隣国が戦を仕掛けてきたので返り討ちにし、人質として三国の王女を貰い受けました

しろねこ。

文字の大きさ
上 下
122 / 202

第122話 契約魔法の解除

しおりを挟む
「よく眠れた、すっきりしたよ」
 リオンは伸びをし、サミュエルとカミュと交代をする。

 シドウに書いてもらった地図を見て計画を立て、お世話になったお礼に家事を手伝いながら、皆が起きるのを待った。

 アドガルム国とも通信で密にやり取りをし、計画を詰めていく。

 攻め入る時間帯や戦力の分散、皇帝のいるところまでの道筋と陽動の場所など、リオンは綿密に考える。

(契約魔法を解除してから中心部へと向かうとして、あまり時間はかけたくないな)
 転移装置の場所から離れたところで行う予定であり、解除が出来次第援護に行きたいところだ。

 本来であれば民に構うくらいなら、一刻も早く皇帝の命を奪いに行った方が戦いの終わりが早くなる。

(まぁ仕方ないよね)
 後々を考えると、罪のない民を助けておくのはいい方向に転がるはずだ。





 従者たちが仮眠から起きてきたところで、シドウに頼み、契約魔法で苦しめられているもの達を呼んでもらった。

 集まり過ぎては謀反を疑われてしまうので、代表者だけと話し、契約魔法の解除についての説明を始める。

「解除魔法が使えるのは僕とサミュエルだけになるんだけど、若干やり方が違うんだ。サミュエルのやり方なら痛くないけど、僕のやり方だと痛いらしいんだよね」

「同じ魔法でも繰り手によって違うものなのですか?」

「そうらしいよ。貼付薬をはがすみたいな感じって言えばいいかな? 少しだけ覚悟をしてね」
 治癒魔法の使えない平民の間でよく使う薬の染み込んだ布の事だ。

「サミュエルは優しく出来るんだけど、僕の場合力任せになっちゃうんだよね」
 回復魔法がそこまで得意ではないリオンは多少荒っぽくなってしまう、適性の問題なんだろうけど、それでも覚えることは出来た。

 エリックのように攻撃に特化した者だと更に痛いのではないかとロキは言っていた。

(兄様にやられるよりはきっと僕の方がマシだよ、うん)
 リオン的にはそれで罪悪感は消える。

 あの兄が無理なことが自分に出来るとは思えないと強く自分を励ました。

「一度に大量の者の契約を解けば、術師達は異変に気付くだろう。その間にアドガルム国の兵たちにはここから離れた場所に転移してきてもらう。様子見でこちらに来た兵は僕達が始末するからね。戦えない者はすぐさまどこかに避難していてね。もしも攻めてきたものの中で契約させられ者達がいたら、僕とサミュエルで解除する。帝国に忠誠を誓う兵であったら容赦なく殺すよ」
 あとはアドガルムから来た援軍に対峙してもらう。

「応援が来るまでは僕達で凌ぐしかないけど、何とかなるだろう」
 厳しいだろうが囮としての役目を追わねばいけないし、今アドガルムから来てもらっても大人数では目立ってしまう。

「戦う際は俺達も力を貸します」
 シドウ達がそう進言した。

「危険が伴うからすぐに逃げるか、もしくはアドガルム兵に投降してくれ。僕の名を出せば悪いようにはしないから」

「いえ、リオン様達は家族の命を救ってくれる恩人です。恩には恩を返さねばならないでしょう、その為に共に戦わせてください」
 この短期間でシドウはリオンを認めていた。

 リオンは蔑むこともしない、シドウ達にもその仲間たちにも対等な人間として扱ってくれた。

「ありがとう、そういってもらえるだけで十分だ」
 そしてごく自然に感謝の言葉を口に出来る人物だ、それだけでリオンは傲慢なだけの帝国の貴族とは違うというのが良くわかる。

「絶対に帝国の奴らに後悔させてやるから、よろしくね。アドガルムに喧嘩を売るとどうなるかわからせてやるよ」
 笑顔がとても恐ろしかった。




 一斉の解除を前に、リオンはある程度人を分ける。

 女性や子供はサミュエルの方に、自分の方には男性に来てもらった。

「女性達を痛い目に合わせるのはさすがに憚られるからね」
 とは言いつつも、もう一つ意図はあった。

(マオ以外の女性に優しくするのは嫌なんだよね)
 マオは気にしていないかもしれないが、リオンは嫌だ。

 何だかマオを裏切る様な、申し訳ないような、そんな気持ちになる。

「マオ、ちょっとだけ来て」
 皆の解除をする前にと、二人になって抱きしめる。

「必ず生きて帰ろう。ね?」
 温かな体温に癒されながら、自分にも言い聞かせるようにそう呟いた。

「勿論です! 平和なアドガルムに一緒に帰るですよ」
 何の気なしに言った言葉だろうが、アドガルムがマオの帰る場所だと言ってもらえてとても嬉しい。

(夫婦として、家族として、これからもずっと側にいてくれるといいな)

「一緒にだよ、必ずだよ」
 嫌な予感がしてならない。

 止まらない悪寒を振り切りつつ、リオンは計画を実行する。

「もう終わらせないとね。戦なんて、してはいけないものだ」





しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

赤髪騎士と同僚侍女のほのぼの婚約話(番外編あり)

しろねこ。
恋愛
赤髪の騎士ルドは久々の休日に母孝行として実家を訪れていた。 良い年頃なのに浮いた話だし一つ持ってこない息子に母は心配が止まらない。 人当たりも良く、ルックスも良く、給料も悪くないはずなのに、えっ?何で彼女出来ないわけ? 時として母心は息子を追い詰めるものなのは、どの世でも変わらない。 ルドの想い人は主君の屋敷で一緒に働いているお喋り侍女。 気が強く、お話大好き、時には乱暴な一面すら好ましく思う程惚れている。 一緒にいる時間が長いと好意も生まれやすいよね、というところからの職場内恋愛のお話です。 他作品で出ているサブキャラのお話。 こんな関係性があったのね、くらいのゆるい気持ちでお読み下さい。 このお話だけでも読めますが、他の作品も読むともっと楽しいかも(*´ω`*)? 完全自己満、ハピエン、ご都合主義の作者による作品です。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿してます!

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋
恋愛
 貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

猛獣のお世話係

しろねこ。
恋愛
「猛獣のお世話係、ですか?」 父は頷き、王家からの手紙を寄越す。 国王が大事にしている猛獣の世話をしてくれる令嬢を探している。 条件は結婚適齢期の女性で未婚のもの。 猛獣のお世話係になった者にはとある領地をあげるので、そこで住み込みで働いてもらいたい。 猛獣が満足したら充分な謝礼を渡す……など 「なぜ、私が?私は家督を継ぐものではなかったのですか?万が一選ばれたらしばらく戻ってこれませんが」 「その必要がなくなったからよ、お義姉さま。私とユミル様の婚約が決まったのよ」 婚約者候補も家督も義妹に取られ、猛獣のお世話係になるべくメイドと二人、王宮へ向かったが…ふさふさの猛獣は超好み! いつまでもモフっていたい。 動物好き令嬢のまったりお世話ライフ。 もふもふはいいなぁ。 イヤな家族も仕事もない、幸せブラッシング生活が始まった。 完全自己満、ハピエン、ご都合主義です! 甘々です。 同名キャラで色んな作品を書いています。 一部キャラの台詞回しを誤字ではなく個性として受け止めて貰えればありがたいです。 他サイトさんでも投稿してます。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜

羽村美海
恋愛
【※第17回らぶドロップス恋愛小説コンテスト最終選考の結果が出たので再公開しました。改稿版との差し替えも完了してます】 思い入れのあるレストランで婚約者に婚約破棄された挙げ句、式場のキャンセル料まで支払う羽目になった穂乃香。 帰りに立ち寄ったバーでしつこいナンパ男を撃退しようとカクテルをぶちまけるが、助けに入ってきた男の優れた見目に見蕩れてしまった穂乃香はそのまま意識を手放してしまう。 目を覚ますと、見目の優れた男とホテルにいるというテンプレ展開が待ち受けていたばかりか、紳士だとばかり思っていた男からの予期せぬ変態発言により思いもよらない事態に……! 数ヶ月後、心機一転転職した穂乃香は、どういうわけか社長の第二秘書に抜擢される。 驚きを隠せない穂乃香の前に社長として現れたのは、なんと一夜を共にした、あの変態男だった。 しかも、穂乃香の醸し出す香りに一目惚れならぬ〝一嗅ぎ惚れ〟をしたという社長から、いきなりプロポーズされてーー!? 断るも〝業務の一環としてのビジネス婚〟で構わないと言うので仕方なく応じたはずが……、驚くほどの誠実さと優しさで頑なだった心を蕩かされ、甘い美声と香りに惑わされ、時折みせるギャップと強引さで熱く激しく翻弄されてーー 嗅覚に優れた紳士な俺様社長と男性不信な生真面目秘書の遺伝子レベルで惹かれ合う極上のラブロマンス! .。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜ *竹野内奏(タケノウチカナタ)32歳・働きたい企業ランキングトップを独占する大手総合電機メーカー「竹野内グループ」の社長・海外帰りの超絶ハイスペックなイケメン御曹司・優れた嗅覚の持ち主 *葛城穂乃香(カツラギホノカ)27歳・男性不信の生真面目秘書・過去のトラウマから地味な装いを徹底している .。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜ ※この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません .。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚ ✧エブリスタ様にて先行初公開23.1.9✧

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果

柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。 彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。 しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。 「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」 逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。 あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。 しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。 気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……? 虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。 ※小説家になろうに重複投稿しています。

処理中です...