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46.前略神様、殴っていいですか?※

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 ベッドの上に玲音を降ろすと、コンラットは玲音に手を伸ばしかけて思い出したようにその傍らに座った。
「……君のスキルは君が少しでも恐怖心を感じたら発動すると思うんだ。だから、怖いと思ったらすぐに言って」
 そうだった。神様がくれた防御スキルは日常の怪我からも守ってくれるとはいえ……。
 玲音が恐怖心や苦痛を感じることから勝手に防御してくれるのだ。
 以前ファースからも言われたけれど、いざこういう状況になると不安になってくる。
 僕のスキルは常時発動だから、僕が嫌だと思ったら相手は触れることもできない。でもコンラットさんは僕に触れたってことは、僕がそれを許しているってことだと。
 そうしたら念を押されたんだった。
『とにかく、コンラットが服の中に手を突っ込んできたら逃げるんだよ? 男は皆ケダモノで変態なんだからね? いざとなったら思いっきり股間蹴っとばしていい。僕が許す』
 いやその、同性としてそんな非道なことはちょっと……と思ったけど、その後でファースは玲音の反応を見て肩を竦めた。
『まあ、本当に嫌がることしたらあいつのアレがへし折れるか潰れるかのどっちかだから、問題ないよね。いい気味だし』
 見かけがツインテール美少女の口からそんな怖ろしい言葉が発せられて、玲音は唖然とした。でも否定はできない。玲音のスキルはドラゴンを伸した前科があるんだから。
 ……へし折れたり潰れたりとか……マズイじゃん。
 それを思い出した玲音は思わずそそくさと正座した。
「あの、ファースさんがその……『折れたらいい気味だ』って……流石にそんなことにはならないですよね?」
 そう問いかけると、何をと言わなくても通じたらしくコンラットは顔を手で覆った。
「あいつ……なんて下品なことをレネに……」
「すみません……変なこと言って……」
 慌てて謝ると、優しく抱き寄せられた。
「正直、私も怖いけどね。君に悪気があるわけじゃないから……でも、折れるのは困るね」
 ちょっと恥ずかしそうにそう言われると、可笑しくなってうっかり笑ってしまった。
 何よりも怖いのは、うまくできなくてコンラットさんにガッカリされることだ。ただでさえ色気の欠片もないのに、スキルのせいで気を使ってもらってるのに。
「……無理は絶対にしない。君が怖いことはしないから」
 そう言いながらゆっくりと玲音をベッドに横たえて、覆い被さってくる。
 いや、むしろ怖いのはあなたのほうでは……? 折れるとか言われたら僕だって怖くて怯むと思うし。それでもしたいって思ってくれてるってこと……?
 そこでふと、玲音は思いついた。
「あの、僕の方から動いた場合は大丈夫なのでは……?」

 自分のスキルは攻撃を防御する。攻撃してきた対象に十倍返しのカウンター攻撃をする。
 でも石に躓いて転んだとしても、その石を粉砕したりはしない。
 だったら、最初だけでも自分から動いたら、攻撃と認識しないのでノーカウントでは?
 ベッドで抱き合ってする会話ではないけれど、玲音としては事故でもコンラットに怪我をさせるのは申し訳なかったので、乏しい知識を総動員して説明した。
「……言いたいことは大体わかった」
 コンラットはそれをきいてどこか楽しげに頷いた。
「じゃあ、玲音が私に迫ってくれるってことだね?」
 ……あ。そうなりますか……? そう……なのかな?
 玲音としては自分も積極的になったほうがいいのでは、というつもりだったのだけど、主導権を放り投げられるとは思わなかった。
 迫るってどうするの。大人の男性を押し倒すとか無理だし。
 でも、コンラットさんを吹き飛ばしたり、へし折っちゃうよりは……。
「……でも、迫り方がわからないので、どうしたらいいのか教えてください」
「言ったら全部してくれるの?」
「ご注文の内容にもよります」
 そう答えるとコンラットは声を上げて笑った。
「そこ、笑うところじゃないですよ」
 玲音としては大真面目に言ったつもりだったのだから。むくれてコンラットに顔を向けるとふわりと両手が伸びてきて、それから顔が近づいてきた。
「嬉しいんだ……レネが私のために頑張ってくれるのが」
 口づけは……怖くない。むしろ好きかも。
 玲音は目を伏せた。

 長い口づけのあとで、コンラットの声が耳元に響いた。
「じゃあ、まずは脱いで」
 言われるままに全部衣服を脱ぎ捨てると、先にベッドに腰掛けたコンラットが手招きしてきた。脚の間から明らかに存在を主張しているものにチラリと目を向ける。
「怖い?」
 玲音は首を横に振った。
 ……やっぱり上背のある人はどこもかしこもサイズ大きいんだ……。
「抵抗がなかったら触ってくれる? 手でも口でもいいよ」
「……下手ですよ? きっと」
 そういう行為があるのは知ってる。でも実践した経験はない。
 玲音はコンラットの前に膝をついて張り詰めたそれに両手を添えた。人のそれをこんなに間近で見たことはなかったし、こんな状態ならなおさらだ。
 おずおずと舌を這わせるとコンラットが小さく呻いた。少しはうまくできてるのかもしれない、と反応があるのが嬉しくて先端を口に含んでみる。
 全部は無理だけど……こんなんで、気持ちいいといいんだけど……。
 頭の隅で何か電子音が聞こえた気がした。
 え? 何でこんな時にアップデートの音がするの?
 けれど奉仕に夢中になっていた玲音はそれには構わず熱を帯びたそれに指を絡めて愛撫を続けた。
「待った。レネ……もう……これ以上は……」
 思わず目線を上にむけて、コンラットと目が合った。頬を染めて熱っぽい目でこちらを見ている。
「だめでしたか……?」
「いや、別の意味でダメだ……我慢できなくなりそうだから……」
 そう言いながら玲音を膝の上に向き合って跨がらせると正面から包むように抱きしめてきた。剥き出しの肌が重なると相手の熱も伝わってくる。
「頑張ってくれて嬉しい。後ろ、慣らしたいんだけど……少し力を抜いていて」
「あ……っ」
 腰からするりと伝い降りた手が谷間を割り開くようにして、指先が玲音の窄みをなぞる。
 ぬるりとした液体を塗り込めると指が侵入してきた。
 慣らす……? ああそうだった、ここで繋がるから……。
「気持ち悪かったら言って……最初はちょっと辛いと思う」
 コンラットの長い指が自分でも触れたことのない内側を探るように入り込んでくる。
「……んっ……これ……何か……」
 異物感は最初だけで、未知の感覚が這い上がってきた。
「凄いな、指に絡みつくようだよ。そろそろ自分で動ける?」
 そうだった。僕の方から動かないと……。コンラットさんの指で……中を……。
 玲音は腰をコンラットの手に擦り付けるようにして、指をさらに深く受け入れる。嫌悪感はない。もっと慣らさないと……もっと深く……。
 ……気持ちいい。なんで……こんなの知らないのに……。
 深く浅く中を指を受け入れるだけで背筋をゾクゾクと這い上ってくる未知の感覚で声が漏れた。
「あ、あ……ふっ……」
「気持ちよさそうだね。蕩けそうな顔をして腰を振って」
 正面から抱き合ってコンラットの身体に跨がっているから、全て見られているのが分かっている。自分で腰を揺らして指を受け入れている姿も全部。
 気持ちいい? のかな。何かもう頭が働いてない。奥が切なくて強い刺激が欲しくなる。
 自分がこんなことになるなんて思わなかった。
 初めてなのに、ねだったら……嫌われちゃうかな。でも……。
「あ……ん、でも……これ……じゃ、足りない……っ」
「淫らなレネも可愛い……じゃあ……ここは?」
 不意に指が中で蠢いて中の一点を突いた。強烈な刺激に全身がびくりと震えた。
 何これ……痺れてる。身体におかしなスイッチが入ったみたいな……。
「ああっ、ダメっ、そこいじっちゃだめぇっ」
「ダメじゃないくせに。……気持ち良くなる場所だから覚えておいて」
「だって……おかしく……なる……ひっ……」
 ずるい。動かないって言ったのに。これ以上の刺激で我を忘れたら、スキルが発動しちゃうかもしれないのに。
「嫌じゃないんだよね? 気持ちいい?」
「ふっ……ああっ。中……混ぜないで……。動かないって……」
「こんなに可愛い姿を見せつけられたら我慢できないよ。私も触りたい」
「あぁ……っ……」
 指が増やされて押し広げるように弄られる。
 もうコンラットはじっとしているつもりはないらしい。息を乱している玲音の唇を絡め取るように口づけると、耳元で囁いた。
「可愛いレネ。君の可愛い蕾はお腹空いているみたいだよ? もう、二本も咥えているのにまだ足りないんだよね? もっと大きいのが欲しい?」
 ……大きいの?
 思わず喉が鳴った。さっき唇で触れた怒張したコンラットのものを思い出して。
 あれで中を……そう思っただけで身体がざわりと反応する。
「……欲しい……おっきいの……」
「よくおねだりできたね」
 指がするりと抜かれた。間髪を入れずに押しあてられた熱が真下から玲音の身体を貫いた。指の比ではない存在感が身体を侵してくる。
「あっ……入ってるっ……」
 玲音の口から掠れた悲鳴が漏れた。
 あんなの入っちゃうんだ。僕の身体どうなってるの。……熱くて、中をこじ開けられるみたいに苦しいのに……気持ちいいなんて……。
 目を開けるとコンラットの顔があった。染まった頬と荒い吐息。
 飢え乾いた獣が獲物を捕らえて興奮しているような獰猛な表情なのに、怖くはなかった。
 こんな顔初めて見た……。
 玲音が見つめていると唇を重ねてきた。身体を貫かれたまま口腔を隅々まで探るように深い口づけをされて熱が身体の中でぐるぐると膨れ上がる。
「レネ……辛くなかったら動いてもいい?」
 熱い目でそう問いかけられて、玲音は頷いた。
 ……この人に何をされても、きっと嫌じゃない。もうきっとずっと前から、僕を守ってくれて、僕をちゃんと見てくれるこの人が好きだったんだ。
 そのまま体勢を変えて玲音を下に組み敷くと、コンラットは緩やかに抽挿を始めた。
 深く浅く中を擦られる感覚に玲音は昂ぶりすぎて涙がこぼれそうになった。
「……コンラットさんも……気持ちいい?」
「気持ちいいよ。レネの中は居心地がいいから、ずっとこうしていたい」
 滑った淫らな音がコンラットが内を抉るたびに響く。熱いものに中をかき混ぜられるように溶かされて、身体が変えられていく。
 ……ああ、気持ちいいの止まらなくて何も考えられない。
「んっ……あ……あっ。いい……っ凄く……」
「レネがいっぱい気持ち良くて嬉しい。でも、もっと気持ち良くしようか」
「……もっと……?」
 もう吐息は乱れているし顔はきっと涙でぐちゃぐちゃだし……。これ以上って何?
「あっ……」
 さっき指で突かれた場所に先端を押しつけられる。玲音は悲鳴まじりに喘ぎ声を上げた。
「んっ……あっ、あっ……そこいいっ……あぁぁっっ」
 自分の下腹が反応した。触れられてもいないのに、内から突き上げられて弾けた。
 放ったものが下腹を濡らして、一気に冷めたおかげで羞恥で顔が熱くなった。
 なのにコンラットはそれに構わず腰を掴んで深く突き上げてきた。
 こんな感覚を知ってしまったら、どうなっちゃうんだろう。身体が作り替えられてしまう。この人がいないとダメになってしまう。
「ぁ、あっ……はっ、は……いやァ……、や、だ……」
「君の身体はそうは言ってないよ。……くっ……搾り取られそうなくらい吸い付いて、まだ欲しいと強請って……。こんなに可愛いのならもっと早くこうすればよかった」
 もっと早く……? そんなに前から我慢させていたんだろうか。
「熱い……もう……無理……灼けて……」
 コンラットの熱が玲音の身体を奪い尽くすように内から蹂躙する。
 激しく突き上げられて、身体の中を荒れ狂う熱が出口を求めている。ビクビクと震えが走って翻弄されながらコンラットの腕を掴んだ。
 どうしていいのかわからない。
「んぁあぁあっ……ぃ、んくぅ……ぁあっ、ぃやぁぁああっっ」
「イっていいんだよ」
 怖い。どうなっちゃうんだろう。でも……。
「あ、やっ、だめ。イクの……怖い……」
「だったら……一緒に……」
 コンラットが玲音の首筋に顔を埋めるとひときわ激しく最奥に腰を進めてきた。吐息とも喘ぎともつかない声が玲音の耳元を掠めて、熱に翻弄されていた頭の中まで焼きつくすような瞬間が訪れた。

『玲音がいるから、私はほっとできるんだよ? 芸能活動してるのは凄いことじゃないし、私には普通にお仕事なんだよ。でもやっぱり華やかなところだから、勘違いしてしまいそうになる。でも、家に帰って玲音と話してたら私は私でいられるの。だから玲音は私の一番大事な人なんだよ。恋人ができても結婚しても、玲音が一番だから』
 玲音の姉は仕事から戻ったら必ず玲音の部屋に来てあれこれ話を聞かせてくれた。下手に外で愚痴とか言えないからなのかな、と思っていたら、そう言われた。
 僕はずっと『早島芽衣の弟』で、誰も僕を見ていないから、自分はつまらない人間で、存在していない透明人間だと思っていた。
 でも姉さんは僕を必要だと言ってくれた。
『……玲音は可愛いししっかり者だから、いつか素敵な人と恋をして幸せになれると思う。っていうか、玲音の魅力を理解できるのはその人だけでいいのよ。……あ、でも、恋人ができてもお姉ちゃんのこと忘れちゃダメよ?』
 ……最後にちゃっかり念を押してくるのはさすがだと思う。
 姉さんは……結婚する前に亡くなってしまったけれど、僕は一生姉さんのこと忘れないから。父さんも母さんも……大事な人のことは忘れない。
 ……いつかまた会えたら、この世界には僕のことをちゃんと見てくれる人がいて、好きな人もできたって報告できるかな。

 目が覚めると周囲が真っ暗だった。ベッドの隣はもぬけの殻で、真新しいシーツの上で一人で寝かされていた。
 ……服も着せてある。全部コンラットさんがしてくれたのかな。
 身を起こそうとして、違和感に気づいた。さっきまで身体を繋げていた場所が熱を帯びてむず痒いような感触が残っている。
 初めてだったのに、なんかあっさりできちゃったっていうか……もっと滅茶苦茶痛いとか怖いとか思ったのに。粗相をして幻滅されたらもう嫌われちゃうかとか……。
 それで万が一にもコンラットさんのへし折ったりしたらどうしようかって……。
 へし折るどころかアダルト動画ですかってくらい喘いでなかった? 僕って素質あったとか?
 いやいやいやいや、えっちの素質ってそんな……待てよ。
 そこまで考えてから、ふと思い出した。
 そういえば、最中にアップデートの音を聞いたような気がする。
「……まさか……」
 鑑定魔法を発動させて、ステータスを呼び出した。
 どんどん行が増えているスキル一覧の最終行に新しい文字が追加されていた。

【傾国の名器】(解説すると、どんな相手も悩殺できちゃうエロい身体。どんなプレイも思うまま。両思いおめでとう。これでいっぱいラブラブになってね♡ 神様より)←new!!

「……なんじゃこれは……」
 思わず声に出してしまった。
 両思いって……何で知ってる。どこまで見ていたんだろう。
 いや、神様ってこの世界を見守るのが仕事なんだろうけど。こんな公式ストーカーみたなことをされたらちょっとどん引きするしかない。もしかしてさっきのあれやこれやも全部見られていたとか……。
 っていうか、盛りすぎ。♡をつけりゃいいってもんじゃない。
 怒りと羞恥と行き場のない感情に身を震わせていると、料理の載ったトレイを手にしたコンラットが寝室に入ってきた。
「レネ? どうしたんだ? どこか辛い?」
 心配げにそう問われて、玲音は思わず呟いた。
「……神様ってどうやったらぶん殴れるのかと……」
「え? 何それ、物騒なんだけど?」
 コンラットが驚いた顔をして歩み寄ってくる。
 ……っていうか、こんなスキルのせいであんな恥ずかしいことになってしまったんだ。
 玲音は両手のひらで顔を覆った。
「一人にしてごめんね。食事を取りに行ってたんだ。お腹すいてるよね?」
 コンラットは玲音が不安になったせいで不安定な言動をしていると思ったらしく、隣に来て抱きしめてくれた。
「レネは初めてだったのに、私ががっついてしまったから辛かっただろう?」
 ……ごめんなさい。コンラットさんのせいじゃないです。全部あの神様のせいなんです。
 玲音は内心そう思ったけれど腕の中の居心地がよかったので、そのまま目を伏せた。

「それと、さっき何か変な音を聞いた気がして、気になって自分のスキルを確認したんだけど……」
 コンラットが玲音を抱きしめたままぽつりと言った。
 ……音? もしかしてアップデート音?
「どういうわけか、スキルが一つ増えていたんだ。【レネ・ハヤシマ限定・絶倫】っていう……」
 コンラットさんみたいなイケメンにそんな下品なスキルつけるんじゃない。何てことしてくれたんだ神様。
 っていうか、絶倫のコンラットの相手をさせられるのが自分だというのが……。
「……やっぱりあの神様殴りたい……」
 玲音は心の底からそう呟いた。
  
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