25 / 202
第25話 再確認と告白①
しおりを挟む
アドガルム王城を見て、ミューズの緊張感が更に高まった。
馬車内で夫婦というものについて考え、意識し過ぎてしまい、いまだまともにティタンの顔すら見れてない。
遠慮がちにティタンが手を引いてくれてようやく歩き出せたところだ。
アドガルム王城はセラフィムよりも大きく、あちこちで騎士や術師も見かけるが、こうして見るだけでも戦力の違いを感じるし、何だか楽しそうに見える。
何よりティタンに対して皆が気軽に挨拶しているのに驚いた。
王族に対して馴れ馴れしい態度を取るなど、セラフィムでは考えられなかったからだ。
あちらでは空気もピリッとして、目に見えない明確な壁を感じるのが普通だと思っていたのだが、ここではそういう格差を感じられない、不思議だ。
かと言って敬愛を感じないわけではないので、何とも言えない心地だ。
確実なのはアドガルムはセラフィムよりも温かい。
気候ではなく人と人の心の距離が近いく和やかなのだ。
上手くは言えないがティタンを見てると何となく分かる。
力は強いが、無闇に人を傷つけない。
弟妹達も見逃してくれたのは、ミューズを悲しませたくないからだとルドから教えてもらった。
本当はとても心根の優しい人なのだろうと、従者たちを見てもわかる。
ほんの僅かではあるが、前向きに考えられるようになっていた。
「嬉しいわ。とっても可愛らしい娘が出来て」
王妃アナスタシアが歓迎の意を表してミューズを抱きしめる。
小柄なミューズはアナスタシアの豊満な胸に埋もれ、息が出来ない。
「く、苦しいです」
「あら、ごめんなさいね」
ようやっと力は緩めてもらえたが、まだくっついたままだ。
「図体の大きい息子にこんな妖精さんみたいなお嫁さんがくるなんて、生きててよかったわ。いじめられたらすぐに言ってね。私が叱っておきますから」
「ありがとうございます、王妃様」
「王妃様なんて、アナと呼んで頂戴。レナンさんにもそう言ったのよ」
「?」
初めて聞く名前だが、ティタンが補足してくれる。
「パルス国の第二王女の名だ。今回の戦で兄上が娶ることになった人で、俺も姿絵しか見ていないが、銀髪の綺麗な人だ」
教えてもらえたのは嬉しいが、ティタンの口から他の女性を褒める言葉を聞いて、やや胸が痛む。
ミューズの眉間の皺に気づいたアナは、ミューズをティタンへと返す。
「駄目よティタン、奥さんの前で他の女性を綺麗なんて言っては。ミューズさんがヤキモチを妬いてるわ」
「本当か?!」
母の言葉にティタンは嬉しそうにミューズを見る。
「何でそんなに嬉しそうなのですか?」
ヤキモチを妬くミューズをからかいたいのかと、口をとがらせてしまう。
「違う、嫉妬してくれるという事は俺を意識してくれてるという事だろ? 嬉しいな」
はにかむような笑顔で素直にティタンは喜んでいる。
些細な一言で嫉妬にかられた事が恥ずかしくなるくらいティタンは真っすぐだ。
「私が嫉妬なんて、そんなおこがましいです」
自分はただティタンに付き従うだけ、と心の中で言い聞かす。
そういう約束でここに来たのだ、愛情を求めすぎては後々に辛くなる。
「初々しくて可愛いな、ティタンもいい子を見つけて何よりだ」
その声にミューズは気づく、国王への挨拶がまだだった。
「ご挨拶が遅れてしまい、大変失礼致しました」
ミューズは慌てる気持ちを抑え、改めて挨拶をする。
「親愛なるアドガルム国王アルフレッド=ウィズフォード様、挨拶が遅れ、申し訳ありません。私は」
挨拶の途中で、アナスタシアに手を引かれる。
「堅苦しい挨拶はいいのよ、もうあなたは家族なのだから」
「ですが、王妃様」
「アナと呼んでってば」
強調され、ミューズは素直に身を引く。
「アナ様。陛下への挨拶は必要かと思いまして」
「良い。アナの言うとおりだ、楽にしていいのだぞ」
アルフレッドからも促され、ミューズは困ってしまう。
このような事は初めてだ。
馬車内で夫婦というものについて考え、意識し過ぎてしまい、いまだまともにティタンの顔すら見れてない。
遠慮がちにティタンが手を引いてくれてようやく歩き出せたところだ。
アドガルム王城はセラフィムよりも大きく、あちこちで騎士や術師も見かけるが、こうして見るだけでも戦力の違いを感じるし、何だか楽しそうに見える。
何よりティタンに対して皆が気軽に挨拶しているのに驚いた。
王族に対して馴れ馴れしい態度を取るなど、セラフィムでは考えられなかったからだ。
あちらでは空気もピリッとして、目に見えない明確な壁を感じるのが普通だと思っていたのだが、ここではそういう格差を感じられない、不思議だ。
かと言って敬愛を感じないわけではないので、何とも言えない心地だ。
確実なのはアドガルムはセラフィムよりも温かい。
気候ではなく人と人の心の距離が近いく和やかなのだ。
上手くは言えないがティタンを見てると何となく分かる。
力は強いが、無闇に人を傷つけない。
弟妹達も見逃してくれたのは、ミューズを悲しませたくないからだとルドから教えてもらった。
本当はとても心根の優しい人なのだろうと、従者たちを見てもわかる。
ほんの僅かではあるが、前向きに考えられるようになっていた。
「嬉しいわ。とっても可愛らしい娘が出来て」
王妃アナスタシアが歓迎の意を表してミューズを抱きしめる。
小柄なミューズはアナスタシアの豊満な胸に埋もれ、息が出来ない。
「く、苦しいです」
「あら、ごめんなさいね」
ようやっと力は緩めてもらえたが、まだくっついたままだ。
「図体の大きい息子にこんな妖精さんみたいなお嫁さんがくるなんて、生きててよかったわ。いじめられたらすぐに言ってね。私が叱っておきますから」
「ありがとうございます、王妃様」
「王妃様なんて、アナと呼んで頂戴。レナンさんにもそう言ったのよ」
「?」
初めて聞く名前だが、ティタンが補足してくれる。
「パルス国の第二王女の名だ。今回の戦で兄上が娶ることになった人で、俺も姿絵しか見ていないが、銀髪の綺麗な人だ」
教えてもらえたのは嬉しいが、ティタンの口から他の女性を褒める言葉を聞いて、やや胸が痛む。
ミューズの眉間の皺に気づいたアナは、ミューズをティタンへと返す。
「駄目よティタン、奥さんの前で他の女性を綺麗なんて言っては。ミューズさんがヤキモチを妬いてるわ」
「本当か?!」
母の言葉にティタンは嬉しそうにミューズを見る。
「何でそんなに嬉しそうなのですか?」
ヤキモチを妬くミューズをからかいたいのかと、口をとがらせてしまう。
「違う、嫉妬してくれるという事は俺を意識してくれてるという事だろ? 嬉しいな」
はにかむような笑顔で素直にティタンは喜んでいる。
些細な一言で嫉妬にかられた事が恥ずかしくなるくらいティタンは真っすぐだ。
「私が嫉妬なんて、そんなおこがましいです」
自分はただティタンに付き従うだけ、と心の中で言い聞かす。
そういう約束でここに来たのだ、愛情を求めすぎては後々に辛くなる。
「初々しくて可愛いな、ティタンもいい子を見つけて何よりだ」
その声にミューズは気づく、国王への挨拶がまだだった。
「ご挨拶が遅れてしまい、大変失礼致しました」
ミューズは慌てる気持ちを抑え、改めて挨拶をする。
「親愛なるアドガルム国王アルフレッド=ウィズフォード様、挨拶が遅れ、申し訳ありません。私は」
挨拶の途中で、アナスタシアに手を引かれる。
「堅苦しい挨拶はいいのよ、もうあなたは家族なのだから」
「ですが、王妃様」
「アナと呼んでってば」
強調され、ミューズは素直に身を引く。
「アナ様。陛下への挨拶は必要かと思いまして」
「良い。アナの言うとおりだ、楽にしていいのだぞ」
アルフレッドからも促され、ミューズは困ってしまう。
このような事は初めてだ。
0
お気に入りに追加
191
あなたにおすすめの小説
赤髪騎士と同僚侍女のほのぼの婚約話(番外編あり)
しろねこ。
恋愛
赤髪の騎士ルドは久々の休日に母孝行として実家を訪れていた。
良い年頃なのに浮いた話だし一つ持ってこない息子に母は心配が止まらない。
人当たりも良く、ルックスも良く、給料も悪くないはずなのに、えっ?何で彼女出来ないわけ?
時として母心は息子を追い詰めるものなのは、どの世でも変わらない。
ルドの想い人は主君の屋敷で一緒に働いているお喋り侍女。
気が強く、お話大好き、時には乱暴な一面すら好ましく思う程惚れている。
一緒にいる時間が長いと好意も生まれやすいよね、というところからの職場内恋愛のお話です。
他作品で出ているサブキャラのお話。
こんな関係性があったのね、くらいのゆるい気持ちでお読み下さい。
このお話だけでも読めますが、他の作品も読むともっと楽しいかも(*´ω`*)?
完全自己満、ハピエン、ご都合主義の作者による作品です。
※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿してます!

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
猛獣のお世話係
しろねこ。
恋愛
「猛獣のお世話係、ですか?」
父は頷き、王家からの手紙を寄越す。
国王が大事にしている猛獣の世話をしてくれる令嬢を探している。
条件は結婚適齢期の女性で未婚のもの。
猛獣のお世話係になった者にはとある領地をあげるので、そこで住み込みで働いてもらいたい。
猛獣が満足したら充分な謝礼を渡す……など
「なぜ、私が?私は家督を継ぐものではなかったのですか?万が一選ばれたらしばらく戻ってこれませんが」
「その必要がなくなったからよ、お義姉さま。私とユミル様の婚約が決まったのよ」
婚約者候補も家督も義妹に取られ、猛獣のお世話係になるべくメイドと二人、王宮へ向かったが…ふさふさの猛獣は超好み!
いつまでもモフっていたい。
動物好き令嬢のまったりお世話ライフ。
もふもふはいいなぁ。
イヤな家族も仕事もない、幸せブラッシング生活が始まった。
完全自己満、ハピエン、ご都合主義です!
甘々です。
同名キャラで色んな作品を書いています。
一部キャラの台詞回しを誤字ではなく個性として受け止めて貰えればありがたいです。
他サイトさんでも投稿してます。

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
羽村美海
恋愛
【※第17回らぶドロップス恋愛小説コンテスト最終選考の結果が出たので再公開しました。改稿版との差し替えも完了してます】
思い入れのあるレストランで婚約者に婚約破棄された挙げ句、式場のキャンセル料まで支払う羽目になった穂乃香。
帰りに立ち寄ったバーでしつこいナンパ男を撃退しようとカクテルをぶちまけるが、助けに入ってきた男の優れた見目に見蕩れてしまった穂乃香はそのまま意識を手放してしまう。
目を覚ますと、見目の優れた男とホテルにいるというテンプレ展開が待ち受けていたばかりか、紳士だとばかり思っていた男からの予期せぬ変態発言により思いもよらない事態に……!
数ヶ月後、心機一転転職した穂乃香は、どういうわけか社長の第二秘書に抜擢される。
驚きを隠せない穂乃香の前に社長として現れたのは、なんと一夜を共にした、あの変態男だった。
しかも、穂乃香の醸し出す香りに一目惚れならぬ〝一嗅ぎ惚れ〟をしたという社長から、いきなりプロポーズされてーー!?
断るも〝業務の一環としてのビジネス婚〟で構わないと言うので仕方なく応じたはずが……、驚くほどの誠実さと優しさで頑なだった心を蕩かされ、甘い美声と香りに惑わされ、時折みせるギャップと強引さで熱く激しく翻弄されてーー
嗅覚に優れた紳士な俺様社長と男性不信な生真面目秘書の遺伝子レベルで惹かれ合う極上のラブロマンス!
.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜
*竹野内奏(タケノウチカナタ)32歳・働きたい企業ランキングトップを独占する大手総合電機メーカー「竹野内グループ」の社長・海外帰りの超絶ハイスペックなイケメン御曹司・優れた嗅覚の持ち主
*葛城穂乃香(カツラギホノカ)27歳・男性不信の生真面目秘書・過去のトラウマから地味な装いを徹底している
.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません
.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚
✧エブリスタ様にて先行初公開23.1.9✧

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果
柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。
彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。
しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。
「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」
逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。
あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。
しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。
気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……?
虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。
※小説家になろうに重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる