隣国が戦を仕掛けてきたので返り討ちにし、人質として三国の王女を貰い受けました

しろねこ。

文字の大きさ
上 下
24 / 202

第24話 束縛と愛情②

しおりを挟む
「父上。もう人質とか政略だとか言うのはお止めください。そのつもりはないと何回も言ったでしょう」
エリックの冷たい声と視線がアルフレッドに向けられる。

「もう人質などいらない程に、パルスには力を見せつけてきました。あれを受けてまでアドガルムに攻め入ろうとは思わないはずです」

「どういうことだ?」
二コラが言いにくそうにパルス国での出来事を伝える。

「報告が遅れてすみません」
平謝りのニコラと対照的に、悪びれもしないエリックにアルフレッドは卒倒しそうだった。

「何てことを! 折角穏便に済ませようとしていたのに」

「戦を仕掛けてきたのはパルス国です、今更穏便もないでしょう」
父の嘆きなどどこ吹く風だ。

「レナン疲れただろう、今日はもうゆっくりするといい。部屋の用意は出来てる」
些か解決していないような気はするが、エリックは早くレナンを連れていきたいようだ。

「待て待て、まだ話は終わっていない」
息子にいいように振り回されてしまったが、言わねばならないことはまだある。

アルフレッドは咳ばらいをした。

「色々と言ったが、アドガルムはレナン王女を歓迎している。これからはエリックの妻として王太子妃となり、この国を支えてほしい。大変だとは思うが私達も助力を惜しまないので何でも相談してくれ、この国とエリックを頼むよ」

「はい。わたくしでよければ、出来る限り頑張りたいと思っています。よろしくお願いいたします」
まさか国王直々に王太子妃と言われるとは。

本当に自分でいいのだろうかと不安は尽きないが、頑張るしかない。

「ちなみに側室の方は?」
アドガルムに来てそのような女性にレナンはまだ会っていない。

パルスや他国などでは側室がいるのが当たり前で、王妃と側室で仕事を分担したり負担を減らしたりなどする。

世継ぎの問題にしてもいた方が安泰だ。

「アドガルムの王族に側室はいない。今まで必要とはしていなかったし、これからも必要はないだろう」
アルフレッドの言葉を聞いてこれが文化の違いなのかと、レナンはまた驚いた。

自国の常識とは違う事がまだまだあるかもしれないが、少しだけ安心してしまった。

好きな人の愛情を独り占めできるのは、やはり嬉しい。

だが、エリックとしてはどう思っているのだろう。

そう思って彼の顔を見ると恐ろしい目つきを向けられていた。

「レナンは俺が側室を娶ると思ったのか? 君以外を愛すると」
何が彼の怒りに触れたかはわからないが、怒っているのは確実だ。

「俺が愛するのは君だけだ、それとも君は俺が他の女のもとに行っても構わないというのか。俺は独占する価値もない男だと?」

「いえ、そういうわけではありません」
エリックに掴まれてる手がとても冷たい。

自分も凍らせられてしまうのかと死を覚悟した。

「では、二度とそういう事を言わないように。俺は君のもので、君は俺のものだ。もう逃がさないし逃げられない、俺から離れられると思わないように」
囁かれた内容は常軌を逸している。

助けを求める視線はアルフレッドすら受け止められなかった。

「だから、大丈夫かなって心配したんだけど……」

(もっと早くに止めてー!!)
止める者のいない中、レナンは心の中で叫ぶしかできなかった。




しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

赤髪騎士と同僚侍女のほのぼの婚約話(番外編あり)

しろねこ。
恋愛
赤髪の騎士ルドは久々の休日に母孝行として実家を訪れていた。 良い年頃なのに浮いた話だし一つ持ってこない息子に母は心配が止まらない。 人当たりも良く、ルックスも良く、給料も悪くないはずなのに、えっ?何で彼女出来ないわけ? 時として母心は息子を追い詰めるものなのは、どの世でも変わらない。 ルドの想い人は主君の屋敷で一緒に働いているお喋り侍女。 気が強く、お話大好き、時には乱暴な一面すら好ましく思う程惚れている。 一緒にいる時間が長いと好意も生まれやすいよね、というところからの職場内恋愛のお話です。 他作品で出ているサブキャラのお話。 こんな関係性があったのね、くらいのゆるい気持ちでお読み下さい。 このお話だけでも読めますが、他の作品も読むともっと楽しいかも(*´ω`*)? 完全自己満、ハピエン、ご都合主義の作者による作品です。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿してます!

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋
恋愛
 貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

猛獣のお世話係

しろねこ。
恋愛
「猛獣のお世話係、ですか?」 父は頷き、王家からの手紙を寄越す。 国王が大事にしている猛獣の世話をしてくれる令嬢を探している。 条件は結婚適齢期の女性で未婚のもの。 猛獣のお世話係になった者にはとある領地をあげるので、そこで住み込みで働いてもらいたい。 猛獣が満足したら充分な謝礼を渡す……など 「なぜ、私が?私は家督を継ぐものではなかったのですか?万が一選ばれたらしばらく戻ってこれませんが」 「その必要がなくなったからよ、お義姉さま。私とユミル様の婚約が決まったのよ」 婚約者候補も家督も義妹に取られ、猛獣のお世話係になるべくメイドと二人、王宮へ向かったが…ふさふさの猛獣は超好み! いつまでもモフっていたい。 動物好き令嬢のまったりお世話ライフ。 もふもふはいいなぁ。 イヤな家族も仕事もない、幸せブラッシング生活が始まった。 完全自己満、ハピエン、ご都合主義です! 甘々です。 同名キャラで色んな作品を書いています。 一部キャラの台詞回しを誤字ではなく個性として受け止めて貰えればありがたいです。 他サイトさんでも投稿してます。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果

柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。 彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。 しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。 「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」 逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。 あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。 しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。 気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……? 虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。 ※小説家になろうに重複投稿しています。

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

処理中です...