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第61話 協力者探し
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「兄様達は随分と大変そうだったね。マオはそういう事なさそうだけど」
シェスタからどんな手紙が来ても行く気もしないマオは、今は外国語の授業に明け暮れていた。
第三王子の王子妃としての仕事だ。
「マオはなかなか優秀だと聞いているよ。進みも早く、思っていた予定よりも早く課程が終わりそうだって」
マオの黒髪に指を通し、リオンは始終楽しそうだ。
「邪魔しないで欲しいのですが」
そんな言葉などまるで聞こえないといった素振りでリオンは変わらず触れている。
「僕の仕事が始まるまでにある程度覚えてね、マオと一緒じゃないなんてつまらないもの」
もう少ししたら外交で周辺諸国を回る予定だ。
帝国が攻めてくる前に何とか同盟国、もしくは協力国を増やしたい。
近々リオンは諸外国を回って声を掛ける予定だ。
味方、とはならずとも敵にならないように手を回さなくてはならない。
その付き添いとして、どうしてもマオに早めに言葉を覚えてもらいたかった。
「リオン様が通訳すると言っていたですが?」
当初の予定はそういうものだ。
「マオも知ってた方がいいよ、ご婦人たちと自由に話が出来れば、美味しいスイーツ情報や夫の悪口で盛り上がれるからね」
にこにこと笑うリオンの心中は期待に満ち溢れていた。
思った以上にマオの能力は高い。
耳がいいのだろうか、発音や些細な違いを聞き分けられる。
通訳をするつもりでいたが、自力で覚えてもらった方がよさそうだ。
女性ならではの情報網は侮れない。
そしてあのどろどろした王城でなんとか生きてきたマオなら処世術も身につけていそうだし、多少言葉を覚えられなくても置いていく気はなかった。
外遊で回った国で親交も深いところから訪れ、現状の話とアドガルムに与したときの利点を伝えまわる。
この前のパルスの商人が帝国の手の者に攫われた映像も見せつつ、説得するつもりだ。
残念ながら彼らを助けることは出来なかったが、その命を無駄にするわけにはいかない。
宗主国となったのだが支配する気はなく、いずれ同盟国としてそれぞれと仲良くしていけたらという話もする。
戦好きの国ではないと強調し、しかし武力もあるとの主張はしておいた。
見た目だけで圧倒できるティタンの話も交えれば、信憑性も強くなる。
悲しいが見た目が与える影響は大きいものだ。
「これからの平穏の為にも人肌脱がなきゃね」
レナンとミューズが襲われた事からマオも狙われる可能性は高い。
しかしリオンが行くのは属国でもない、まるっきりの他国。
帝国軍はどうやって潜り込んでくるのだろう、油断はならない。
「そろそろ昼寝したいです」
連日の勉強で疲れているマオに、リオンは自身の膝を示す。
「ここにどうぞ」
「……」
リオンが据わるソファではなく、無言でベッドに潜り込んでいく。
マオは基本自室から出ない。
執務室とかもう少し勉強しやすい部屋があるが、マオはこの部屋がいいみたいだ。
なので連日リオンも足しげく通ってきているのだが、いい返事は貰えない。
(まぁ仕方ないか)
安らかな寝息を聞いて、リオンは回復の蝶を飛ばす。
少しでもマオの疲れを取るために、寝るのを見計らってから魔法を使っていた。
気づいてないだろうけど、それでもいい。
「いつかは振り向いてくれるでしょ」
目に見えての愛情表現はないものの、嫌われているとも思ってなかった。
だって同じ部屋にいても追い出されないし、こうやって寝顔は見せてくれる。
どこまでかはわからないが信用はされているはずだ。
「カミュ、出かける準備はどうかな?」
しばらくアドガルムには戻ってこれないかもしれない。
リオンの影からゆっくりとカミュが出てきた。
「万全かと思います。しかし本当に騎士団や隠密隊などは連れて行かなくてよろしいのですか?」
「うん。もしかしたら巻き込むかもしれないし、足手まといになっちゃうかもしれないからさ」
少ない人数ならカミュの影の中に退避できる。
だが、騎士団などを連れていくとその限りではない。
下手したらパルス国のように操られて敵に回るかもしれない。
「兄様達の話だと転移術を使うと聞いたから、気をつけないとね」
リオンやサミュエルならば魔力を使用して反発できるだろうが、マオやカミュ、そして新参者の護衛騎士、ウィグルの魔力では些か心配だ。
特にマオは戦えるかどうかもわからない。
昔人を殺した事があるそうだが、今のところ体を動かすところも魔法を使うところも見たことがない。
「ウィグルは本当に連れていきますか?」
「連れていくよ。通訳も兼ねてだから、寧ろ来て欲しい」
リオンの護衛騎士としての条件で難しかったのは、他国の言語を習得しなくてはいけないところだ。
重要な話を耳にしても言葉がわからないのでは役に立たない。
リオンの戦場は兄二人とまるで違うものだから。
ウィグルは若いからか吸収が早く、剣の腕もそこそこある。
リオンに憧れも抱いてくれているようで、とても懐いていたので、気に入っていた。
「一つ難点を言うと男ってところかな? 女性だったらもっと良かった」
マオの側にこれ以上男性を近づけたくはなかった。
「サミュエルにもしばし恋人と離れるよって言ってあげてね。今のうちに逢瀬を重ねなよって」
「……前半だけ伝えます」
カミュはそう言うと影の中に消えていった。
シェスタからどんな手紙が来ても行く気もしないマオは、今は外国語の授業に明け暮れていた。
第三王子の王子妃としての仕事だ。
「マオはなかなか優秀だと聞いているよ。進みも早く、思っていた予定よりも早く課程が終わりそうだって」
マオの黒髪に指を通し、リオンは始終楽しそうだ。
「邪魔しないで欲しいのですが」
そんな言葉などまるで聞こえないといった素振りでリオンは変わらず触れている。
「僕の仕事が始まるまでにある程度覚えてね、マオと一緒じゃないなんてつまらないもの」
もう少ししたら外交で周辺諸国を回る予定だ。
帝国が攻めてくる前に何とか同盟国、もしくは協力国を増やしたい。
近々リオンは諸外国を回って声を掛ける予定だ。
味方、とはならずとも敵にならないように手を回さなくてはならない。
その付き添いとして、どうしてもマオに早めに言葉を覚えてもらいたかった。
「リオン様が通訳すると言っていたですが?」
当初の予定はそういうものだ。
「マオも知ってた方がいいよ、ご婦人たちと自由に話が出来れば、美味しいスイーツ情報や夫の悪口で盛り上がれるからね」
にこにこと笑うリオンの心中は期待に満ち溢れていた。
思った以上にマオの能力は高い。
耳がいいのだろうか、発音や些細な違いを聞き分けられる。
通訳をするつもりでいたが、自力で覚えてもらった方がよさそうだ。
女性ならではの情報網は侮れない。
そしてあのどろどろした王城でなんとか生きてきたマオなら処世術も身につけていそうだし、多少言葉を覚えられなくても置いていく気はなかった。
外遊で回った国で親交も深いところから訪れ、現状の話とアドガルムに与したときの利点を伝えまわる。
この前のパルスの商人が帝国の手の者に攫われた映像も見せつつ、説得するつもりだ。
残念ながら彼らを助けることは出来なかったが、その命を無駄にするわけにはいかない。
宗主国となったのだが支配する気はなく、いずれ同盟国としてそれぞれと仲良くしていけたらという話もする。
戦好きの国ではないと強調し、しかし武力もあるとの主張はしておいた。
見た目だけで圧倒できるティタンの話も交えれば、信憑性も強くなる。
悲しいが見た目が与える影響は大きいものだ。
「これからの平穏の為にも人肌脱がなきゃね」
レナンとミューズが襲われた事からマオも狙われる可能性は高い。
しかしリオンが行くのは属国でもない、まるっきりの他国。
帝国軍はどうやって潜り込んでくるのだろう、油断はならない。
「そろそろ昼寝したいです」
連日の勉強で疲れているマオに、リオンは自身の膝を示す。
「ここにどうぞ」
「……」
リオンが据わるソファではなく、無言でベッドに潜り込んでいく。
マオは基本自室から出ない。
執務室とかもう少し勉強しやすい部屋があるが、マオはこの部屋がいいみたいだ。
なので連日リオンも足しげく通ってきているのだが、いい返事は貰えない。
(まぁ仕方ないか)
安らかな寝息を聞いて、リオンは回復の蝶を飛ばす。
少しでもマオの疲れを取るために、寝るのを見計らってから魔法を使っていた。
気づいてないだろうけど、それでもいい。
「いつかは振り向いてくれるでしょ」
目に見えての愛情表現はないものの、嫌われているとも思ってなかった。
だって同じ部屋にいても追い出されないし、こうやって寝顔は見せてくれる。
どこまでかはわからないが信用はされているはずだ。
「カミュ、出かける準備はどうかな?」
しばらくアドガルムには戻ってこれないかもしれない。
リオンの影からゆっくりとカミュが出てきた。
「万全かと思います。しかし本当に騎士団や隠密隊などは連れて行かなくてよろしいのですか?」
「うん。もしかしたら巻き込むかもしれないし、足手まといになっちゃうかもしれないからさ」
少ない人数ならカミュの影の中に退避できる。
だが、騎士団などを連れていくとその限りではない。
下手したらパルス国のように操られて敵に回るかもしれない。
「兄様達の話だと転移術を使うと聞いたから、気をつけないとね」
リオンやサミュエルならば魔力を使用して反発できるだろうが、マオやカミュ、そして新参者の護衛騎士、ウィグルの魔力では些か心配だ。
特にマオは戦えるかどうかもわからない。
昔人を殺した事があるそうだが、今のところ体を動かすところも魔法を使うところも見たことがない。
「ウィグルは本当に連れていきますか?」
「連れていくよ。通訳も兼ねてだから、寧ろ来て欲しい」
リオンの護衛騎士としての条件で難しかったのは、他国の言語を習得しなくてはいけないところだ。
重要な話を耳にしても言葉がわからないのでは役に立たない。
リオンの戦場は兄二人とまるで違うものだから。
ウィグルは若いからか吸収が早く、剣の腕もそこそこある。
リオンに憧れも抱いてくれているようで、とても懐いていたので、気に入っていた。
「一つ難点を言うと男ってところかな? 女性だったらもっと良かった」
マオの側にこれ以上男性を近づけたくはなかった。
「サミュエルにもしばし恋人と離れるよって言ってあげてね。今のうちに逢瀬を重ねなよって」
「……前半だけ伝えます」
カミュはそう言うと影の中に消えていった。
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