塔の上のカミーユ~幽囚の王子は亜人の国で愛される~

蕾白

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第三部

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 アレクの手が唇がカミーユの肌の上をなぞりながら官能を引き出していく。何度も甘い言葉を囁かれて、覚えさせられた快感を思い出させようとするかのように。
 胸を愛撫されると、痛痒いような感覚が身体の中を走る。
「乳首、気持ちいい? すっかり覚えちゃった?」
「毎回触られてるから……っ……」
 舌を絡めるような口づけと同時にぷくりと膨らんだ乳首を指で弄られると、その刺激が身体の熱をさらに上げる。
「そうだね。ここで感じられるようになると、もっと気持ち良くなれるから」
「もっと……? ひっ……あっ……」
 捏ねるように抓まれるじんわりとした甘い痛みに身を捩ると、口づけがさらに深くなった。
 これ以上の快楽など教えられたら、わたしの身体はどうなってしまうんだろう。
 もう足の間のものに熱が集まって反応し始めている。まだそこには触られていないのに。
 ……それだけじゃない……身体の奥が……熱い。
 アレクの手が腰を伝い下りてくると同時に足の間に膝を滑り込ませてきた。
 カミーユの中心に、同じように熱を帯びたものが擦りつけられる。
「あっ……やっ……」
「ああ。もうこんなになってる」
 腰を揺らして互いのそれを押しつけるようにしながら、アレクの手はカミーユの後ろに伸びてきた。すでに潤滑用の香油を馴染ませていた指が入ってくる。
「凄いな、中が絡みついてくる。ここも触ってほしかったんだ?」  
「ああっ……後ろ……一緒……だめ……いっ……いくからっ……」
 外と内からの刺激でカミーユは首を激しく横に振った。
「いっていいよ。……可愛いとこ見たい」
 アレクの吐息も熱く乱れている。互いの熱を絡ませながら、カミーユの中を指で拓いていく。
「……可愛くなんて……や……っ……そこは……っ。ああっ」
 内側の一点を指で突かれると強烈な快感に襲われる。追い上げられて頭が痺れるような感覚と同時に身体が震えた。
 下腹が濡れた感触ですっと頭が冷えた。
「あ……」
「いっぱい気持ち良かった? 可愛かったよ」
 達してしまったのは自分だけで、アレクのそれがまだ熱を帯びたままだと気づいた。自分が放ったものが互いの下腹を汚してしまっている。
 それを見て身体の中の熱が治まりきっていないことに気づく。
 アレクのそれを迎え入れたいと、身体が疼いている。
 物欲しそうに見てしまったことに気づかれたくないと思わず目を閉じそうになると、アレクが囁きかけてきた。
「カミーユ。どうしたの?」
「……わたし……変なんだ」
「どうして?」
「……まだ身体熱くて……アレクので中まで愛して欲しいって……男なのに……」
 前で達したのに、熱がまだ燻っているようで。それが恥ずかしい。アレクが啄むようなキスをくれた。彼の吐息も熱い。
「うん。変じゃないよ。カミーユはれっきとしたいい男だけど、僕限定の可愛いお姫さまだから」
 足を拡げられて全てを晒すような体勢にされる。淡い燭台の灯りだけでもアレクの目がどこを見つめているのかわかってしまう。
「……お姫さま……?」
「僕は可愛いカミーユ姫に心を奪われた下僕だからね」
 そう言いながら、さっきまで彼の指が触れていた場所にアレクの熱を帯びた塊が押し当てられる。
「あっ……ああ……ん……」
 内側を押し広げられて深く深くアレクを受け入れる。
 強く抱きしめられてこれ以上ないくらいにアレクが近くにいる。それが嬉しくて、さらに身体が貪欲に求めてくるのを感じた。
「アレク……もっと……アレクでいっぱいにして……」
「ああ……カミーユ……たくさんあげるから……」
 激しく突き上げられ望むままの熱を与えられて、カミーユは快感に浮かされた頭の隅で思った。
 王女として育てられたけれど、他の男にこんなことをされたいとは思わない。
 わたしはアレクのためだけの……。
 二人は互いに求め合いながら幾度となく身を絡ませて濃密な「会話」を繰り返した。

「正直に言うと、カミーユと離れたくないから執務室にも連れて行きたい。ずっと抱きかかえてどこにでも連れて行きたいんだけど、それはさすがにダメかなあって我慢してる」
 事のあとで、離れがたくてまだお互い何も身につけていない状態で抱き合っていると、アレクが唐突にそんなことを言い出した。
「鳥の民の執着は僕には関係ないと思ってたんだけど、最近ちょっと実感してる」
「ついていくのは構わないけど、妃教育はまだ残ってるんじゃないのかな」
「そうだよね。……そう言えば妃教育の講師たちからはカミーユは完璧だっていわれてるよ。こんな優美な作法が身についている貴婦人はそういないってべた褒めされてるよ」
「……それはそれで複雑だなあ……」
 カミーユはそう思いながら、アレクが執務の合間に「カミーユが足りない」と会いに来る理由が何となくわかってきた。
 薬物依存のような症状だろうかと、カミーユは想像した。
 鳥の亜人は伴侶に執着する。彼の母が夫と行動を共にしているのもそれが理由らしい。
「とりあえずカミーユもしなきゃいけないことがあるんだから、無理は言えないね」
「それならお茶の時間に執務室に行ってもいい?」
 ずっとは無理でも日中に会う回数を増やせばいいのではないだろうか。カミーユはそう思いながらアレクの顔を見つめた。
「そうしてくれると嬉しいな。というかいつでも来ていいんだよ? ああ、早く新婚旅行の許可が出ないかなあ……」
「そうだね……。そう言えば、結婚祝いの品の礼状を書かないといけないんだった。目録を届けてもらうことになってるけど、何も問題なかった?」
 祝いとしてカミーユ宛に届いた品は全て厳密に調べさせている。中には悪意を含むものもあるかもしれないから、と。
 アレクが何かを思い出したように顔を顰めた。
「国内の貴族から届いた品には妊婦に飲ませたらよろしくないお茶とか食品が含まれていたから、その送り主には僕から超絶丁寧なお礼状出しておく。シーニュから届いた品には何らかの魔法がかけられているから調査中だよ」
「……魔法?」
「見た目は髪飾りやネックレスなんだけど、石に魔法がかけられていた。解析に時間かかりそうだから、カミーユにはまだ見せられない。ダルトワ侯爵はこのこと知ってるのかな。いや、知ってたら届ける前にこっそり壊してるだろうな。どっちみちシーニュへのお礼状は僕が書くから」
 ドミニク三世からの書状には簡単な祝いの言葉と、王宮に伝わっている宝飾品をいくつか持参金代わりに送ると書いてあったくらいだ。王女の婚姻にそうした品を持たせることは珍しくはないけれど、それに魔法がかけられているというのはあまり嬉しくない。
「……それにしても妊婦に良くないお茶とか……かなりあからさまだね。アレクは後継をグラントリーって決めてるのに」
 どうせそれを知らずに口にしてもカミーユには何ら影響はないのだ。
 露骨な悪意が不快なだけで。
「こうなったら決闘で人族でもやるときはやるって見せつけないと」
 この国での一番の正義は力だ。ひ弱な人族など気に入らないと思っている人々にはカミーユが力を示さなければ伝わらない。
 カミーユがやる気に燃えていると、アレクが複雑そうな笑みを浮かべる。
「……困ったなあ。カミーユがかっこよくて強いところを誰にも見せたくないのと、自慢したいのとで迷っちゃうよ」
 ふわりと手が伸びてきて、カミーユの頬に触れる。
「怪我はしないでね。あと、相手を粉砕しないように」
「粉砕?」
「あと、みじん切りもだめだから」
「みじん切り?」
 さすがにそんなことはしないつもりだし、そこまで一方的な決闘にはならないだろう。 アレクはわたしのことを一体何だと思っているのだろう。
 カミーユは頬に触れている手に自分の手を添えて微笑んだ。
「わかった。王太子妃らしく戦うから、安心して?」
 
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