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第164話 救出作戦

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「そうね、あたしとしても本当はレナン様の体が欲しかったから、交換してあげてもいいわ」
 ルビアはレナンの側による。

「交換するなら、この枷を解かなければいけないわね」
 ルビアの手が魔封じに触れ、囁かれる。

「でも全てが済んでからよ、まだこの体は使えるから」
 ティタンを手放すにはまだまだ早い。

 それに万が一バルトロスやティタンが怪我をした時の為に、回復に備えなければならない。

 使い道はまだ残っている。

「ルビア、話は終わったか?」
 ヴァージルはつまらなさそうに声を掛けた。

「レナン王女、お前は全く駆け引きをしたことがないな。その程度で騙せると思ったか?」

「うっ」
 辛辣な物言いにレナンは呻く。

「終わるまで、大人しくしていろ。どうせ何も出来ないのだから」
 戦う力もない、口達者でもない。脱獄もおそらく運が良かっただけだろう。

 ルビアもヴァージルもレナンを侮っていた。
 魔法も使えない状態だからこそ尚更。

 レナンは悔しい思いで皆の戦いを見守る事しか出来なかった。





「カミュ、キュア、ウィグル」
 押し寄せる帝国兵と相対しながら、リオンは三人に声を掛ける。

「通信石、耳に当ててね」
 戦いながら、三人は耳元に通信石を寄せる。

「レナン義姉様とミューズ義姉様を救出しに行くよ」
 小声で他者に聞かれないように話す。

「ティタン兄様はシグルド様とキールが抑えてくれているし、バルトロスについてはロキ様が抑えている。この隙に二人を奪い返したい」
 三人は静かにリオンの計画に耳を傾けた。

「転移ではなくカミュの影でレナン様の元まで行きたい。僕がヴァージルを抑えるから、キュアはルビアを抑えていて。ウィグルはレナン義姉様の魔封じを外してくれ、そしたらミューズ義姉様の体を返してもらおう」
 いち早く行いたい、邪魔が入る前に終わらせねばならない。

「他の者に援護を頼んでは?」
 カミュは剣を振るいつつ、そのような事を話す。

「あまりこちらに兵を割いたら目立ち過ぎてしまう。帝国兵も多勢来てしまうから、こっそりと行こう」
 少しずつ皆がリオンに近づいていく。

「キュア、合図したら目眩ましを。そしたら移動しよう」







「うーんバルトロス、それで本気か?」
 ロキは首を捻り、バルトロスの出す氷の矢を跳んで交わす。

 着地した先では地面から黒い杭が襲ってくるが、腕の一振りでそれらは粉々に砕けた。

「まだ体に慣れていないだけだ」
 バルトロスは次々と魔法を放つがロキには当たらない。

(おかしい、魔力は俺の方が高いのに!)
 バルトロスは焦る。

 エリックと自分の魔力なら、ロキ程度すぐに倒せると思ったのに。

「どんな魔法も無駄だ。魔力の流れでどんな攻撃が来るかわかる」
 どこからどれくらいの威力のものが来るかを、ロキは感知していた。

 バルトロスが体に慣れていないという事も幸いして、魔法の発動も若干遅い。
 それ故に避けることが出来ている。

(一発でも当たると危ないな)
 魔力量はバルトロスの方が当然多いので、ロキの防御壁はあっさりと貫通してしまう。
 だから避けるに徹しているが、何とか足止めをしたい。

「その体を返してくれれば、帝国に力を貸してもいいが?」

「そんな口車に乗るものか。お前は嘘つきだし、力の暴走を何度も起こす為にアドガルムにいる事も少ないと聞いた。内部から破壊されてはかなわんからな」
 ロキの申し出を断り、氷の霧を発生させる。ロキの周囲に冷たい空気が立ち込めた。

「凍れ」
 バルトロスの言葉で霧に触れた者が次々と氷像となっていく。

「仲間ごとというのはもはや帝国では当たり前だな」
 空中にてロキは静止していた。

 転移魔法にて天井近くまで移動し、風魔法で浮遊を保つ。
 空中から戦況も確認していった。

(親父殿とキールは何とか耐えているな。サミュエル達も周囲の帝国兵の数を減らしている。リオン王子たちは……)
 何やら話しながらひと個所に集まろうとしている。

 何か彼らなりに作戦があるのだろう、ならば自分はバルトロスを惹きつけておかねば。

 ロキは再び地上に降り立つとバルトロスへ向けて魔法を放つ。

「ようやくやる気になったか」

「そうだな、逃げるのも飽きた。そろそろ本気を出そう」
 炎が渦巻き、バルトロスに向かって突き進む。

 だがバルトロスはその炎に向けて氷の魔法を放つ。

 炎と氷が衝突し、凄まじい蒸気が辺りに立ち込めた。




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