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第146話 魂
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「さてやっと動きを止めたわね」
ルビアは短剣を握る。
ティタンが比較的綺麗に体を残してくれたので、後は心臓を一突きし命を奪って屍人にすればいい。
「これだけ綺麗ならばすぐに使えるわ」
傷んだ死体は動きも遅いし、操るのにも魔力がいる。
これくらいならミューズの魔法で損傷は治せるし、操りやすい。
早速ライカからと思ったが、ルビアを呼びにと帝国兵が来る。
「バルトロス様があたしを呼んでいるですって?」
そう言われては行かないわけにはいかない。
「……今いくわ」
惜しいが皇帝の命は絶対だ。
「この者達を拘束して地下牢に入れて置いて。後であたしが殺すから。生かしておくのよ」
不機嫌そうに命じるとルビアは自分の死体を見る。
「酷いものね」
本当にティタンは容赦がない。
両断された死体は見る影もなく、体はズタズタだ。
体につけていた魔石もいくつか壊れてしまっている。
(いくつかの死霊もにげてしまったわ)
まぁいい。自分から離れた死霊は魔石という定住先がなければやがては消えてしまう。
勝手に手から離れたもの達など霧散して、二度と生まれ変われないようになればいい。
無事な魔石を回収し、ルビアは皇宮内に急いだ。
(ミューズの魂はまだ眠っているのかしら? あまり感じられないわね)
体を乗っ取る際に魂はこの体の奥深くに閉じ込めたはずだ。
なのに何の動きもなく、ずっと静かだ。
「ティタン様の行動にショックを受けているのかしら。心が脆い女だから」
こんなに簡単に騙されるなど、愚かな女だと嘲る。
『やっと行ったわね』
見つからなくてよかった。
ミューズの母、リリュシーヌがルビアが去ったのを見て安堵した。
今は魂だけの存在だし、また操られたのでは、溜まったものではない。
『でもこのままではいられないわ、どうにかしないと』
ミューズの隣でリリュシーヌが頭を悩ませる。
『魔石は壊れてしまったし、勝手に誰かの身体にも入れない。このままでは僕たちは消えてしまうんだよね?せめてミューズの身体だけでも取り返してから死にたいよ』
ディエスはそう言ってオロオロしている。
『あなた、落ち着いて下さい』
『落ち着いてなんていられない。折角娘と会えたのに、娘まで死んでしまうなんて言われて、冷静ではいられないだろ?』
ディエスは頭を搔きながら、口元を歪ませる。
『折角ティタン様が、僕たちを縛り付けていた魔石を壊して自由にしてくれたのに、このまま誰にも見えないのではやりようがない』
『せめてロキに連絡が取れればいいんだけど』
この姿でわかる人に合わなければならない。
『ミューズ、誰か心当たりはない?』
その問い掛けも聞こえないくらいにミューズは落ち込んでいた。
『こんな事をしてしまうなんて……』
自分の軽率な行動で、皆が傷つき倒れ伏している。
ティタンもミューズが死んだと思っただろう。
あのような場面を見せられ、どれ程の悲しみに打ちひしがれたか。
想像に難くない。
『お母様達に会えたと言っても、このような後先考えない行動をしてしまうなんて』
その結果がこの窮地だ。
いっそ本当に死んでしまいたい、この罪をどう償えばいいのか。
『あのような場面で冷静になんていられないわ。それに無理矢理魅了の魔法を使わせられていたし』
リリュシーヌは悔しそうな表情だ。
『あなたと目が合った時に私は魅了の魔法を使うように命令されていたの。あの時はルビアの命令に逆らうことが出来なくて。ごめんなさい、私の力が至らないばかりに』
『違うよ、君は僕を人質に取られていたから従わざるを得なかったんだ。本当に悪いのは僕だ』
『いいえ、私が悪いのです。もっと強い心を持ってルビアに体を取られるような事がなければ、このような惨事にはならなかったのに』
三人とも自分が悪いと言ってきかない。
『やめましょう、時間の無駄だわ』
リリュシーヌが真っ先に我に返る。
『過ぎた事は悔やんでも仕方ないわ。今は打開策を見つけないと』
まず魂だけになった自分達に気づいてくれる人を見つけなければいけない。
『……レナン様ならあるいは』
ルビアに対抗できるのはレナンだけだと聞いている。
似て非なる力を持つレナンなら見えるかもしれないし、助けてくれるかもしれない。
『その方はどちらに?』
『エリック様、アドガルムの王太子と共に皇宮にいるはずです。バルトロス皇帝を討つために来ていますので』
『皇帝を討つですって? ではその方は余程の魔術師なのね』
『いえ、実はあまり魔法について学んではいなかったそうで、今もあまり得意ではないそうです』
センスの問題なのか何なのか。
レナンは魔法をあまり覚えられなかった。
『でも力についてはロキ叔父様が見てくれているので、間違いではないと思いますよ』
『そうね、ロキが言うならば』
リリュシーヌは弟に対して魔法に関しては信頼をしていた。
『残念ながら彼らを助けるのは後よ』
(皆、ごめんなさい)
もしも元に戻れなくてもこの言葉だけでも伝えてもらおうと心に決める。
(そしてティタン様、絶対にもとに戻してみせますからね)
ルビアに対する怒りはどんどんと積もっていく。
自分の体を乗っ取るだけではなく、夫の事も傷つけてあのような振る舞いをさせるなんて。
絶対に許せるわけはない。
傷ついたライカ達が運ばれるのを見ながら、ミューズ達はレナンを探す為に皇宮へと足を進めた。
ルビアは短剣を握る。
ティタンが比較的綺麗に体を残してくれたので、後は心臓を一突きし命を奪って屍人にすればいい。
「これだけ綺麗ならばすぐに使えるわ」
傷んだ死体は動きも遅いし、操るのにも魔力がいる。
これくらいならミューズの魔法で損傷は治せるし、操りやすい。
早速ライカからと思ったが、ルビアを呼びにと帝国兵が来る。
「バルトロス様があたしを呼んでいるですって?」
そう言われては行かないわけにはいかない。
「……今いくわ」
惜しいが皇帝の命は絶対だ。
「この者達を拘束して地下牢に入れて置いて。後であたしが殺すから。生かしておくのよ」
不機嫌そうに命じるとルビアは自分の死体を見る。
「酷いものね」
本当にティタンは容赦がない。
両断された死体は見る影もなく、体はズタズタだ。
体につけていた魔石もいくつか壊れてしまっている。
(いくつかの死霊もにげてしまったわ)
まぁいい。自分から離れた死霊は魔石という定住先がなければやがては消えてしまう。
勝手に手から離れたもの達など霧散して、二度と生まれ変われないようになればいい。
無事な魔石を回収し、ルビアは皇宮内に急いだ。
(ミューズの魂はまだ眠っているのかしら? あまり感じられないわね)
体を乗っ取る際に魂はこの体の奥深くに閉じ込めたはずだ。
なのに何の動きもなく、ずっと静かだ。
「ティタン様の行動にショックを受けているのかしら。心が脆い女だから」
こんなに簡単に騙されるなど、愚かな女だと嘲る。
『やっと行ったわね』
見つからなくてよかった。
ミューズの母、リリュシーヌがルビアが去ったのを見て安堵した。
今は魂だけの存在だし、また操られたのでは、溜まったものではない。
『でもこのままではいられないわ、どうにかしないと』
ミューズの隣でリリュシーヌが頭を悩ませる。
『魔石は壊れてしまったし、勝手に誰かの身体にも入れない。このままでは僕たちは消えてしまうんだよね?せめてミューズの身体だけでも取り返してから死にたいよ』
ディエスはそう言ってオロオロしている。
『あなた、落ち着いて下さい』
『落ち着いてなんていられない。折角娘と会えたのに、娘まで死んでしまうなんて言われて、冷静ではいられないだろ?』
ディエスは頭を搔きながら、口元を歪ませる。
『折角ティタン様が、僕たちを縛り付けていた魔石を壊して自由にしてくれたのに、このまま誰にも見えないのではやりようがない』
『せめてロキに連絡が取れればいいんだけど』
この姿でわかる人に合わなければならない。
『ミューズ、誰か心当たりはない?』
その問い掛けも聞こえないくらいにミューズは落ち込んでいた。
『こんな事をしてしまうなんて……』
自分の軽率な行動で、皆が傷つき倒れ伏している。
ティタンもミューズが死んだと思っただろう。
あのような場面を見せられ、どれ程の悲しみに打ちひしがれたか。
想像に難くない。
『お母様達に会えたと言っても、このような後先考えない行動をしてしまうなんて』
その結果がこの窮地だ。
いっそ本当に死んでしまいたい、この罪をどう償えばいいのか。
『あのような場面で冷静になんていられないわ。それに無理矢理魅了の魔法を使わせられていたし』
リリュシーヌは悔しそうな表情だ。
『あなたと目が合った時に私は魅了の魔法を使うように命令されていたの。あの時はルビアの命令に逆らうことが出来なくて。ごめんなさい、私の力が至らないばかりに』
『違うよ、君は僕を人質に取られていたから従わざるを得なかったんだ。本当に悪いのは僕だ』
『いいえ、私が悪いのです。もっと強い心を持ってルビアに体を取られるような事がなければ、このような惨事にはならなかったのに』
三人とも自分が悪いと言ってきかない。
『やめましょう、時間の無駄だわ』
リリュシーヌが真っ先に我に返る。
『過ぎた事は悔やんでも仕方ないわ。今は打開策を見つけないと』
まず魂だけになった自分達に気づいてくれる人を見つけなければいけない。
『……レナン様ならあるいは』
ルビアに対抗できるのはレナンだけだと聞いている。
似て非なる力を持つレナンなら見えるかもしれないし、助けてくれるかもしれない。
『その方はどちらに?』
『エリック様、アドガルムの王太子と共に皇宮にいるはずです。バルトロス皇帝を討つために来ていますので』
『皇帝を討つですって? ではその方は余程の魔術師なのね』
『いえ、実はあまり魔法について学んではいなかったそうで、今もあまり得意ではないそうです』
センスの問題なのか何なのか。
レナンは魔法をあまり覚えられなかった。
『でも力についてはロキ叔父様が見てくれているので、間違いではないと思いますよ』
『そうね、ロキが言うならば』
リリュシーヌは弟に対して魔法に関しては信頼をしていた。
『残念ながら彼らを助けるのは後よ』
(皆、ごめんなさい)
もしも元に戻れなくてもこの言葉だけでも伝えてもらおうと心に決める。
(そしてティタン様、絶対にもとに戻してみせますからね)
ルビアに対する怒りはどんどんと積もっていく。
自分の体を乗っ取るだけではなく、夫の事も傷つけてあのような振る舞いをさせるなんて。
絶対に許せるわけはない。
傷ついたライカ達が運ばれるのを見ながら、ミューズ達はレナンを探す為に皇宮へと足を進めた。
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