隣国が戦を仕掛けてきたので返り討ちにし、人質として三国の王女を貰い受けました

しろねこ。

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第14話 怒る第二王子

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「?!」
王子たちの言葉にルド達は動揺する。

もしもティタンと戦うなんてなったら、自分達では勝てない。

(そんな事するわけがないだろう……)
破天荒な言い分を聞いて心の中で反論するが、確実にティタンの自我は薄れていた。

セシルの魔法と薬で何とか意識は保てているが、頭の中が煩い。

何かの言葉が響き、どこかに誘導されそうで、酷く不快だ。

無くなりそうな意識を何とか繋ぎ止め、ティタンは取り出した短剣で自分の腕を突く。

大事な筋は避けたので大事ないが、流れる血と痛みに、頭が少し覚醒した。

「どうしてくれようか」
ゆらりと立ち上がる。

腕の一本使えなくとも、大した訓練も行なっていない王族や実戦経験のない近衛兵などティタンの敵ではない。

意識を失う前に皆殺せば、操ることなど出来ないだろう。

考えの回らない中、躊躇いもなく腰の長剣を抜き放ち、目の前のテーブルを粉々にする。

床も抉れ、無残に茶器もクロスも飛び散った。

片腕一本でそんな事を行なえるティタンの膂力に怯え、戸惑う弟妹たちを庇い、ミューズが立ち塞がる。

「私が責任を持ちます、ですから弟妹たちをお許しください」
この人は傷つけてはいけないと遠い意識の中で思い、切っ先を僅かに下げた。

「許されると思うか? 薬物を盛り、このような愚行に出たことをどう落とし前をつける?」
だからと言って退くわけではない。

ティタンの怒りの声に、ミューズは焦りしか出なかった。

「何でも、私に出来る事なら何でもします」

「何でも? あなたに何が出来る」
据わった目でミューズは問われた。

「例えばその傷を癒せます」
ティタン達は驚いた。

それほど強い治癒の力を持つものは少ない。

今回連れてきたセシルからも聞いていない情報だ、見るが首を横に振っており、やはり知らないらしい。

「ではお願いしようか」
ティタンは躊躇う事なく自分の腕から短剣を引き抜いた、夥しい量の血が床を濡らしていく。

ミューズは慌てることなくその怪我に手を翳すと、見る間に血は止まり、傷口も塞がった。

「解毒薬も寄こしてください、そうでなくば取引は出来ません」
セシルの言葉に、ミューズも促す。

「急ぎ出しなさい!」
ミューズの叱責に戸惑いつつも、解毒薬が渡された。

ティタンが飲み込み、症状が落ち着くのを見て、ミューズは床に頭をつけた。

「申し訳ありませんでした! もう二度とこのような事はさせません!」
平身低頭なミューズに周囲はただ静まり返る。

宗主国となるアドガルムの王子に対して行なったこの暴挙は、到底許されるものではなかった。

「顔を上げてくれ、ミューズ王女」
まだ朦朧とする頭を押さえて声を掛けると、顔を上げたミューズをそのまま担ぎ上げた。

「長居し過ぎた。帰る」
疲れ切った声でそれだけ言うと、ティタンは部屋の外へ向かって歩き出す。

「やっ、あの……!」
ティタンの肩に担がれたミューズは、手足をじたばたとさせるが下ろされる気配はない。

「ティタン様よろしいのですか? 処罰は」

「処罰はミューズをこの国から奪う事だ、それでいいだろう」
ルドの言葉にティタンは言い切った。

「いいか、お前達」
ティタンはセラフィムの者へと向き直る。

「国王含めここの王族はずいぶん覚悟と責任が足りない。殴ったら殴り返されるものだ、そして今回のこれは殺されても文句も言えない」
戦からしてそうだ。

「戦は起こすべきではなかったとミューズは言っていた。お前らが俺に薬物を盛ったのも、もとを正せば戦のせいなのだろう。度胸は認めるが、失敗し怯え震えるのは間違いだ。最後まで責任を持つべきだった」
ティタンは大きくため息をついた。

「この国の為に命を張れるミューズを失い、少しは学ぶといい。いかに甘えて過ごしていたのかと。信念もない力もない、命を尽くすこともしない覚悟のない王族など誰も救わんよ。覚えておけ」
抵抗を止めたミューズを抱えたまま、ティタンはアドガルムまでの帰路へとつく。



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