隣国が戦を仕掛けてきたので返り討ちにし、人質として三国の王女を貰い受けました

しろねこ。

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第137話 本音と囮

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「黙れよ、ブス。お前に皇帝陛下の何がわかる!」
 一向に攻撃も当たらず、ダミアンの苛立ちも頂点に達していた。

「わかるですよ、こんな品行方正な部下を持ってるのですから、どんな醜いものかわかるです。類は友を呼ぶなのです。それにしてもそんな顔じゃ女の子にもモテないですよ。ね、ウィグル?」

「えっえっ、僕に聞きます?」
 ダミアンとマオを追って走っていたウィグルは突然の声掛けに驚いた。

「そうですね。顔はともかく、人の事を見下す男は最低です。こんな人とは付き合いたくないですね」
 ウィグルも挑発に加担し、わざとらしいため息などをついたりしている。

 左手だけの攻撃、しかも怒りのまま振るっているから、何とか避けることは出来るが、一撃でも当たれば致命傷だ。

 マオの負担を減らす為にもウィグルも何とかダミアンを引き付けようとした。

 せめてリオンが回復するまで、何とか足止めしなくては。

「弱い奴が何を言う。それに男に言われても嬉しくない」
 ダミアンの注意がウィグルにも向いた。

 攻撃が分散され、避けるのが少し楽になる。

「ウィグルは女の子なのですよ? それがわからないなんて、その目は節穴? だから両方色違いのガラス玉を目に入れているですね、納得です」
 ティタンに抉られた片目は別なものから奪い、いれたものだ。

「うるさいんだよお前。少しは口を閉じろ!」
 ティタンに負けた事までからかわれ、ダミアンは冷静さからどんどん遠ざかっている。

「見ての通りの平民育ちだから、行儀作法になれてないのです。とりあえず、自称強い人のまねをしたのですよ」
 ダミアンを指さし、人の悪い顔をする。

「……気が変わった。お前はひと思いには殺さない。手足を切って目をくりぬいて部屋に飾ってやるよ。安心しな、食事は食べさせてやるからな」

「お断りです、リオン様が美味しい料理をいっぱい食べさせてくれるですから、わざわざ化け物と共になんて行かないです」
 舌を突き出し、挑発を続けている。

 そろそろ体力が持たなくなってきて、汗が頬を伝って落ちるのがわかった。

 だが、マオは疲労を見せないようにダミアンを見据え続ける。

「あんなひ弱で国からも見放されている奴に、何を期待するっていうんだ」

「リオン様は強いですよ。強くて優しくて、とってもかっこいい自慢の夫です!」
 マオは大きい声でそう言う。

「お前みたいな人を見下す奴なんかにわかるはずないですよ! 努力家で勉強家で、寝る間も惜しんで国の為、民の為に頑張ってくれているです。ぼくのような身寄りのない者にも優しい手を差し伸べてくれた。腐れ外道にリオン様の価値が理解できるはずないです!」
 その言葉にリオンは涙が出る程嬉しくなった。

 最愛の人に褒められて喜ばないわけがない。

 声を上げようとした時、突然腹部の剣が抜かれる。

「!!……」
 痛みと嬉しさで声が出ない。

 剣を抜いた直後、カミュとサミュエルが二人掛かりですぐに治療に当たった。

 傷口を直接圧迫し、止血をしながらの強引に治癒されたが、失血も少なくすぐに傷も塞がる。

「……折角マオがいい事を言ってくれたのに、急に剣を抜かないでくれよ」
 カミュを睨みつけ、恨みがましい言葉を述べる。

「すみません、嬉しさで痛みとかも麻痺してそうだったので、抜いても大丈夫かと思いまして」

「痛いに決まってるでしょ……」
 痛みは落ち着いたが、失血でフラフラだ。

 魔法を使うのは大丈夫そうだけど、動きが激しいダミアンを狙うのはまだ難しそうだ。

「傷跡は残りそうですね」
 サミュエルはリオンの傷口に手を翳しながら申し訳無さそうにする。

 大量の魔力をすでに消費しているが、魔法を止めない。

「傷は男の勲章だろ? 全然平気」
 気を抜けば倒れそうだが、まだ終わりではない。

 右手を失いながらも動くダミアンは、もう痛みも感じていないようだ。

 体力的に厳しいのはこちらの方だすぐにでも決着をつけたい。

「遅くなりました」
 一人の男の登場で、空気が一変する。

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