところに連れてきたわね。それに娘の体まで奪うなんて許さないわ!」
「そんな、まさか?」
キュアの体に入っているというのはリリュシーヌの魂か?
「何故そんな事が出来る? そんな力を持つのはあたしとレナン王女だけなのに」
「レナン様にお願いしてキュアさんの体に入れてもらったの。消滅寸前で大変だったんだから」
リリュシーヌは怒りに満ちた顔でルビアを睨んだ。
「お前はこの魔石に閉じ込めていたはずだ。なのに……」
「あら、きちんと確認しなかったでしょ? ティタン様が壊してくれて、その隙に逃げられたの。よくも良いように使ってくれたわね」
リリュシーヌは更に力を放出する。
「きゃあ!」
あまりの魔力に圧され、ルビアは倒れ伏す。
「助けに行かなくていいのかい?」
リオンはヴァージルの前に立ちながらそう問いかける。
「もちろん行くとも。ルビアは大事なパートナーだからな」
ヴァージルは立ち上がり剣を抜くと、リオンに向かって切りかかる。
リオンは薙刀を持ち、その一撃を受けようとした。
だが、思った以上に消耗していたようで、受けとめきれず弾かれてしまう。
「その程度でよくここまで生きてこられたものだ」
限界が近いリオンの様子に余裕の笑みだ。
「帝国の人達ってさ、同じ事しか言わないよね」
追撃こそされなかったものの、ヴァージルの一撃で手は痺れている。
「同じ言葉か。だがそれを聞くのもこれで終わりだ、ここで死ぬんだからな」
再びヴァージルが剣を振りかぶった。
リオンがそれを受けるより早くカミュが前に出て、代わりに受け止める。
「それも何回も言われた。だがリオン様は死なない、俺達がいるからな」
カミュはヴァージルの剣を受け止めた後、お返しとばかりに切りかかっていく。
「リオン様無茶をしてはなりませんよ」
「ごめん」
ここまでリオンは休むことなく戦い続けている。
どれだけ知恵を働かせ、気を遣い、魔力を消費しただろうか。
そして実の兄が剣を握って対峙してきた、例え中身は違うとわかっていても、何も感じないはずがない。
そして将として皆を背負わなければならない立場だ。
身体にも精神にも相当な負荷がかかっている。
(終わらせなければ。リオン様の為にも)
カミュが魔力を解放すると、その体が
黒い影で覆われる。
「俺が相手だ」
「小物風情が。直ぐに片付けてやる」
ヴァージルにもまた黒い魔力が集まっていた。
すっかりリオンは蚊帳の外だが、正直有り難い。
「僕が限界なのをマオに知られないように態々移動してから言うなんて、本当に気遣いのできる従者だ」
体力よりもメンタルに来てる。
兄達を本当に取り戻せるかという自信のなさが、リオンを蝕んでいるのだ。
突如発生した霧に乗じて移動することを命令する。
無言でレナンの背後に移動をし、ウィグルに頼んで枷を外してもらおうと託す。
「あっ!」
突然現れたリオン達を見て、思わずレナンは声を上げてしまう。
ルビアとヴァージルが振り返るより早くリオンとキュアは駆け出した。
「あんた達いつの間に!」
ルビアは魔石に手を掛け、死霊達をけしかける。
「ミューズ様を返しなさい!」
キュアの手から光が放たれた。
キュアの魔法は以前よりも強く、死霊の力を押し返すほどに成長している。
「おかしいわ、こんな短期間でそこまで魔力が上がるわけがないじゃない!」
ルビアは更に魔力を解放するが、キュアの魔法を消すことが出来ない。
(何故? 魔石は減ったけれど、ミューズを取り込んで強くなっているはずなのに)
「ただの魔術師風情があたしに勝てるわけないのよ!」
ヒステリックな叫び声を上げたルビアにキュアは笑顔を向ける。
「ただの魔術師ではないわ、あたしの中にはとても強い助っ人がいるのよ」
キュアの表情が変わる。
「よくも私とディエスをこんなところに連れてきたわね。それに娘の体まで奪うなんて許さないわ!」
「そんな、まさか?」
キュアの体に入っているというのはリリュシーヌの魂か?
「何故そんな事が出来る? そんな力を持つのはあたしとレナン王女だけなのに」
「レナン様にお願いしてキュアさんの体に入れてもらったの。消滅寸前で大変だったんだから」
リリュシーヌは怒りに満ちた顔でルビアを睨んだ。
「お前はこの魔石に閉じ込めていたはずだ。なのに……」
「あら、きちんと確認しなかったでしょ? ティタン様が壊してくれて、その隙に逃げられたの。よくも良いように使ってくれたわね」
リリュシーヌは更に力を放出する。
「きゃあ!」
あまりの魔力に圧され、ルビアは倒れ伏す。
「助けに行かなくていいのかい?」
リオンはヴァージルの前に立ちながらそう問いかける。
「もちろん行くとも。ルビアは大事なパートナーだからな」
ヴァージルは立ち上がり剣を抜くと、リオンに向かって切りかかる。
リオンは薙刀を持ち、その一撃を受けようとした。
だが、思った以上に消耗していたようで、受けとめきれず弾かれてしまう。
「その程度でよくここまで生きてこられたものだ」
限界が近いリオンの様子に余裕の笑みだ。
「帝国の人達ってさ、同じ事しか言わないよね」
追撃こそされなかったものの、ヴァージルの一撃で手は痺れている。
「同じ言葉か。だがそれを聞くのもこれで終わりだ、ここで死ぬんだからな」
再びヴァージルが剣を振りかぶった。
リオンがそれを受けるより早くカミュが前に出て、代わりに受け止める。
「それも何回も言われた。だがリオン様は死なない、俺達がいるからな」
カミュはヴァージルの剣を受け止めた後、お返しとばかりに切りかかっていく。
「リオン様無茶をしてはなりませんよ」
「ごめん」
ここまでリオンは休むことなく戦い続けている。
どれだけ知恵を働かせ、気を遣い、魔力を消費しただろうか。
そして実の兄が剣を握って対峙してきた、例え中身は違うとわかっていても、何も感じないはずがない。
そして将として皆を背負わなければならない立場だ。
身体にも精神にも相当な負荷がかかっている。
(終わらせなければ。リオン様の為にも)
カミュが魔力を解放すると、その体が
黒い影で覆われる。
「俺が相手だ」
「小物風情が。直ぐに片付けてやる」
ヴァージルにもまた黒い魔力が集まっていた。
すっかりリオンは蚊帳の外だが、正直有り難い。
「僕が限界なのをマオに知られないように態々移動してから言うなんて、本当に気遣いのできる従者だ」
体力よりもメンタルに来てる。
兄達を本当に取り戻せるかという自信のなさが、リオンを蝕んでいるのだ。
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