隣国が戦を仕掛けてきたので返り討ちにし、人質として三国の王女を貰い受けました

しろねこ。

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第18話 旅路・ミューズ編

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重苦しい馬車の中でミューズは顔を上げることが出来なかった。

弟妹達の行ないになんといったらいいのか、自分に出来ることはティタンに誠心誠意尽くすだけだ。

「ミューズ」
頭上から声を掛けられる。

「はい、何でしょう」
それだけ何とか口に出来た、体が震えるのは抑えられない。

「確認だ、君はあのことは知っていたのか?」
ミューズは首を横に振り、否定する。

「そのような事は何も知りませんでした、ですが私の責任です。本当に申し訳ありません!」
言い訳など出来ない、責任は全て長女であるミューズにあるのだから。

「それを聞いて安心した、いや俺は疑っていないが、ルド達など信用していないようだからな」

「それだけの事をしたのだから、仕方ありません」
俯くミューズにティタンは困った顔をする。

「君に責任はない、もう謝らなくていい」
軽々とミューズを抱き上げるとティタンは膝に乗せた。

「あの!」
恥ずかしさにミューズは顔を赤くする。

「何でもしてくれるといったろ? これくらい我慢してくれ」
ティタンはいたずらっ子のように笑う。

「下ばかり向くと首が疲れる、目線を合わせたいのもあってな。すまない」

「そうでしたか」
ティタンとミューズは対格差がかなりあるのでその言葉に納得した。

でもこの距離感と温かな体温が気恥ずかしい。

「重くないですか?」
ミューズとて年頃の女だ、そこは気になる。

「ミューズが? どちらかというと軽すぎて心配だ。これからを考えるともう少し食べた方がいいな」
健康を考えるともっと太ってもいいくらいだ。

「そうじゃなきゃ子どもも……いや、何でもない」
まだ口にするには早過ぎるとティタンは己の失言を恥じる。

「子どもがどうかなされました?」
意図が分からずミューズが聞き返してくるが、意識しすぎてしまったティタンは何も言えなくなっている。

このような積極的なスキンシップをとりながら、一線を越える言葉はまだ言えない。

(そもそも会って間もないし、子作りについて考えているわけはないか)
邪な考えでティタンは顔を赤くしてしまった。

もっといっぱい触れたい気持ちとこの気高い女性をこのままにしておきたい気持ちで葛藤する。

今更膝から下ろすことも出来ぬまま早くアドガルムにつく事を祈るティタンと、急に静かになったことを訝しむミューズ。

車内のやり取りを拡声魔法で聞いていたルドとセシルは御者席で複雑な顔をしていた。

「積極的なのか消極的なのか、わかりませんね」

「あれで夫婦になるんですよね? 大丈夫でしょうか」
ヘタレな主に心配しかなかった。
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