塔の上のカミーユ~幽囚の王子は亜人の国で愛される~

蕾白

文字の大きさ
上 下
24 / 61
第二部

12

しおりを挟む
「予想通り、決闘を申し出て来たのは四人だったよ。第二妃の息子二人、上が今日会ったレイモンド、下がジャイルズ、熊の亜人だ。後の二人は父の異母弟の子たちでイアンとマーク。両方とも狼の亜人。まあ、全員僕をボコボコにしてくれた連中なんだけど」
 その日の夜、アレクはカミーユの寝室を訪れてきた。そして王位継承者を決める儀式の説明をしてくれた。
 決闘の形式は武器を一つ選んで宣言し、それ以外は使えない。相手が命を落としても責任には問われない。
 アレクの場合、鳥の亜人は魔法を得意としているので魔法を使えるけれど、代わりに武器を手にすることはできない。
 カミーユは長椅子にアレクと二人並んで座っていた。話をしながらアレクがカミーユの腰に手を回してくる。
「……全員と戦うことになるの?」
「いや、二人以上だった場合、事前に二人に絞ってから明後日に僕と……ってことになる。だから明日それを決める予選がある。観に行くかい?」
 アレクが緑色の瞳をカミーユに向ける。
「行ってもいいの?」
「自由に観戦できるから民も大勢来るよ。それに、王族は席が用意されてるから。ただ、第二妃が来るだろうから楽しい場じゃないけど」
 カミーユはそれを聞いて嫌な気分になった。あのレイモンドの態度からしても、第二妃とその子供たちはアレクに対して敵愾心が強く、馬鹿にしているように思える。
 そんな彼らの力を誇示するための決闘を見る必要があるだろうか。
「相手の手の内はわかっているんだよね?」
「そりゃあ身を以て知ってるよ」
「だったら行かなくていい。わたしは彼らの顔も見たくないし、アレクだって嫌なことを思い出したくないだろう」
 カミーユがきっぱり答えると、アレクは声を上げて笑った。
「カミーユは可愛いなあ」
「笑い事じゃない。こともあろうにレイモンドは夫の前でわたしに色目を使ってきたんだぞ。アレクを馬鹿にするにもほどがある。人目がなかったらあの場で叩きのめしてやったのに」
「いや、儀式の前にレイモンドに怪我させたら面倒なことになるから」
 カミーユはアレクに向き直った。
「わたしはこの先アレク以外に嫁ぐつもりはない。だから全員やっつけてほしい」
「……カミーユ……」
「わたしは何もアレクにしてあげられないけど……」
 カミーユはガウンを脱ぐと、ナイトドレスの裾を持ち上げた。
 今夜は下着を身につけていない。アレクが来るかもしれないと思って。
 バルバラにアレクの元気が出るように何かできないか相談したら、大概の殿方は奥方の破廉恥な格好を見せると喜ばれますよ、という答えが返ってきた。
 いや、わたしも殿方なんだけど例えばアレクにそんなことをされたら……あ。でも少し嬉しいかもしれない。でも引かれたらどうしよう。
 そんなことを考えながらアレクの訪れを待っていたのだ。 
 アレクの目が食い入るようにカミーユの下肢に向けられる。カミーユは頬がかっと熱くなった。
「……恥ずかしいから、見てないで何か言って」
 羞恥で消え入りそうな声しか出せない。アレクは突然手を伸ばして、強く抱きしめてきた。
「カミーユ……君って人は……」
 荒々しいほどの口づけ。唇をこじ開けて舌を絡めてくる。カミーユはアレクの背中に手を伸ばしてそれを受け入れる。
 一頻り息もつけないほど深いキスをされて、カミーユは上せたようなふわふわした感覚でアレクを見つめた。
「……はしたない?」
「そんなこと言わないよ。そんなまっ赤な顔して……無理しちゃって」
「アレクに何かしたかったんだ」
「うん、わかってる。心配させてしまったよね」
 そう言いながら宥めるようにキスしてくれる。それと同時にナイトドレスの裾を引き上げた手が大腿を撫でてきた。 
「……だけど、こんなの見たら男がどうなっちゃうか、カミーユだってわかってるよね?」
 足の間に忍び込んできた手が、カミーユの無防備な中心を柔く刺激してきた。すでに口づけだけで緩く反応していたそこは、緩い刺激で勃ち上がってきた。
 先端を指でぐるりと撫でられただけで腰全体に熱が集まってくる。
「ちゃんとここが気持ちいいって覚えてるね」
 アレクの手で快楽を覚えさせられた身体はなすがままに反応していく。
 でも、これじゃ違う。わたしだけ乱されるんじゃなく、アレクにも……。
 理性が吹き飛ぶ前にと、カミーユは精一杯訴えた。
「違うんだ……わたしはアレクを気持ち良くしたいんだ……」
 はしたないことだとわかっているけど、カミーユはアレクの股間に手を伸ばした。服の上からも存在を増しているのがわかる。
 アレクがカミーユのその手を掴んで甲にキスした。
「もう……そんなこと言われたら我慢ができない。初夜まで待つつもりだったのに。……誘ってくれてるって思っていいの?」
 その声が甘くカミーユの身体を震わせた。アレクの情欲がこもった瞳がカミーユを見据えている。
 誘う……? そうだ。わたしはアレクを誘っていたんだ。なんてふしだらなことを。
 でも、もうはち切れそうなくらいになっているのに、我慢なんてさせたくない。
「わたしは他に何もできないから……」
「ああもう、可愛すぎて鼻血出そう。何もできないなんて、ありえないからね? カミーユがいてくれるから、僕は強くなりたいんだよ」
「アレク……」
「……カミーユを全部もらっていいの?」
 カミーユは頷いた。わたしの持っているものは全部あげていい。
 だからどうか、無事に決闘を終わらせてほしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

俺が聖女なわけがない!

krm
BL
平凡な青年ルセルは、聖女選定の儀でまさかの“聖女”に選ばれてしまう。混乱する中、ルセルに手を差し伸べたのは、誰もが見惚れるほどの美しさを持つ王子、アルティス。男なのに聖女、しかも王子と一緒に過ごすことになるなんて――!? 次々に降りかかる試練にルセルはどう立ち向かうのか、王子との絆はどのように発展していくのか……? 聖女ルセルの運命やいかに――!? 愛と宿命の異世界ファンタジーBL!

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

かわいい息子がバリタチだった

湯豆腐
BL
主人公は、中田 秀雄(なかた ひでお)36歳サラリーマン。16歳の息子と2人暮らし。 残業で深夜に帰宅したとき、息子・真央(まお)が男と性行為をしている姿を目撃してしまう! 【注意】BL表現、性描写がかなりあります。

顔も知らない番のアルファよ、オメガの前に跪け!

小池 月
BL
 男性オメガの「本田ルカ」は中学三年のときにアルファにうなじを噛まれた。性的暴行はされていなかったが、通り魔的犯行により知らない相手と番になってしまった。  それからルカは、孤独な発情期を耐えて過ごすことになる。  ルカは十九歳でオメガモデルにスカウトされる。順調にモデルとして活動する中、仕事で出会った俳優の男性アルファ「神宮寺蓮」がルカの番相手と判明する。  ルカは蓮が許せないがオメガの本能は蓮を欲する。そんな相反する思いに悩むルカ。そのルカの苦しみを理解してくれていた周囲の裏切りが発覚し、ルカは誰を信じていいのか混乱してーー。 ★バース性に苦しみながら前を向くルカと、ルカに惹かれることで変わっていく蓮のオメガバースBL★ 性描写のある話には※印をつけます。第12回BL大賞に参加作品です。読んでいただけたら嬉しいです。応援よろしくお願いします(^^♪ 11月27日完結しました✨✨ ありがとうございました☆

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

異世界でエルフに転生したら狙われている件

紅音
BL
とある男子校の生徒会副会長である立華 白蓮(タチバナ ハクレン)は、異世界でアルフレイドという名のエルフとして精霊たちと共にのどかに暮らしていた。 ある日、夜の森の中に入ったアルフレイドは、人食い魔獣に襲われている人を助けようとするのだが…………。 クールでイケメンな半獣勇者と美人でちょっと天然なエルフの青年がおりなす、優しくて深い愛と感動がぎゅーっと詰まった異世界ファンタジーBLです。 ※第一部は完結いたしました。ただいま第二部絶賛更新中です。

処理中です...