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第154話 救済措置
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「どうやってここを出よう……」
目を覚ましたレナンは部屋の中をうろうろしていた。
エリックどころか部屋には誰もいない。
牢屋でなくて良かったが、そこまで広い部屋ではない。
テーブルや調度品、そしてレナンが寝ていた天蓋付きのベッドが置いてあるくらいだ。
ドアを開けようとするが鍵が外側からかかっていて開かない。
「どうしよう」
力があれば、魔法が使えれば自分一人でも何とか出来るだろうに、こうして誰かの助けを待つしか出来ない自分に嫌気が差す。
「エリック様ぁ」
涙を流し、つい愛しい人の名を呼んでしまう。泣いてもどうしようもないのに、こみ上げてくるのだ。
『あらあら、美人が泣いたら台無しよ?』
不意に女性の声がしたので、レナンは振り返る。
そこには金髪金眼の美女がいた。壁から半身を突き出していて、その体は透けている。
思わずレナンは大声を上げて叫んでしまった。
その大声に慌てて帝国兵が入ってくる。
「何事ですか?!」
「そ、そこにお化けがいて」
震える指で壁を指さすが、もはやその姿は見えない。
「気のせいでは? ここでそのようなものを見たとは聞きませんが」
「でも、わたくし本当に見たのです、部屋を変えて欲しいわ」
人質なのも忘れてつい頼んでしまう。
「勝手にそのような真似は出来ません。バルトロス様の許可が出るまで、あなたをこの部屋から出すわけにはいかないので」
何事もない事を確認すると、すぐに帝国兵は出て行ってしまった。
「本当なのに」
身を縮こませ、レナンはそわそわする。
『驚かせてしまってごめんなさい』
また声がして、レナンは振り返る。
「……」
レナンは女性から距離を取るように後ろに下がる。
『落ち着いて聞いて、私はミューズの母親なの』
「ミューズ様の?」
その言葉にレナンはピタっと止まる。
「本当なのですか?」
『えぇ。あなたを見つける為に手分けして探していたのだけど、簡単に説明するわね』
リリュシーヌとその夫ディエスは、セラフィムからルビアに寄って無理矢理連れてこられたこと。
そしてミューズを騙すのに利用され、そのせいでティタンは帝国の手に落ちた。
今やミューズの体はルビアに乗っ取られており、ミューズも魂の存在になっていることをかいつまんで話される。
『あなたを探していたのは私達の事が見える、数少ない人間だからよ。お願い助けて』
自分達の体から離れて魂だけになっている今は、とても危うい状態なのだそうだ。
「どうしたらいいのでしょう。わたくし力の使い方がわからなくて」
『後で教えてあげるわ。今はとにかく二人をここに呼んでくるわね。お願い、私達を助けて』
そう言うとリリュシーヌは壁の中に消えてしまう。
少し経つとミューズと青髪の青年と戻って来る。こちらがミューズの父親か。
「ミューズ様、会えて嬉しいです」
『私も。レナン様が無事で良かったわ』
二人は抱きしめ合い、涙を流す。
心細い中、こうして会えて嬉しい。
『声も聞けるし、こうやって触れられる。力は十分ね』
レナンの無自覚な力にリリュシーヌは感心する。
これならルビアからミューズの体を取り戻せるはずだ。
『リリュシーヌ、体が段々消えてきたよ!』
ディエスの焦る声がした。そろそろ時間が来たのだろう。
『レナン様、お願いします。一時的でいいから私達に体を貸してください』
リリュシーヌは頼み込む。
『このままでは私たちは消えてしまう。でもあなたの体に入れたら、魂が消えるのを防げるの。お願い、けして危害は加えないから』
「わかりました、わたくしの体でよければ」
レナンは両手を広げ、受け入れ態勢を作った。
(これでいいのかしら?)
三人はレナンの体に吸い込まれるように消えていった。
「くっ!」
心臓が跳ねる様な感覚を覚える。
「ごめんなさい、少し負担が大きかったわね」
レナンの口が勝手に動き、回復魔法が発動する。
「勝手に体を使わせてもらってごめんね、つらそうだったから」
レナンはそれどころではなかった。
「わたくし今、魔法を使ったの?」
初めての感覚だった。
「私とミューズと、そしてディエスの魔力が今あなたの体を満たしているわ。さすがに一気に出そうとすれば体がもたないけれど、少しなら大丈夫。そして今のあなたに魔法で敵うものは居ないわ」
レナンはもともと魔力が高く、そしてリリュシーヌとミューズの魔力も上乗せされて、ずば抜けて増える。
これなら余裕でライカ達を助けに行けるし、帝国兵も倒せる。
「地下牢にいるライカさん達を助けてからリオン王子の助力に行こう。リオン王子の元に大量の兵が向かっているのが見えた」
ディエスは先程見た光景を伝える。
「急がないと。レナン様、少しだけ体を借りるわ」
リリュシーヌの言葉にレナンは頷いた。
「体があるっていいわね」
久々の感覚にリリュシーヌは懐かしくなる。
「では魔法を使わせてもらうわ」
目を閉じ、集中する。まずはライカ達を助けるため、牢への転移を行なった。
目を覚ましたレナンは部屋の中をうろうろしていた。
エリックどころか部屋には誰もいない。
牢屋でなくて良かったが、そこまで広い部屋ではない。
テーブルや調度品、そしてレナンが寝ていた天蓋付きのベッドが置いてあるくらいだ。
ドアを開けようとするが鍵が外側からかかっていて開かない。
「どうしよう」
力があれば、魔法が使えれば自分一人でも何とか出来るだろうに、こうして誰かの助けを待つしか出来ない自分に嫌気が差す。
「エリック様ぁ」
涙を流し、つい愛しい人の名を呼んでしまう。泣いてもどうしようもないのに、こみ上げてくるのだ。
『あらあら、美人が泣いたら台無しよ?』
不意に女性の声がしたので、レナンは振り返る。
そこには金髪金眼の美女がいた。壁から半身を突き出していて、その体は透けている。
思わずレナンは大声を上げて叫んでしまった。
その大声に慌てて帝国兵が入ってくる。
「何事ですか?!」
「そ、そこにお化けがいて」
震える指で壁を指さすが、もはやその姿は見えない。
「気のせいでは? ここでそのようなものを見たとは聞きませんが」
「でも、わたくし本当に見たのです、部屋を変えて欲しいわ」
人質なのも忘れてつい頼んでしまう。
「勝手にそのような真似は出来ません。バルトロス様の許可が出るまで、あなたをこの部屋から出すわけにはいかないので」
何事もない事を確認すると、すぐに帝国兵は出て行ってしまった。
「本当なのに」
身を縮こませ、レナンはそわそわする。
『驚かせてしまってごめんなさい』
また声がして、レナンは振り返る。
「……」
レナンは女性から距離を取るように後ろに下がる。
『落ち着いて聞いて、私はミューズの母親なの』
「ミューズ様の?」
その言葉にレナンはピタっと止まる。
「本当なのですか?」
『えぇ。あなたを見つける為に手分けして探していたのだけど、簡単に説明するわね』
リリュシーヌとその夫ディエスは、セラフィムからルビアに寄って無理矢理連れてこられたこと。
そしてミューズを騙すのに利用され、そのせいでティタンは帝国の手に落ちた。
今やミューズの体はルビアに乗っ取られており、ミューズも魂の存在になっていることをかいつまんで話される。
『あなたを探していたのは私達の事が見える、数少ない人間だからよ。お願い助けて』
自分達の体から離れて魂だけになっている今は、とても危うい状態なのだそうだ。
「どうしたらいいのでしょう。わたくし力の使い方がわからなくて」
『後で教えてあげるわ。今はとにかく二人をここに呼んでくるわね。お願い、私達を助けて』
そう言うとリリュシーヌは壁の中に消えてしまう。
少し経つとミューズと青髪の青年と戻って来る。こちらがミューズの父親か。
「ミューズ様、会えて嬉しいです」
『私も。レナン様が無事で良かったわ』
二人は抱きしめ合い、涙を流す。
心細い中、こうして会えて嬉しい。
『声も聞けるし、こうやって触れられる。力は十分ね』
レナンの無自覚な力にリリュシーヌは感心する。
これならルビアからミューズの体を取り戻せるはずだ。
『リリュシーヌ、体が段々消えてきたよ!』
ディエスの焦る声がした。そろそろ時間が来たのだろう。
『レナン様、お願いします。一時的でいいから私達に体を貸してください』
リリュシーヌは頼み込む。
『このままでは私たちは消えてしまう。でもあなたの体に入れたら、魂が消えるのを防げるの。お願い、けして危害は加えないから』
「わかりました、わたくしの体でよければ」
レナンは両手を広げ、受け入れ態勢を作った。
(これでいいのかしら?)
三人はレナンの体に吸い込まれるように消えていった。
「くっ!」
心臓が跳ねる様な感覚を覚える。
「ごめんなさい、少し負担が大きかったわね」
レナンの口が勝手に動き、回復魔法が発動する。
「勝手に体を使わせてもらってごめんね、つらそうだったから」
レナンはそれどころではなかった。
「わたくし今、魔法を使ったの?」
初めての感覚だった。
「私とミューズと、そしてディエスの魔力が今あなたの体を満たしているわ。さすがに一気に出そうとすれば体がもたないけれど、少しなら大丈夫。そして今のあなたに魔法で敵うものは居ないわ」
レナンはもともと魔力が高く、そしてリリュシーヌとミューズの魔力も上乗せされて、ずば抜けて増える。
これなら余裕でライカ達を助けに行けるし、帝国兵も倒せる。
「地下牢にいるライカさん達を助けてからリオン王子の助力に行こう。リオン王子の元に大量の兵が向かっているのが見えた」
ディエスは先程見た光景を伝える。
「急がないと。レナン様、少しだけ体を借りるわ」
リリュシーヌの言葉にレナンは頷いた。
「体があるっていいわね」
久々の感覚にリリュシーヌは懐かしくなる。
「では魔法を使わせてもらうわ」
目を閉じ、集中する。まずはライカ達を助けるため、牢への転移を行なった。
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